第28話 食べ物の恨み
「うがぁぁぁ!!」
両腕を上げ、奇声を上げながら突撃してくる。
それを迎え撃ち、両掌を合わせ、お互いに力を入れる。
「ぬぐぐぐぐ....」
この男...体格通りとんでもないパワーだ...
押し切られそうになる...
だがっ!!
「うおりゃぁぁ!!」
左手の力を緩め、逆に右手にありったけの力を加える。
バランスを崩した男は投げ飛ばされるように地面に叩きつけられた。
「どうだ!ざまーみろ!俺に力比べをしようなんざ10年はえーんだよ!!」
!!!....
投げ飛ばされた男はゆっくりと立ち上がる。
「....僕の名前はポクリ・ミルミートン...お前は?」
「ジャ...ジャックスリル....だけど...」
「ジャック...なんか聞いたことある名前だな...たしか....」
ぐしゃ....
ポクリは何かを踏んだ。
そう、俺はそれより数秒前から気づいていた。
わざとじゃなかったんだ...
俺がポクリを投げ飛ばした先、それは...
大量に詰まれたお菓子の山だった。
「ぬわあぁぁん!!ぼ、ぼ、僕のお菓子ぃ!!!」
泣き出すポクリ...
「あー...なんかごめん....弁償しようか??」
ポクリの周りに魔力の波紋が広がる。
ダメだ...聞いちゃいねえ...
「許さねえ...殺す....ぶっ殺してやる.....
≪火炎肉だるま≫(ミート・ボール)」
ポクリの全身が炎に包まれる。
「うおおおお!!」
また奇声を上げて掴みかかってきた。
だが、今度は律儀に力比べをすることができない。
掴んだら俺の体まで火だるまになってしまうからだ。
「いい加減にしやがれ!!」
肘をポクリの顔面にカウンターの要領で突き刺す。
ポクリが身に纏っている炎は火の性質をもつ物質ではあるが、元をたどればポクリ自身の魔力で生成したものだ。
魔力で生成した物体は魔力をぶつけることで中和することができる。
つまり、俺も攻撃する一瞬だけ体の周りに魔力を纏えば火傷をせずにコイツに攻撃することができるというわけだ。
とはいえ、俺も魔力が多い方ではない。
組み技を使えば魔力を纏う面積と維持する時間が増えて消費魔力が激しい。
打撃メインで攻めてちまちま削りを入れるしかないな。
「ぼふぅ!その程度の攻撃で僕が倒れるとでも...?」
何!?
このデブ、耐久力もあるのか!!
「くらえっ!」
ポクリのビッグブーツ(前蹴り)が、みぞおちを直撃。
ぐはっ...
あまりの威力に吹っ飛ばされ、壁に激突し倒れた。
腹部に激痛が走る。
くそっ...油断した....
「僕のお菓子の恨み...その身をもって思い知れ!!」
上から声が聞こえる。
ポクリは俺がお腹を押さえて悶絶している間に階段を上り、俺を見下ろしていた。
「くらえっ!ハンバーグドロップ!!」
炎に包まれた巨体がとんでもないスピードで俺に襲い掛かってくる。
―――ドスゥゥゥン
落下の衝撃で地響きがした。
「手ごたえあり...この威力をまともに喰らって平気な奴はまだいない...」
......................
「ハンバーグドロップか...なかなかの威力だ....」
「何っ、この技を受けて平気だというのか!!」
「平気なわけあるか!!おかげで全身が痛ぇよ!!それに、俺の制服が黒焦げになっちまっただろうが!!」
この野郎、俺が手加減してやったら調子に乗りやがって!
俺はポクリの顔面を右手で鷲掴みし、左手は股を通し腰のズポンのゴムを回しのようにして掴む。
「≪筋力増強術≫(ドーピング・ハイ)」
少しづつポクリの体が動き始める。
「そんな、俺の体重を軽々と....」
覆いかぶさるポクリを力づくで持ち上げリフトアップした。
「覚悟しろよポクリ...ぶっ潰してやる!!」
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