第34話 諦めない理由
マルファ・グッド・ラック。
グッドラック王国の現王妃の名だ。
私は現王妃の正式な子供ではなかった。
小さい頃の私はそのことを知らなかったし、別にそんなことを気にもしていなかった。
私の母の名ははリリア・グッド・ラック。
元プリンセス候補の一人だった。
どの国も王妃を決めるために数人のプリンセス候補を競わせ、一番成績の良かった者が王子と結ばれ子をなす。
私の母は王妃にはなれなかったが現国王は私の母が好きだった。
そんな母は私を生んだ。
その事実を知った王宮は母を城から追放した。
そして国の一番端の辺境の地で母と2人で暮らしていた。
気候の激しい住みにくい土地ではあったけれど私たち親子は何不自由なくそこで楽しく暮らしていたわ。
きっと父である王が私たち親子を支援し続けていたんでしょうね。
まだ幼くその事情を知らない私は、ただ母と一緒にいられるだけで幸せだった。
でも、その幸せは長く続かなかった。
私の国には〈始まりの儀〉というものがある。
これは国のしきたりで10歳を迎えた少年少女は自分の魔力値を測定するというものだ。
才能のある魔力値を持った子供は城に呼ばれ、騎士候補見習いとして魔術の教育を受ける。
何も知らない私が母に「行ってくるね!」と笑顔で言うと、母はとても不安そうな顔をしていたのを今でも思い出す。
結果は...
測定不可。
魔力を測定する水晶がすぐに赤くなり、破壊されて破片が飛び散った。
私には、王の子供からしか生まれるはずのない神の加護がついていたのだった。
始まりの儀に参加した周りの皆は驚き、母は私を連れてすぐに家に帰った。
でも数日後、国の兵士達が令状をもって私たちの前に現れた。
今までは私が王の隠し子であったことを秘密裏にしてきたが、それが国民全員に知れ渡ってしまったのだ。
母は王をたぶらかした大罪人として城に閉じ込められるようになった。
私は神の加護がついたことで強制的にプリンセス候補へと加えられ、次期王妃を決めるための戦いに参戦することになってしまった。
元々この国には王の血を引くプリンセス候補が3人いる。
国中の騎士および騎士候補達が仕えるプリンセス候補はすでに決まっていて、愛人との間に生まれた私の騎士になってくれる人は誰もいなかった。
でもそんなことは私にとってどうでもよかった。
元々何も知らずに田舎の小娘として生まれてきた私だ。
この国の王妃になることなんて全く興味が無い。
それよりも私はただ母と一緒に暮らしたかっただけだった。
私が城に迎えられて初めて会った人物が現王妃のマルファ様だった。
私はマルファ様に母を開放するように訴えた。
するとマルファ様はこう言った。
ここで3年魔術について学びなさい。
その後、他国のプリンセス候補者が集まる学院へ通いなさい.....と。
そこで毎年3月に他国のプリンセス候補よりも好成績を収めたプリンセス候補はオリンピア・クィーンと呼ばれ表彰される。
そして、学院内で1位の存在になり、オリンピア・クィーンになれば国王から恩赦がでるとのこと。
そこで母の罪を免責するように言えば母は解放されるだろうと言われたわ。
なにより、その母の子である私が学院のトップになれば、母の罪も国民は許してくれるだろう...と。
それから私は毎日魔術の練習に明け暮れる毎日だった。
それでも私についてきてくれる騎士は今まで誰もいなかったけどね。
そして、この自由鳳凰学院に入学して半年が経った。
数年前から在学している他国のプリンセス候補を見れば私との差は歴然だった。
プリンセスそのものの実力も、従えている騎士生徒の数も、国力も....
でも、それでも.....
私は諦めるわけにはいかない....
なんとしてでも他のプリンセス候補を押しのけて、私が1位になってやる...
そう思っていた....
そう思っていたのに......
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