第2話 不人気なプリンセス

「ギャンブル?何をわけの分からないことをっ!こっちは忙しいのよ!お前みたいな腐った男とトランプをして遊んでいる場合じゃないのよ!」



「………」



「大体、ギャンブルは賭けるものがあって初めて成立するものじゃない!私がアンタに勝ったところで、何のメリットもないじゃないの!」



「メリットならあるさ…」



「なんですって?言っておくけど私は薄汚れた金なんて受け取る気はないわよ!」



そう言うとジャックの隣にいた頭の悪そうな大男が声を荒げる。



「この女、黙って聞いてれば調子に乗りやがって!!ジャック!見たところ、ここに来たのはこいつ一人みたいだぜ。このチビ全員でボコすぞ!そうすればここを知るやつは誰もいなくなる。おい、お前ら!」



すると、ジャックはそいつの頬を殴り飛ばし、空高く放り投げた。


突然の行動に息が止まる。



「やめろお前ら!妙な考えは起こすなよ、」



そこにいる全員が動揺し始めた。



「忘れたのか?委員会のメンバーと生徒会は全員神の加護憑きだよ。俺らが全員で束になっても勝てるわけねえだろ…」



…この男、この状況で一人だけ冷静だ。


いや、こいつ以外がただバカなだけなのか。


いずれにせよこの学院で委員会に立てつく一般生徒はまずいない。


魔術師としての実力差がありすぎるからだ。



「さて…すまないな風紀委員。話を戻そうか…」



何事もなかったかのようにまた座り始める。


殴られた大男は床に伏せて気絶していた。



「話す必要はない。お前らバカ共と話をするとバカが伝染る」



「そう言うなよ。ポーカーでもしようぜ…」



「だ・か・ら、私はギャンブルはしない!」



「もし、俺が負けたら俺たち全員アンタの下についてやるよ」




「え?…」



その言葉に私は返答を躊躇ってしまった。


こいつ…



「わっ…私はお前らみたいなクズを手下にするつもりはないぞ!お前らみたいなのを騎士にしてもラック家の恥にしかならん!!」



そう言うとその男は鼻で笑った。



「この学院の一般生徒は、ここを卒業したら神の加護を授かったプリンセスと呼ばれる姫の国へと派遣され騎士となって生涯を尽くすことになる。生徒会と委員会は全員将来のプリンセス候補で構成されている。そうだよな、風紀委員。」



「それがどうしたのよ?…」



「有名どころのプリンセス候補は大体は俺の頭の中に入っている。だが風紀委員、俺はあんたの顔は初めて見るぜ。お前らもそうだろ。こいつのこと知ってるやつはいるか??」



『確かに…そういえば初めて見るな』


『本当に委員会メンバーなのか?』




場内がざわつく。


この男、もしかして気付いているのか?



「はっきり言ってお前、人気ないだろ。配属する国は俺ら一般生徒が自分の意思で決めることができるんだ。さてアンタの下には何人の手下がいるんだ?」



「…っ、、うるさいわね。これから増えていく予定なのよ!」



「0か?」



「一人だけいるわよ!!」



「たいして変わらないじゃねえか…まあいい、ここにあんたが一人で来たのは自分の知名度を上げるためなんだろう?風紀委員としての実績を上げれば自分の下に付く生徒が新たに出てくるかもしれない……と。本当に俺達をしょっぴく目的なら万全を期して大人数で来るはずだもんなぁ。一人で来たということは手柄を独り占めしたいからだ。違うか?」




………



「答えないということは図星だな」



「ええそうよ。悪い?そもそも賭博なんて悪いことをしてるのはあなた達なんだから、この学院のゴミ掃除と私の配下を増やす。両方ができて一石二鳥じゃない!」

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