低ランク魔術師でも神様に勝てますか?

雪だるま式

第1話 賭場で眠る男

ーーーダンッ!!



扉をわざと聞こえるよう大きな音をたてて開ける。


薄暗い部屋の中にいた生徒達は一斉に私の方を振り向いた。


この学院に巣食うウジ虫共が!



「全員その場から動くなっ!!」



ピリついた空気が室内に走る。


往生際の悪い何人かのクズはカウンター上のトランプや麻雀牌を急いで仕舞い始める。



「そこっ!動くなと言っただろ!!」



そこに炎の魔術を打ち込むと、彼らは慌ててそれを避け、萎縮する。



「調べはついている、お前達は授業中にも関わらずこんなゴミの掃き溜めで賭博をやっているな!!ここにいる全員が処罰の対象だ!ただで済むと思うなよ!」



怯える生徒たち。



………



よし、決まった。


数ヶ月に及んで聞き取り調査をし続けたかいがあったわ!



あとはここに生徒会長を呼ぶだけだ。


もし、これを私の手柄にすることができれば…

私の下についてくれる生徒も必ず出てきてくれるはず…



……ん?


私の目に一人の生徒が映る。



全ての生徒が震えている中、その男だけは壁に背中をもたれかけ、両腕を大きく伸ばして背伸びをする。



「ふぁ〜…なんだ…?うるせえなぁ…」



今起きたかのようにその男はゆっくりと立ち上がる。


この状況がまだ理解していないようだった。



「なんだ?この茶髪のチビ助は。新しい会員か?女が来るのは珍しいな…」



などと、あくびをしながらふざけたことを言い始める。



「おい、ジャック。やべえぞ!美化委員だ!俺たちのことタレコミに来たんだよ…」



………



ジャックと呼ばれたその男と目が合う。


半分眠りかぶったその瞳からは鋭い敵意を感じた。


そいつは観察するかのようにじっくりと舐め回すように私を見てきた。



「アホ、こいつは風紀委員だよ。肩の紋章見ればわかるだろ」



「ああっ、そうだな…そう、それだフウキ委員だな…」



「ったく…

それで?風紀委員のあんたが俺らに何の用だ?」



この男がここの元締めか?


なら話は早い。



「お前らはここで賭博をしていただろう!それはこの学院の風紀を乱す悪質な行為だ!よって生徒会に今から報告し、貴様らを処罰してもらう!!不審な行動を取れば今すぐ…」



「それは困るなぁ…」



そう言いながらジャックはボリボリと頭を掻いた。



「困るって…自分たちのした行動でしょ!大人しく処罰を受けなさい!」



フゥーー………


ジャックはため息をつき、近くの椅子を手に取り座った。


どうやら観念したようだ…



「なあ、風紀委員さんよ…今からってことはまだ生徒会には報告していないってことだよな?」



「…そうよ。…それがどうしたのよ?」



「だったら俺と、今からギャンブルをしないか?」



「はあ?一体何を言ってるのかしら?…」



「もし俺が勝ったら、ここは見なかったことにしてほしい…」



気が狂ったのか?


この男、とんでもない提案をしてきた。


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