二 徳川秀忠、寝坊するでゴザルの巻
小西行長がハワイで困惑している頃、三成と対立している
「ええい、もっと速く走れ」
「運転手を急かしてもムダです、ダイヤが決まってますから」
「うるさいうるさい、俺は急いでるんだ」
秀忠が急ぐのには理由がある。寝坊したのである。
「ちゃんとスマホのアラームをかけておかないから」
アドバイザー的なポジションの
「かけたもん。5分おきに7つセットして、絶対どれかで起きるようにしたもん。ただ充電を忘れただけだもん」
それじゃ意味がない。
「そもそも、夜中までゲームやってるから起きられないのでは」
「途中にセーブポイントがなかったんだよ」
それはしょうがないね。
「ヤバいよヤバいよ、遅刻したら絶対パパに怒られるよ」
「それはそうですね」
正信も同意する。
「家康公は勝負ごとに厳しいお方ですから。草野球でバスターエンドランのサインとか、普通出しませんよ」
「怖いなあ。どうしようどうしよう」
脅えるあまり、また運転手を急かし始めた秀忠に、正信は声をかける。
「これはフラッシュアイディアですが」
「何でもいいよ、言って言って」
「このままだと遅刻するのは確定です」
「だよねー」
「なので、遅刻しても怒られないような言い訳を考えましょう」
「言い訳ねえ」
確かに運転手を脅して無理やりダイヤを乱すよりは、まだ建設的な意見と言える。
「それじゃあみんな考えて」
正信が言うと、みんな配られたフリップに言い訳を書き始める。
「では私が」
「
『徳川秀忠の軍勢が関ヶ原に大遅刻。その理由は』
ナレーションの後に、酒井
「クマが出た」
「うーん、ひねりが足りないなあ」
しょんぼりする家次の隣で、
『大遅刻。その理由は』
「カレーが辛かった」
「シュールすぎ。もっとわかりやすいのを」
その後もガソリンが値上げした、UFOにさらわれた、文字ではなくイラストを描いてくるなどの回答が出たものの、どれも決定打にはならない。
「こんなに人数がいるのに、オマエら全員役立たずだなあ」
自分は案を出さないくせに、やたらとチェアマン感を出してくる正信にみんなイラついてきたところで、車両の後ろの方にいた
「あのう」
「どうした真田くん」
信幸がフリップを裏返すと、そこに描かれてたのは路線図。
「この後松本で乗り換えた先に
「ふむ」
正信はうなずいて、秀忠と相談する。
「出た中では1番いいんじゃないかな」
「私もそう思います」
結論はすぐに出た。
「じゃあそれで」
「やったあ」
喜ぶ信幸の席に座布団とみかんが運ばれてきたところで、急ブレーキが掛かって車両が大きく揺れる。
『この先、塩尻で信号機トラブルが発生しました。安全が確認されるまで、しばらく運転を見合わせます』
「ぎゃふん」
彼らが関ヶ原に着くのは、まだまだ先の話。
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