第20話 キューピッド
『マナティが普通の女の子みたいな買い物してて親近感』
『ゆーにゃってメンヘラだからマナティと仲良くされるの微妙って思ってたけど、ゆーにゃとマナティって姉妹みたいで良き!』
『もっと二人のコラボ見たい! ビジュが最高、二人とも天使過ぎて癒し』
『年下のゆーにゃに一般的な事言われて素直に実践するマナティ尊い』
マナティさんとのコラボ動画が公開されて、マナティちゃんねるには当たり前だけれど私のチャンネルのコメント欄とは桁違いの量のコメントが毎秒増えている。
マナティのお買い物動画といえば桁違いの爆買いが常だったけれど、今回のお買い物動画でその流れが変わっていく様だ。
変わっていく様だではなく、正確には変えて行く為に私とのコラボお買い物があったと言った方がしっくりくる。
あの日の撮影で私にはお買い物金額の上限が予め設定されていて、爆買いをしない様子をしっかりみせるよう言われていた。
この演出は、マナティさんサイドからの依頼だったと完成した動画を一緒に観ながらリョウさんが「先方の希望通りの流れが自然に作れて良かった」とポツリと言った事で気がついた。
ピコンピコンっとメッセージの通知が来た。
『ゆーにゃちゃーん、マナこれから渋谷遊びに行くから暇だったら一緒にご飯食べに行かない?』
『マナのマネージャーも一緒に三人でご飯だよー』
マナティさんからプライベートな食事のお誘い…一呼吸置いてリョウさんに一旦相談しよう。
リョウさんにマナティさんから誘われた食事に行っても良いか相談したところ、会食先と自宅の送迎をリョウさんがするという事を条件にOKになった。
早速マナティさんに連絡をする。
『嬉しいです! ぜひご一緒したいです! マネージャーが送迎してくれるので会食先のお店を教えていただけますか?』
直ぐにレストランの情報と『マネージャーさんも一緒に四人で食べよ!』と連絡が来たので、そのままリョウさんに伝えると、リョウさんが心なしか嬉しそうにしたのを感じた。
***
「ねぇ、ゆーにゃちゃん」
マネージャー二人の会話が盛り上がってる隙をつく様に小声になるマナティさん
「あの二人、絶対いい感じだと思うの!」
「え? いい感じってつまり…」
「もぉ、はっきり言わせないでよーあの二人、付き合ったら良いと思う! 作戦はね…」
何を言い出すのかと思ったら、唐突にお互いのマネージャーをくっつける作戦を決行したいと言うのだ。
何でも、初めての顔合わせの打ち合わせ依頼、マナティさんのマネージャーの
「二人とも大人だから、私達が余計な事をしなくても付き合いたければ付き合い始めるんじゃないですか?」
「ゆーにゃちゃん、わかってないわねー、超大人だからキューピッドのアシストが必要なのよ」
「あ、マナとゆーにゃちゃんSNS用の写真撮ってきても良い? 店内なら良いよね? 貸し切ってるし」
「オーナーに写しても良い場所を確認してくるので、席で待っていて…」
「大丈夫よ! 颯に確認して貰わなくても自分達で確認できるわ」
「そうですか、それではゆーにゃさん、マナをよろしくお願いします」
「は、はい」
颯さんとリョウさんの二人を残してマナティさんとお店のオーナーの許可をとってセルフィだけでなく、お互いに撮り合ってみたりした。
「ところで、キューピッドのアシストって何をするんですか?」
「すでに始まっているわ!」
「二人きりにするって事ですか?」
「そう! シンプルだけど効果は絶大だと思うの! 何せ二人とも四六時中タレントと一緒で仕事の鬼だから、出会いもなければ仕事以外の話をする機会もほぼないと思うんだよね! そこに好みの相手と二人きりなら絶対意識しちゃうと思う!」
言っている事はわからなくはないけれど、流石に強引すぎるな…と思っていると「デザートが来たから席に戻って来なさい」とリョウさんから声をかけられた。
お店のシェフのご好意で…と言う注釈の言葉を絶対に添えなくてはいけない程、ゴージャスで可愛いマナティ専用スペシャル爆盛りデザートがテーブルの写真が撮りやすい位置に鎮座している。
最近すっかり体に染みついたSNS用写真の撮影をスムーズに行い、デザートタイム…かと思ったけれど、爆盛りデザートは一旦キッチンに下げられて、丁度良い量のデザートが各自のお皿にデコレーションされた状態で改めて登場した。
あまりのスピード技に口を開けていると
「マナの健康、美容管理の観点からスイーツは少量で出してもらう用お店の方に頼んでいるんです。出てきたら出てきただけ食べてしまうので」
「そんなに、ぜーんぶ颯に管理してもらわなくてもちゃんと食べる量くらいコントロールできるもん」
美味しくデザートを食べて、コーヒーと焼き菓子で最後の談笑をリョウさんが締めようとした時、マナティさんが「四人で写真撮りたい!」と言い出したので、お店の方に頼んでテーブルで集合写真的なものを撮った。
「なんか、颯とリョウさんってお似合い!」
と恐ろしく大袈裟に言ったマナティさんを見て颯さんは「これだからドラマや映画の話は殆ど来ない」と呆れた様な口調で言ったかと思ったら、珍しくリョウさんが笑っていた。
マナティさんの言うとおり、颯さんとリョウさん、本当にお似合いのカップルになるかもしれないと思った。
帰り支度が完全に完了し、車に乗り込む直前に双方のSNSで今日の会食時に撮影した写真とショート動画を投稿した。
凄い勢いで反響が来ている事はスマホを見なくても分かっているので、気にせずそれぞれの車に乗ってレストランを後にした。
「ねぇ、ゆーにゃ」
リョウさんがいつもより少し優しく声をかけて来た
「颯さんと私、どう見える?」
優しい口調からのまさかの先制攻撃に上手く答えられずにいると
「実はね、時期はズレているけど大学の同じゼミの先輩後輩で、私が今の仕事をするって決めた時に凄く相談に乗ってもらった恩人なのよ」
この話をリョウさんの方からしてくると言う事は…キューピッド作戦が早々にバレている…という事だろう。
「まぁ、ゆーにゃやマナティさんみたいにまだ若くて人生経験の少ない子には同性の友情くらいシンプルじゃないとわかりずらいと思うけどね」
「あの、私達がリョウさんと颯さんがカップルになったら良いのにって思ってるのいつ気がついたんですか?」
上機嫌に笑顔を浮かべたリョウさんは
「気が付いたのは私じゃなくて颯さん、マナティさんの様子を見れば何を考えているかすぐ分かるって。それで、申し訳なさそうに私に多分余計な事をするだろう…って教えてくれたって感じかな」
会食場所は自宅から近かったので、あっという間に家に着いた。
(マナティさんは多分まだ勘違いしたままだろうから、後で二人は恋愛とかではないって教えてあげなくちゃ)
キューピッド作戦開始の記念にとマナティさんが撮った二人のセルフィーと一緒に『共同作戦するくらい仲良しのお友達だからゆーにゃちゃんは私の事さん付けで呼ぶの今から禁止ー!』とメッセージが来た。
『キューピッド作戦終了の気配です…』
と返信をしたところ
『嘘でしょ!? なんで? とりあえず、後で寝る前に通話しよ!』
とマナティちゃんから長時間通話の予告が届いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます