第9話 罪悪感

さつきちゃんはキッチンに向かい、朝食の準備をし始めた。

 朝食が出来るまでの間、スマホゲームで時間を潰していたが、途中で恵美からLINEを受信した。

 「夕方には帰ります。出来る家事はしておいて。」

 恵美は夕方には帰って来る。それまでには何らかの決断をしなければならない。

 「けんちゃん、ご飯出来たよ。」

 さつきちゃんが声を掛けてきたので、一旦恵美のことは忘れてハムエッグとトーストを平らげた。

 朝食を食べ終えると、帰り支度を始めた。

 背後からさつきちゃんが抱き締めてきた。

 「信じてるから。」

 僕は敢えて返事はせずにさつきちゃんの手を握り返した。

 自宅に戻り、急いで出来そうな家事を済ませて、ソファに腰掛けた。しかし、中々落ち着かなかったので、コーヒーを入れ、ゆっくり味わいながらリラックスすることにした。

 一線を超えてしまった。前から彼女に惹かれていたから喜ばしいことなのだが、何処かスッキリしない、苦々しい気持ちで一杯になった。これが罪悪感というやつか…?恵美が帰って来たらどんな顔して出迎えれば良いのだろうか?

 脳内は罪悪感でぐるぐるしていたが、同時にさつきとの甘いひと時の快楽もこびり付いていた。控えめに言って蕩けるような気持ち良さだった。こりゃ完全に脳内麻薬出てるわ。

 ピンポーン。恵美が帰って来た。

「ただいま。ん?珍しいね、何で出迎えてるの?何か良いことあった?」

「あるわけないだろ。先に家に居てたら出迎えるだろそりゃ。」

「ふーん、まぁ良いけど。」

 恵美は僕の顔をまじまじと覗き込み、無言で洗面所へと消えていった。

 何とも言えない反応でモヤモヤした。まさか気付いてる…?そんな筈無いか。もう気にするのは止めよう。

 僕はキッチンで水を飲み、気持ちをリセットした。

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