第19話 なんと間の悪い...
クソッ....
後方に再び裏拳をいれる。
しかしそれは虚しく空を切った。
「ははは...当たらない当たらない....
私の声の位置でどこにいるか方向が分かっても距離までは分からないでしょう!!」
くっ....
余裕の表れか...
自分の位置を知らせるようにあえて大きな声でロイズは話す。
相当な自信があるらしい。
自分の姿を消す固有魔術...なのか。
たしかにこれなら手も足も出ないな....
それが普通の生徒なら....な。
「ジャック!」
校舎側の方角から明るい女子生徒の声がする...
聞き覚えのある子の声....
「っ....リーア.....」
なぜ今ここに...来るな...!!
この透明女は何を考えているのか分からねえ....
もしかしたらリーアに危害を加えるかも...
こっちに来させてはだめだ...
走ってこいつを別の場所におびき寄せる...?
いや、こいつの気が変わって標的をリーアに変更するかもしれない....どうすれば...
「まだいたんだ...
あのさ。せ...せっかくだしさ..寮まで一緒に帰らない??
ほら...私の住んでるところ、男子寮の近くだから...
途中までなら...ね?いいでしょ?」
なんということだ...
別に一緒に帰るのは良いがタイミングが悪すぎる。
どうすればいいんだ...リーアに怪しまれないように彼女をここに来させない方法...
だめだ...全く思いつかん...
そんなこと考えているうちにほら...リーアはだんだんと俺の方に近づいて来る...
「ねえ...ちょっと聞いてるのジャック?言っとくけどプリンセスを自宅まで護衛するのは騎士としての当然の役目なんだからね!」
焦る俺に背後からロイズの声が響く。
「あら...ちょうどいいじゃない...プリンセスの方からアナタのところに来てくれるなんて...」
「お前...目的は俺じゃないのか!」
「もちろんそうよ。でも私の目的はジャック。あなたに騎士の契約を破棄してほしいだけ、今それをあのプリンセスに言うだけでいいのよ。
それが達成できれば私はこれ以上何もしないわ。
さあ、言いなさい。今すぐあの姫に、
騎士の契約を破棄すると....」
リーアは小さい足でトコトコ俺のところまで来る。
「ん?どうしたの?なんか汗かいてない?」
「いや...別に...」
「ていうかその肩どうしたのよ!!制服まで破けちゃって...血も出てるじゃない!!医務室に行く??」
(さあ、言え!!早く....)
「リーア....すまない......」
「え?どうしたのよ急に?さっきからジャックの様子なんだか変よ??」
「リーア...俺は謝らないといけないことがある」
「....なによ...そんなかしこまって....」
..................
「問題行動は起こすなとさっきリーアは言ってたよな?どうやらあの約束は守れなさそうだ」
そういうと俺は体を右に90度方向転換し、何もない空間に渾身のミドルキックを放った!
「ぐえっ....」
右足に柔らかい肉が入り込んだ感触がある。
ロイズはたまらず魔術を解き、その姿が現れた。
ビンゴ!!
俺の蹴りは確実にロイズの脇腹を捉えていた。
「え?え?...えええ???」
状況の理解が追い付かないリーアはぽかんと口を開け、その場に立ち尽くしているだけであった。
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