関ヶ原ナミダ娘

汐留ライス

一 小西行長、UFOに乗るでゴザルの巻

 時は慶長五年(1987)、石田三成いしだみつなりと共に戦う小西行長こにしゆきながの率いる軍勢は、天満山てんまやまへ向かいウマモドキを進める途中で、地球に接近した宇宙船にさらわれた。


「アブダクションだ」


 叫んでもすでに手遅れ。気がつけばソーサーっぽい形をした宇宙船の中。窓から見える地球は青かった。


「地球に戻してくれ。これから天下分け目の戦いなのだ」


 姿を見せたいかにもグレイグレイした生き物に呼びかけるも、秒で拒否られる。


「あなたたちはこの惑星に住む生物の貴重なサンプルです。調査が終わるまでは戻せません」


「調査って何すんの」


「血を抜いたり、内臓をえぐったり」


「嫌ああああ」


 嫌がる行長。そりゃそうだ。


「こうなったら実力行使だ」


 行長は叫んで刀を抜く。しかしそのままウマモドキで襲いかかるよりも先に、宇宙人の身体が発光した。


「宇宙フラッシュ」


「うわあ」


 これには行長も、思わず刀を落とす。


 説明しよう。宇宙フラッシュとは、この宇宙空間に無数に存在する、様々な惑星や準惑星の文明を見てきた宇宙人だけが使える、めっちゃコズミックでストロングなスタイルのハイフライフローである。ちなみに動力は単1電池4本だ。


「抵抗はムダです。私だってちゃっちゃと終わらせて帰りたいんだから、おとなしくえぐられてください」


「やだよそんなの」


 抵抗する行長。会話は平行線のまま進展しない。


「どうしましょう、このままでは間に合いません」


「全員でヤーッとかかればいけるのでは」


 配下の足軽たちが、口々に行長に尋ねる。


「まあ待て、ここで戦力を消耗させるのはよくない。まずは誠意を見せよう」


 そう言うと、ウマモドキから降りて床にヒザを突く。


「分離できるんですか」


 頭を下げる前に、想定外のところで宇宙人が驚く。どうやらウマモドキとセットで1体だと思われてた模様。


「こんな生物は初めて見た。どっちが本体ですか」


 なんかテンションの上がってる宇宙人を見て、行長は一計を思いつく。


「本体は下の方です。上の方は遠隔操作で動かしているだけで、そのうちまた生えてきます」


「すごーいすごーい」


 興奮のあまり、頭から触手を出してパチパチ叩く宇宙人。


「新しいのが生えてくるところ、見たくないですか」


「見たい見たーい」


「では上の方は地球に戻してください。砂浜で泣きながら卵を産みます」


「それも見たーい。貴重な産卵シーン」


 宇宙人が大喜びする横で、こっそり足軽が尋ねる。


「いいんですか、そんなデタラメ言って」


「砂浜に着いたら、ダッシュで逃げればいい。とにかく地球に戻らなきゃ何もできない」


 そうこう言ってる間に、宇宙船からペカーと光が出て、気がつけば行長たちは海岸にいる。


「やった。地球だ」


「でもここどこだ」


 見れば青い海に白い砂浜、目の前にはヤシの木。


「あっ、ここハワイだ」


 これには行長も宇宙船に向かって叫ぶ。


「なんでさっきの場所に戻してくれないんですか」


「だってあそこ山じゃん」


 そりゃそうだ。

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