第22話 種明かし①

「7万ギル!?思ったより少ないわね....」



「なんだ?不満か??」



リーアはとっさに慌てたように両手を伸ばし横に振る。



「いやいや...そういうことじゃなくって...

だってさっき戦ったあの人、多分格上の魔術師よ。あの固有魔法を維持するのに相当の魔力を消費するはず!多分10万ギル以上の魔力はあるわよ!」



「だろうな...だからその魔力値の差を補うために体術の方を鍛えているんだよ。

元々俺の生まれたスリル家は肉体強化系の魔術を専門とする家系だからな。体術の訓練も小さいころから一通り教わっているんだよ」



「へーー!!そうなんだ....」




目をキョトンんとさせただただ頷くだけのリーアを見て思った。



前から気にはなっていたが、俺の家柄のことを話してもリーアは顔色ひとつ変えない...



本当の本当に世の中のお家事情を知らないと見える。


俺にとっては好都合と言えばそうなのだが、逆に違和感が残る。


この娘は今までどうやって、どんな教育を受けて生きてきたんだ??




「そういえば、ジャックにもう一つ聞きたいことがあったんだったわ」



「ん?なんだ??」



「さっきの戦い、どうやって彼女の場所を突き止めることができたの?」




その質問に対しては少し返答が遅れてしまった。



「........勘.....かな....」


「嘘!!」



一瞬で嘘を暴かれた....



「勘じゃないわよ!明らかに見えていた。ナイフをガードした時も、身を潜めてる彼女を捕まえて持ち上げた時も、まるで見えているかのように相手の位置が分かっていた!」



「...........」




「白状しなさいジャック!そのトリックを!」




「秘密だと言ったら.....」




「ダメ!!主に隠し事はナシよ!!」



そう言ってリーアはジャンプして俺の頭を両手で掴み、おでことおでこをくっつける。


超至近距離で俺の目をまっすぐ見つめて決してそらさない。


その大きな真っ黒の瞳に脳が吸い込まれそうになる。




................さて、どうしたものか。


隠し事はナシ....か.....




「....わかったよ...話すからちょっと離れてくれ...」



リーアの肩を押し返し、腰を伸ばす。



「俺は人の視線が分かるんだよ...」



「視線?....」



「相手を見ればその視線がどこを見ているのかが分かるという能力...なのかな?

後天的に、物心ついたときからその能力が分かり始めたんだ」



するとリーアは不思議そうに言う。



「その人がどこを見ているかなんて、そんなの私でも分かるわよ?」



「そりゃそうだろうな。ただ普通の人はそれが見ている方向だけしか分からない。俺の場合は違ってその方向にあるどの物体を見ているのか?というところまで分かってしまうんだ。要は普通の人が感じる視線の先を精密に察知できるということだな」



「うーん....それってそんなに凄いことなの?


ていうかそんなのその相手が見えていないとどこを見ているか分かりようがないじゃない!彼女は自分の姿を消す固有魔術を使っていたのよ。それが相手の場所を把握できた理由になってないわ!!」




うーん......気づいちゃったか...


これだけの理由で納得してくれないかなーと期待していたのだがな...


仕方がない、残り半分の種明かしもするか....

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