第10話 曖昧な記憶

「君は俺の作ったフォーカードの...えーっと....♧Kと♢Kだっけ?これが1戦目に使われたカードと言っていたがそれは本当かなぁーと思ってね...」



「え?....何言ってるのよ...だって私はこの目で見たんだから...

そ、そんな苦し紛れの屁理屈が今更通用すると思っているの?」



「いや、本当に分からないから聞いているだけなんだよ...

例えばこの♧K。君は初戦に自分が使ったと言っていたが、俺の記憶が正しければ初戦の風紀委員の手札は3♤3♧3♢3♡Q♡だったはずだよな。♧Kなんて使っていないじゃないか...」



「う....それは....」



たしかに...♧Kは私が交換したカード...


だから私以外誰もそのカードを見ていない....




「ほら、♧Kを使った証拠が無いじゃないか!だったら屁理屈は風紀委員の方だな。

このフォーカードは有効だろう!」



まずい!このままだとこの男に逃げられる...


ジャックはイカサマをしている!!


そのことは事実なんだ!!



ここで引き下がるなんて私の...ラック家の恥だわ!!



「だとしても!!....」



「あん?まだ何か?」



「その♢Kのほうはどうなのよ?」



「......どう?とは??」



くっ...このっ.....



「私だって初戦のアナタの手は覚えているわよ!!

♤5♡5♤A♤2♢Kでしょう!!♢Kは使われていて...ここにいる全員に公開された情報のはずよ!それについてはどう説明するつもりよ!こっちについては言い逃れなんてできないはずよ!」



ジャックはポケットから大玉の飴を取り出し、再び口の中に入れた。


相変わらず腹の立つ表情をしている。


そして彼はその膨らんだほっぺを手で撫でながらとんでもないことを言い始めた。




「うーん...そのことなんだがなぁ...覚えていないんだよなあ....」




は?......




「確かに5のワンペアを作ったところまではギリギリ覚えているぞ!でもそれ以外のカードはなぁ...正直言って勝負に関係ないものだし、どうだったかなぁ...♢のK...

使った気もするし使ってない気もするなぁ...

でも♢Kはここにあるわけだし、あれは♢Jか♢Qだったのかもしれないなぁ~

それとも全然違うカードだったのかも...

いや~全然覚えていないなぁ....」



「お...お前ぇ!!どこまで私を場コケににすれば気が済むんだ!

アンタが♢Kを使ったことはこの部屋にいた全員が見ているのよ!ねえ、そうでしょう?周りの皆も覚えているんでしょう?」



そういって周りのザコ供に問いかけるも...



『いや、そんな前のこと覚えてねえし...』


『♢K見た気もするけど...』


『いや、全然わからん...というかスリ替えしたならその時点で俺らが気づくし....』




だとか、どいつもこいつもバカばっかりだ!!


話にならない、こいつらの脳みそはミジンコでできているのか!!

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