そして、騒がしい朝が終わる。

 甘めのココアの香りが立ち込める、狭いワンルーム。

 唯一ある窓からは、まだ朝日が差し込んでいて。


 朝ごはんを食べ終え、その片付けも終えた俺とあおは、今度はそれぞれココアを置いて机を囲んでいた。


「なんというか、朝から騒がしい一日だな」

宮下みやしたさんと矢鋭咲やえざきさんのせいでね。朝っぱらから来るなんて、二人ともどんだけお兄ちゃんの事が好きなんだか」

「あは、あはは……」

「まあ、それも今日が最後だよ。絶対家に入れないから。学校で会うのはどうしようもないから、お兄ちゃんも気を付けてね」

「えっと……はい。気を付けます……」


 主にどんなことに気を付ければいいのかは、絶対に聞かないことにする。


「そもそも、元はと言えばお兄ちゃんのせいだからね?」

「えっと、見崎みさき怜央れお先輩も家に呼んだ覚えはないのですが……」

「そうじゃなくて。お兄ちゃんがいろんな女の子に優しくしたり、仲良くしたりするから、こうやって家に押しかけてくるだよ?」

「それは……ちょっと……」


 なんだこの返答が難しすぎる発言は……

 蒼、地味に怒ってるし……


「ごめん。お兄ちゃんに言っても仕方ないことだった」

「本当に返答に困ったぞ今……」

「ごめんって。お兄ちゃんは、そのままが一番いいよ。ほんと、変なこと言ってごめん」

「それは……どうも……」


 ともかく、蒼が笑ってくれているのでそれでよしってことで。

 なんで怒ったかは深く考えない方がいいのだろう。



「ところでさ。触らなくていいの?」



「……へ?」

「だって、さっき触ろうとしてたんでしょ?私の胸」

「い、いや、だからそれは一時の気の迷いで!ああゆう状況だったからそうなっただけで!」

「じゃあ、触らないの?」

「いや、それは、まずいだろ……」

「別に減るものでもないし、お兄ちゃんが触りたいなら触ればいいと思うけど?なにかまずいの?」

「そういうところが一番まずいんだよ……」


 そうやって真顔で、なんでもないことのようにされるのが、一番まずい。

 ナチュラルに許可されたうえでやってしまったら、それはもう冗談とか笑い話では済まされなくなってしまう。

 だから一番まずいんだよ……


「まあ、お兄ちゃんが触りたくないって言うならいいけど」

「触りたくないわけではない……って、今のは違くて!」


 どうしてこういう時、内に秘める漢は黙っていてくれないのだろうか。


「えっと……どっち?」

「触らないから!ていうか簡単触らせようとしちゃだめだからね⁉」

「ふーん……まあいいや……」

「なんだよその反応……」

「別に」


 なんでそんな微妙な顔してるの?

 俺、これ以上なんかされたら本当に漢になっちゃうよ?


「お兄ちゃんって、意外と真面目なとこあるよね。生活面がアレな割に」

「いや、今のは俺、犯罪者になりかねないからね?」

「そっか。そうだよね。変なこと言ってごめん」

「ああ……」

「……」


 机を隔てた蒼との間に、沈黙が横たわり。

 ズズっと、ココアを一口。

 少し甘めで、騒がしかった朝にはぴったりだ。


「このココアと、それに朝ご飯も、相変わらず美味しかった。ありがとな」

「……うん。どういたしまして」


 さらにもう一口飲んで。

 しゃべりつかれた口を少し休ませて、心を落ち着かせる。

 

 蒼も同じように、ゆっくりしているように見えて。

 やっぱり蒼と二人きりだと、どうも落ち着く。

 ……ああいう蒼の言動がなければ、だが。


「私、そろそろ買い物行ってくるね。そのコップ、飲み終わったら冷やしといて」

「ああ、わかった」


 蒼は自分のコップを流しにおき。

 財布やらスマホやらエコバックやらの入ったカバンをもち、靴を履いてドアを開ける。

 そして最後に、振り返って。


「それじゃあ、



 行ってきます。お兄ちゃん」






___________

あとがき


 ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

 応援やレビュー、増えていくPVがとても励みになりました。今でもなってます。

 中には、初期のころから投稿するたびに応援してくれた方なんかもいて、本当に嬉しかったです。 

 本当に、ありがとうございます。


 さて、この作品は、ここで一区切りとなります。

 蒼の性格だいぶ変わったなーとか、見崎ちょっとやりすぎたかなーとか、怜央は相変わらずだなーとか、いろいろ思うところはありますが……

 やはり、個人的に印象深いのは『昔話、因縁、本性』ですかね。

 実はあの回、本気でヤらせるつもりだったんですよ。もちろん描写はしませんが。

 でも、あの蒼がそんなこと許すのかと。ちゃんとしてる子だとは言え、まだ中学一年生ですからね。

 まあ、止めてしまったからこそ、例の発言が蒼から出たのかもしれませんが。

 あとはメタい話ですが、そうするとドロドロになっちゃうんですよね。

 私個人としてはそっちの方が断然好きなのですが……さすがに作風が壊れると思いまして。

 そんな危なっかしい回だったんですが、やはりあそこで止められたのは、本当によかったと思います。メタ的な意味でも、蓮や蒼、見崎にとっても。

 そうじゃないと、この終わり方はできなかったと思います。

 やっぱりハッピーエンドの方がいいですよね。

 

 それでは、最後に。


 フォロー、応援、感想コメント、レビュー、そして批評やアドバイスもお待ちしております。ぜひ、お願いします。



 くどいようですが、ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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