ロリコンしか喜ばない(?)
「やっと終わった……手伝ってくれてありがと」
「いいよ。こんくらい、大したことじゃいって。それよりも、寝る前に終わってよかったよ。これでなんとか俺と
窓から差し込む光も、信号機とか街灯の光とかしかなくなって、起きるなら電気をつける他ない午後九時。
「じゃあ私、先にお風呂入ってもいい?」
「ああ。その間に寝る準備しとく」
「ありがと。それじゃあお先に」
ユニットバスのドアが開く音とともに、畳まれた布団たちを広げる。
今日一日蒼と過ごして、分かったことがある。あいつは、女としての自覚がないわけではない。
ただ、俺は諦められているのだ。
男とはいっても兄だし、気になるのは最初だけでしょ?だったら、初めから気にしなくていいじゃん……多分こんな風に思っているのだろう。
蒼がそんなんだから、こっちとしても気にすることはない……と思うのは簡単だが、俺は蒼の兄である前に男だ。そして漢だ。いきなり中学生女子と同棲しろと言われて、まったく意識しないなんて、いくら相手が気にしていなくとも一人の男子高校生としては無理な話であって。
だから今だって、かすかに聞こえるシャワーの音に反応しないわけがなくて。
「クソ……なぜこの家はこんなにも壁が薄いんだ……」
ごしごし……ごしごし……ごしごし……
ハンドタオルに石鹸をつけて泡立ったものを、体の隅から隅まで、ごしごしと……
「い、いや、冷静になれ。まだ時間的には頭を洗っているはず。まだ体のあんなところやこんなところを洗っているわけでは……」
……って違う!そういう話じゃないだろ!自我を保て祐川蓮。相手は中学生。そして義妹。あんなまな板になにがあると……いや、だから違くて……
ごしごし……シャー……
泡だらけの髪の毛にシャワーを当て、「ふぅ……」と一息。鏡に映る、洗い流され輝く髪と、しっとりした裸体。
「ぐわぁー!」
だれか俺の脳みそから妄想機能を一ミリ残さず消し去ってくれ……
「大丈夫?なんか叫び声が聞こえたけど」
「あれ?蒼、お前風呂に入ってたんじゃ……」
裸体。
振り返った先には、輝く髪と、ほんのかすかに膨らむ胸と、液体の滴る下半身。
つまり、しっとりとした裸体。おまけに、頭を拭いているバスタオル。
「お、お前、服着ろよ!」
慌てて目をそらす。が、その光景が頭から離れるわけもなく。
「服をこっちに忘れちゃって。でもまだ胸ないし、毛も生えてないし、見て減るものもないし大丈夫だとは思うけど?」
「何も大丈夫じゃない!一から百まで大丈夫じゃないから!」
そもそも、胸がなくて毛が生えてないっていうのは一種のステータスに……ってそういう話じゃなくて。
「と、とにかく早く服着ろ!」
「あ、うん」
なんなんだ蒼は……こんな時でさえ、恥ずかしさ一つ見せない。
「もう服着たよ」
「よし……」
振り向けば、パジャマ姿の蒼。ああ、なんという安心感。
「蒼……とりあえず座ろうか」
「え?まあ、いいけど」
さっき敷いておいた布団に蒼を座らせ、正面に座る。それも正座で。
「二人で寝るとか……パンツを見るとか……そこはまだ、家族だからで許されないこともないだろうがな……」
「あー、うん」
「でも……でもな?裸はないだろ裸は!裸を見せるってことはつまり、俺に襲われたって文句を言えないってことだぞ⁉」
「え?襲うつもりだったの?」
「いやそういう話じゃなくてだな……」
突然、変態を見る目をしないでいただきたいのだが。
「まあ裸ぐらいいいでしょ。私まだ中学生だし、ロリコンぐらいしか喜ばないと思うよ?」
「いやそんなことないだろ……」
「そんなことあると思うけど……というか、
「違う」
「……なんで認めないの?」
「いや、なんで確定してるんだよ……」
それに、またそんな目をされても困るのだが。
「いや、だって……まあいいや。とりあえず、明日からはちゃんと脱衣所に服もっていくから、それでいい?」
「……ああ」
「じゃあ、私は先に寝るから。おやすみ」
「……おやすみ」
そのまま布団に横たわり、すぐに目をつぶる蒼。
結局、俺がロリコンってことで終わったよなこれ……まあ明日から服を着てくれるならそれでいい……いやよくはないな。
きっとこれからも、蒼とこの狭いワンルームに同棲するにあたって、いろいろ苦労する。まあ、これは男として喜ぶべきなのかもしれないけど。どちらにせよ、今まで通り平穏にって訳にはいかないだろう。
そして、蒼と同棲することが、思いもよらない方向から平穏を壊してくるとは、この時の俺に予想できるはずもなく。
果たして、蒼とうまくやっていけるのだろうか……
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