第3話 Betするもの

「俺達を告発しても、アンタの元に付く生徒はいねえよ…」



「そんなの、まだ分からないでしょ!!」



「分かるさ。それぞれのプリンセスに仕える生徒は家柄でほぼ決まっている。その家系の親が所属している国に仕えるのがこの世の常識。可能性があるとすれば俺らの様な低ランクで親から期待もされず勘当ぎみになっている生徒だが、そいつらもわざわざ弱小のプリンセスの元にはつかないぞ。当たり前だろ」



「っ……」



「それに引き換えどうだ?風紀委員。お前が俺に勝ったら無条件でここにいる17人がアンタの手下になる。仮にそっちが負けても俺らはここで賭博を続けるだけ。風紀委員さんは見て見ぬふりをするだけで何も困ることはない。ノーリスクで配下を手に入れる事ができる大チャンスってわけだ」





……………





不覚にも私は悩んでしまった…



全てはこの男の言うとおり…


私の騎士になってくれるような生徒はこの学院にはもうほとんど残っていない。



誰でもいい、私の騎士になって欲しい。



そんな思いでこいつらを告発しようと思った。


でも、それが叶うのなら…



「気が変わったのなら、ここにどうぞ」



向かい側の席を指す。


全てを一瞬で見透かされた私は、もうそこに座るしかなかった。



「やる気になったか?」



少し勝ち誇ったようにニヤける。くそっ…



「勘違いしないで!まだ決めたわけじゃない!」



「じゃあなんで座った?」



「確認することがあるからよ」



「確認?」



「そう。もし私が勝っても、お前ら性根の腐った人間のすることだ。突然裏切ってきて、今の話はなし!とか言われたら今から勝負する理由がない。私が勝った後に勝負を反故にしないという証明を出せ!」



するとジャックは一瞬考えてこう言った。



「ああ、それなら問題ない。この部屋では負けたらキッチリ精算する。それが絶対条件だ。賭場でそのルールを反故にしていたら賭けそのものが成立しなくなるからな」



「その言葉を私に信じろと?」



「もし反故にしたらその時は遠慮なく生徒会でもなんでも通報してくれ。俺らも生徒会にバレるくらいならアンタの下につくことを選ぶさ」



……



「他に何かあるか?」



「勝負は、さっきあなたが言ったポーカー?」



「そのつもりだが?気に入らなければ別のものでもいいぞ。ここには大抵のゲームは置いてある」



……どうする?


ポーカーのルールは知っている。


勝負をする分には問題ない。



そして、実は私にはこのポーカーにおける勝算があるのだ。


だから、勝負すれば私が勝つ。


ほぼ、間違いなく。




しかし……だ。



この男、得体がしれない。


見た感じ魔力は大したことはない。


良くてもギリギリAクラスに入るかどうかの実力しかないだろう。



もっとも、今からやるのはポーカーだから魔力とかそういうのは全然関係ないのだが…



私がこの部屋に入ってからの平常心と冷静さ、私の狙いを読んだ分析力。


そして、私は今からするはずの無かった賭けをこの男とやろうとしている。


全ての事がこの男の思うように進んでいるのだ。



ジャックと言ったな。


この男には何かがある。


これ以上、奴の思い通りにさせるか!!

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