第20話 ≪水面に浮かぶ雲≫
「くっ....なんで場所が分かって...」
「うるせえ!!死ねえ!!!」
かがみこむロイズに追撃のサッカーボールキックを放つ。
「ひいっ!
≪水面に浮かぶ雲≫!!(グラブ・ウォーター)」
瞬時にそれを躱すと、ロイズは転がりながら再び姿が消えていった。
「どういうこと?ジャック!!一体何が起きているのよ!!」
「見ての通りだ。敵だよ。
どうやら俺がリーアの騎士になるのをよく思っていない奴がいるらしい...」
「えっ...そんな....まさか.....」
リーアは青ざめたように顔を曇らせる。
「なんだ?何か心当たりでもあるのか...?
まあいい....今からこいつをぶちのめして色々と情報吐かせてやるんだからなあ」
そう言って俺は今度は直進し、左手で地面に手を伸ばす。
「そこにいるんだろ?捕まえたぞ!!」
再びロイズは姿を現す。
俺の左手は彼女の両こめかみを握り、アイアンクローの状態で宙に持ち上げる。
「痛だだだだだだ!!!!」
悲鳴を上げるロイズ....
「さあ、今度は俺が質問する番だ.....喋ってもらうぞ。お前に契約書を渡したその依頼主についてなぁ!!」
「このっ.....くらえっっ.........」
左手甲に激痛が走る。
こいつ....俺の左手に畳針を刺しやがった!!
瞬時にアイアンクローを解除する。
―――≪水面に浮かぶ雲≫
ロイズはまた固有魔術を発動し、姿をくらます。
「わかったわ....交渉決裂ね.....だったらもういいわ。
切り刻んであげる....私の言うことを聞かなかったことを後悔させてあげるわ」
声の方向を殴るが今度は当たらなかった....少し方向がズレたか....
................
................
数十秒の硬直状態.....
ロイズはこの場から消えていない。
近くにいる。
なぜなら視線を感じるから。
しかもそれは少しずつ近づいてきている。
おそらく俺に気づかれないように、気配を悟られずにゆっくり動いて確実に俺の体に刃物を突き付けるためだろう。
「ねえ...ジャック...走って逃げましょうよ!!このままだとヤバイわよ!!」
......
立ち尽くすリーアが俺にアドバイスをする。
だめだ。それはできない。
仮にこの場で逃げきれても、この女は明日から俺を攻撃することを辞めないだろう。
そうなったら俺の学院生活におおきな支障をきたしてしまう。
この女には二度と俺を闇討ちしないよう今日、この場で徹底的にボコボコにして分からせてやる必要がある。
安心してくれリーア、俺は負ける気は全くないからよ。
決着の瞬間はいきなり訪れた。
左を向き、さらに体を右へスライドさせ、左手はナイフを突き出そうと伸ばした右手をガッチリ抑え、右手で彼女の左肩を抑える。
「そんなっ....これを避けるなんて....ジャック!あなた本当に私の位置が....」
「分かるさ。あんなに殺意たっぷりの目で見つめられたらな」
驚くロイズの首に左腕を巻き付け、右手で腰を掴み垂直に持ち上げる。
「この俺に戦いを挑んだことを心の底から後悔しやがれ!これが俺の必殺技(フェイバリット)」
足で地面を蹴り上げ、背中から落下する。
DDT!!!
地面にロイズの脳天がめり込む。
強烈なその一撃に一瞬で彼女は白目を向き気絶した。
「おーーー....」
あっけにとられたリーアは相変わらず口をぽかんと開けて間抜けな顔をしている。
とりあえずは勝った....が、俺はまだ知らなかった。
この件がこれから起こる波乱のまだ序章にすぎないことに....
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます