第11話. 回想2

次に気付いた時には西武新宿まで駅員に肩を叩かれていた。

 高田馬場を乗り過ごしたのて、遅刻はほぼ確定だ。

 どうにもならないのは分かっていながらも、体は勝手に急ぎ出した。

 次の始発を待つ間もずっとソワソワしたままだった。

 始発が出発した頃、恵美からLINEが入っていた。

 「昨日はありがとうございました!途中からあんまり覚えていなくて…もしかして送ってくださいました?」

 「うん、ベロベロだったしね。二日酔いは大丈夫?」

 「そんなに無いので大丈夫です!

 …変なことしてないですよね?笑」

 「ま、まさか!」

 「うふふ、東さん可愛いですね。」

 「揶揄わないでよね笑」

 丁度高田馬場に到着したので、地下鉄に乗り換え、座席に着いた時、恵美から更にLINEが入っていることに気付いた。

 「東さん、ホントは覚えてますよ、チューしてくれたの。笑」

 赤面してしまった。酔ったふりして誘われていたのか。

 何と返していいか分からず既読を付けたままスルーしてしまった。

 大学に着くと、LINEの件はすっかり忘れてしまっていた。

この日の講義も終わり、カフェオレを片手にリラックスしていたが、ふとLINEの件を思い出した。返信しておかないと。

 恵美からは着信が何件か入っていた。

 慌てて折り返すと、恵美は直ぐに出た。

 「あっもしもし。何で急に無視したんですか?」

 「えっいや、その…」

 「言っときますけど、嬉しかったですよ!」

 「でも、彼氏さんの手前…」

 「いいの。もう別れてきた。」

 「マジで⁈」

 「うん。東さんのことが好きになったから。私じゃダメですか?」

 「いや、俺でいいの?」

 「東さんだからいいんです!」

 返信をして間もなく、僕の左腕に見覚えのある女性がしがみついて来た。恵美だ。

 恵美から香る香水の甘い香りに吸い寄せられるように、僕も恵美を抱きしめた。もう言葉は要らなかった。

 僕達は恋人繋ぎで地下鉄に乗り込んだ。

 道中、窓に恵美の顔が映った。恵美はずっと僕の顔を見上げていた。僕も見つめ返すと、互いに微笑み合った。

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