第12話 確率 4/2598960

ポーカー5戦目が始まる。


勝ち星はお互い2つ。


もっとも、この男の星は全て卑劣なイカサマで手に入れたものだ...




しかし、次。


結局は次の勝負で勝ちさえすれば私の3勝。この男に勝つことができる。




なるほど、さすがはこの賭場の元締め。



いまだにどんな手を使ってズルいことをしていたのかは分からないけど、最後のこの勝負は容赦しない!




私の加護、フォルトゥナの力を全力で出す!




力を出しすぎると天文学的にありえない確率の手札ばっかり来るからあえて力を押さえていたけど、そっちがイカサマで勝とうとしてくるなら仕方がないわ。



怪しまれたって構わない。


王女候補の力、存分に見せてあげるわ!!




「あの...姫...」



ここでディーラー役のレーンが口を開く。



「?、何よ」



「もうお配りするカードがありません。先ほどの試合ですべてのカードを使いきってしまいました」




まあ、4戦も戦ったのだ。


1回ごとの試合で最低10枚は使うからチェンジも合わせたらそりゃカードも尽きてしまうでしょう。



「こういう時はどうするのよ。ジャック...」



彼を睨みつける。



「まあ、そういうことならもう一回全部のカードをシャッフルして配りなおすしかないな」



「.....そうね」




そういうわけでカードは全て仕切り直し。


まあでも、そんなものはもうどうでもいい。



私がフォルトゥナの力を全力で解放したのだ。


どんな山札だろうと最強の手札が私のもとに配られるはず.....


そう、つまり私のカードは....





♡10♡J♡Q♡K♡A




ロイヤルストレートフラッシュ!!




その確率4/2598960


約0.00015%




その手を初手で引いてくるこの豪運!!


これがフォルトゥナの力!



豪運というよりこれはもはや必然!女王候補に与えられた最強の力!



私至上の人生で一番この加護が活躍している瞬間だわ!!


さあ平民よ!この私にひれ伏しなさい!




「チェンジはしないわ!!」




さあジャック、あなたは一体どう動くのかしら??




「....ノーチェンジ?また良い手が入ったのか風紀委員。ツキが半端ないな....」



「あらそう?でもほら、運も実力のうちって言うじゃない?こういうのは日頃の行いがモノを言うのよ。こういう土壇場の勝負所ではね」



「....運、ねぇ...」



ジャックは顔を少し曇らせる。




そうか、彼には手が入らなかったのか...


おそらくブタ、良くてワンペア止まり。



でも別に、それが普通。普通なのだ。



人生、生きている幸運と不幸がランダムに訪れる。


とある一説によると、それらを足し合わせると生涯で運はプラスマイナスゼロに収束するらしい。



ということはだ、人生の行動の半分は良いことがあって半分は悪いことが起こる。


それが普通の人。



だから、ポーカーで配られた最初の手がバラバラ。


そんなことは良く起こること。


それをこの男がたった今引いただけ。



もっとも、私の手はロイヤルストレートフラッシュなわけだから並大抵の幸運程度じゃどうにもならないけど....



なんか、最後の3、4戦目にいろいろと小細工してきたから何かしてくるんじゃないかと思ったけど、思ったよりあっけなかったわね。



まあそれもそうか、3戦目は私の手札から、4戦目は使用済みのカードからすり替えをしていたけど、今回は全部の山札をリセットして一から始めた。


私の手札は取られないようにしっかり手に握っているのだから彼は今、すり替えるためのカードがそもそも無いのだ。

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