第15話 決着、その後

気まずい空気が流れる....



そんな状況を私が作り出してしまった....


悔しい...すごく悔しいんだ私....




♡のロイヤルストレートフラッシュで舞い上がっていた数分前の自分をぶん殴りたい。



どうしておかしいと思わなかったんだろう....



私はフォルトゥナの加護を最大に使用した。



もしそれなら...


私の手に来るのは♡のロイヤルストレートフラッシュじゃなくて最も最強の役、♤のロイヤルストレートフラッシュが来るべき...その筈なんだ。



それが来なかった時点で疑うべきだった....



つまり、この男が♤のロイヤルストレートフラッシュを作れなくした何かの細工をしたんだって....


そう思うべきだった....




それがこの結果だ....負けた...私の完敗...






でも....でも....認めたくない....





結局のところコイツがやっているのは何かしらのイカサマ....



そんなものに、私の神の加護が負けたことが....




「....あのなあ、風紀委員...さっきから俺のことをイカサマだなんだっていうがなぁ...俺からしてみればここまでの5戦、お前の手はそのすべてがフラッシュ以上の手、しかも内3戦は手札チェンジ無し。普通に考えればそっちもイカサマやってるレベルで手が良すぎるんだよ。


この5戦目も見ろ、初手からロイヤルストレートフラッシュって...普通はどう考えてもおかしいんだよこんなのは...おそらく風紀委員自身の何かしらの魔術でやっていることなんだろうけど...俺はそれを指摘しなかったよな...」




「うるさい!うるさい!!とにかく、無効!!無効なの!!こんなイカサマポーカーは認めないわよ!終わり!!無効無効!!!」





...............




...............





「ううっ....引き分け.....引き分けにしてよぉ....お願い....」




ジャックは呆れたように『はあっ...』とため息をついて深くドスンと椅子に腰かけた。




「お前、相当な負けず嫌いなんだな...仮にこの勝負で俺が勝っても風紀委員は特に失うものは無いだろうに....そこまで言うならこの勝負は引き分けで....








と言いたいところだが....俺もそこまで優しくはないんでね....



遠慮なくめくらせてもらうぞ!!」








「あっ....」




止める間もなく急に5枚目のカードが裏返る。



そのカードには当然のように黒でAの文字が浮かび上がった。





「おえええぇぇぇ.....」


その場で吐いてしまった...





周りの歓声が「うおおおお!!」っと響く。



観客もジャックの勝利を喜んでいるようだった。






視界がゆがむ。


目の前がぐにゃぐにゃになって....


だんだん暗くなる.....















.......................














「......様....」











「リーア様!」








........誰...?













「リーア様!!....リーア様!!!起きてください!!!」







レーン....か....





私、気絶していたのね......










「ごめんね...レーン....昨日から....色々手伝ってもらったのに.....私....負けちゃった...」






ボロボロと...


また涙が零れ落ちる。






プリンセスに敗北は許されない。


将来、国の頂点に立つものとして神の加護付きの王女が平民に負けたとあれば私の威厳は地の底に落ちる。




ただでさえ不人気なプリンセスの私が....




勝ちたかった、勝ちたかったよ.....











「おめでとうございます!!リーア様の勝利です!!!早く起きてください!!」















...........えっ?






勝ち?何が?





えっ?






体を起こして卓上に視線をむける。







「.......あっ...」







そこにあったカードは....











♤10、J、Q、K



そして......






♧A⁉






ってことは....







「俺の手はストレート...風紀委員...あんたの勝ちだ」





ええっ!!!




周りからの歓声が止まらない。





『リーア!リーア!』



と突然の私のコールそれから、




『よっ!泣き虫プリンセス!!見ごたえのある試合だったぜ!!』


『ゲロ王女万歳!!』



ちょっ!!誰がゲロ王女よ!!




「いま言ったの誰?出てきなさい!!!」



『うわー怖っ!!』




そんな中ジャックはというと静かにただ卓上を見つめるだけだった。





絶対負けたって...


最後のカードは♤Aだって、そう思っていたのに結果は♧A....




わざと...?




いや、そんなことする理由なんて....特にない。



ということは偶然最後に配られた5枚があのストレートだったってことなのかしら?



でもそれは...




それは、今の私がいくら考えても分からなかった....





「はいはい、終わり....というわけで約束通りこの賭場は解散するぞ....全員出ていけ...」



「おい、ジャック!マジで言ってるのか?せっかく見つけた空き部屋なのによう..」



「俺が負けたんだからしょうがねえだろ!」





そんな感じで、数分もしないうちにその教室からは誰一人としていなくなった。


こうして私は風紀委員として学院に蔓延る悪質な賭場を取り締まることに成功したのだった。

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