第31話 氷剣の舞
「≪氷剣の舞≫(ブレード・ダンス)」
ロロンの周りに氷でできた剣が六本現れる。
そしてその刀身は俺の方を向き、勢いよく発射された。
単純な氷魔術か...その程度なら...
まず飛んできた二本を避ける。
その先に待ち構えるように残りの4本の刃が向かってくる。
「ふんっ、見えてるぜ!」
壁を思いっきり蹴り、反対方向へ素早く回避した。
「この程度の魔術で俺を倒せると思っているのか?」
「...........」
「今の攻撃でお前が氷魔術の使い手だということは分かったぞ。だがなぁ!!
属性魔術には弱点があるのも俺は知っているぜ!
それは固有魔術や肉体強化系の魔術に比べて魔力の消耗が激しいということだ!!
お前の魔力値がどれほどのものかは知らねえが、そんな大技を出しながら防御の魔法を使い続けて魔力が続くのかな?
俺はただひたすら攻撃を避け続けて、魔力が尽きたところで一撃を食らわせてやるぜ!!」
「おしゃべりは終わり....?」
ロロンが視線を少し右にずらした。
その瞬間に悟った。
俺の右側に何かある....と。
気が付いたときにはすでに体は動いていた。
........だが、
―――ブシュッ....
脇腹を刃物がえぐった。
それだけじゃない。
さらに数本の刃物が俺に向かって飛んできた。
「なんだとっ!」
残りの剣を転がりながら回避し、再び距離を取った。
「一回攻撃を避けたくらいで調子に乗りすぎ....
この剣は私が自由に操ることができる。
それをケアしなかったあなたの負けよ...」
「何...俺の負けだと...??」
「そうよ...今の攻撃、事前に察知したのは驚いたけど手ごたえがあったわ。
傷が深いはずよ...もうあなたは戦うことができない...
大人しく言うことを聞きなさい...」
.....ちっ....気づいているか...
今受けた傷、血が止まらん...
このままだと数分後には失血で意識を失ってしまうだろう。
「一応内容が分かっているが、その『言うこと』とはなんだ?」
「決まっているでしょう...リーア姫との騎士の契約を破棄することよ」
「断ったら?」
「二度と魔術が使えないようにするだけね....」
...................
「迷っている時間は無いわよ....
もし契約を破棄するというのなら、私の魔術で傷口を凍らせて止血してあげる...
でも...断ったら...」
「このまま死ねと!?」
「そうよ」
その表情には一点の曇りが無い。
この女は本気だ。
だがしかし!!
「俺がそんな一方的な条件を飲むと思っているのかよ!
≪筋力増強術≫(ドーピング・ハイ)」
スリル家に伝わる肉体強化の魔術の一つだ。
全身の筋肉に魔力を流すことで一時的に筋束の本数、太さを増やすことのできる魔術。
これによりパワーとスピードが飛躍的に上昇する。
「まだ動くの...?
今更頑張ろうとしてもあなたには時間が....
ッッッ―――!!」
「止血なら終わったぜ!
今話をしてる間にな!!」
拳を握り、ロロンの方向へ突っ込んでいった。
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