第21話 呪いの契約書

「まったく...散々な目にあったぜ...」



あの後俺はリーアと一緒に下校していた。



気絶してしまったロイズを無理やり起こして依頼主についてあらいざらい喋ってもらおうと思っていたのだが、彼女は本当に何も知らないとのことだった。


俺たちを襲うきっかけとなった契約書だけを彼女からぶんどり、それで見逃してやった。




「それにしても、本当にあの人依頼主について知らなかったのかしら?ジャックはその言葉をあっさり信じちゃったって言うの?」




「全部を信じたわけじゃないさ。ただ、知らないんだろうなということはあらかじめ予想はしていたよ。知ってても尋問して本当に話すかどうか...行き過ぎたことをすればそれこそ問題行動とやらになりかねないだろ?」



「それはそうだけど....でもあの人も馬鹿よね。そんな紙切れ1枚で10万円貰えるなんて、そんなうまい話信じちゃってさ。仮にジャックをあそこで倒したとしても顔も知らない依頼主から報酬が支払われる保証なんてどこにも無いのにね」





...........??



「まさかとは思うが、リーアは契約書のことを知らないのか?」



「契約書?それくらい分かるわよ!!でもそれが守られる保証が無いって話をしたのだけれど?」



「いや、分ってないよ」



「何が?」



俺は世間知らずのプリンセスに分かるように契約書の右上を指さし、近づける。




「ここに厄災の刻印が打ってあるだろ?魔力だって流れている。

これは契約を守らなかった相手に厄災をもたらす呪いの契約書だよ。

今回のケースで言うと依頼を達成した場合10万円が3日以内に支払われると書いてあるだろ?もしそれを破れば、依頼主に何かしらの災いが起こるんだよ。最初は小石につまずいたり、鳥のうんこを落とされたりするような軽いものだが、支払期限が伸びるにつれてその厄災はどんどん大きくなっていく。目安として半年くらい守らなければ死ぬレベルの厄災が起こるな」



「なによそれ!!すごく危ないものじゃない!」



「まあ、それは契約を守らなかった場合の話で、きっちり報酬を支払えば厄災なんて起きないよ。ただそれだけ強力なリスクを依頼主に押し付けられるからこそこの契約書には絶大な信頼というものがあるんだ。

あのロイズとかいう生徒も本物の契約書だったからこそ俺を闇討ちしようとしてきたんだろうぜ」



「へー...なるほどねぇ....」




小さい頭を縦に振りながら頷くリーア。



本当に知らなかったのか....


てっきり上の人間が効率よく人を動かす便利アイテムだと思っていたんだがな...


だってこの契約書メチャクチャ高いんだぞ。



それを知らないということはリーアはそれを使ったことが今までで一度もないということなのか...




「でも良かったわ。ジャック、あなたって見た目の魔力量に比べて意外と強いのね」



「まあ、魔力値は7万ギルくらいしか無いからな...」




魔力値。


それは個人の持っている魔力総数の値で生まれた時点でその総数は決まっており、生涯変動しないものとされている。


いわゆる才能というものだ。


当然魔力値は高ければ高いほど戦闘面では有利に働く。


単純に魔力値が高ければ相手より先に魔力が枯渇する心配がないし、魔力消費の激しい魔術を扱うことだってできるからだ。



ちなみに俺の魔力値7万ギルという数字は中の上くらいの魔力量である。

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