第33話 奥の手....
ロロンの周りを大きな魔方陣が3つも重なり始める。
まだ大技が打てるのか...
今の俺にはそれを受けきれるだけの力は残っていないだろう。
こうなったら仕方がない....奥の手を使うしか...
「これで...終わりね....」
「俺のスタミナと拳を封じたのは流石だ。してやられたよ...」
「......」
「だが、俺とここまで距離を開けたことは間違いだったな!!
俺はこのまま.....
逃げるぜ!!!」
後ろを向き、全力でダッシュする。
「あっ.....」
ロロンの言葉を聞かずに廊下の先にある階段を全力で駆け上り、走り続けた。
スタミナを消耗させられたとはいえ足へのダメージが無かったのが良かった。
魔術専門のロロンなら俺の走るスピードにはついて来れない。
校舎を全力で移動し、リーアのいる風紀室までたどり着いたのだ。
そこまで来ると俺の〈第三の目〉の反応は消えている。
なんとか振り切れた....
思いっ切りドアを開けて中に入ると書類整理をしていたリーアがビクッと肩を動かした。
「え?何....?どうしたの??制服は??」
「ふーーーっ...」
どっと疲れが来た俺はとりあえずソファーに勢い良く腰かけた。
「死ぬところだった....」
心配そうにするリーアに俺は今まで起きた事情を伝えた。
リーアは俺の話を聞きながら、気が沈んでいくのを感じる。
何を思っているのかは分からないが....
「とにかく、このままではヤバイ!毎日こんな調子で攻められ続けたら俺の身が持たないぞ!この契約書をばらまいているやつを早急に見つけ出して始末しないとな!」
俺がそういうとリーアは少し沈黙した。
「どうしたんだ?なんか元気ないじゃないか??」
「ジャック...私との契約、破棄してもいいわよ...」
「は?」
「ジャックが私の騎士になったからこんなことが起きた。
あなたが私の騎士を辞めたら、もうジャックが他の生徒に襲われることは無くなるわ....これ以上おおきなことになってしまう前に....」
涙ぐんだ声でリーアはそう言った。
「.....リーアは...それでいいのか?」
彼女は首を一回縦に振り....
「ごめんなさい...わたしのせいで....
こんなことになるなんて思ってもいなかったの....
私のせいで彼方が死んだりしたら...
きっと私は一生後悔すると思うから....」
うつむいて右手が震えている。
言っていることは本心なのだろう。
だが、本当は騎士の契約を破棄したくないはずだ。
俺と契約した時のあの表情が俺には忘れられなかった。
「.....そうかよ...
だが俺が騎士を辞める前に、一つだけ聞いていいか?
どうしてリーアは騎士を増やそうと思っていたんだ?」
「どういうこと....」
「リーアはプリンセス候補の中では最下位。いまさら騎士を増やしたところで、到底ほかのプリンセス候補には追い付けないほどのポイント差がある。
それなのに、リーアは諦めていなった。
俺と出会った時も、そして、本当は今も.....
その理由を聞かせてくれないか?
こんなにも絶望的な差がありながら、他のプリンセスに対抗しようとするその理由を...」
リーアは静かに「分かった...」と言って話し始めた。
グッドラック王国のプリンセス候補であるリーア姫のその生い立ちを。
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