(6)

花火が見える場所を求めて歩き回る。いい場所が見つかるといいんだけど…。神社の裏手にある空き地から打ち上げられるはずだから、場所を確保するのは難しくないはず。そう、甘く考えていたけれど…。

 「ここもダメか~…。」

 「ダメ?」

 「人が多いからね」

 別にこそこそしたいわけじゃないんだ…静かな場所で二人で見たいだけなんだけど…。やっぱりもう少しだけでも早く行動しておくべきだったな。今考えても遅い、か。

 「寄人!こっち!」

 「どうしたの?!」

 急にひまわりが手を引いて行く。どこに向かうんだろう?手を引かれるまま一緒に歩いていく。

 「ここ!どう?」

 「こんな場所あったっけ?」

 「ここからは音が聞こえなかったよ!」

 開けた場所にある小高い丘の上に二人で登る。すごいな…!確かにここなら綺麗に見えそうだ。二人で座って空を見上げる。直後に、音がして花火が打ちあがった。綺麗だな…。

 「綺麗だね」

 ひまわりから返答がない。隣を見て見ると、ひまわりはこてっと横になっていた。びっくりしすぎて、転がっちゃったのかな?

 「びっくりした?」

 「う、うん」

 「綺麗でしょ?」

 「うん?きれい!」

 「ははっ、繰り返しただけ?」

 「ち、ちがうもん!」

 不思議だな、こうやって同じ空を見上げて話せているのが。嬉しいし、楽しいよ。誰かと共有できるって本当に…すごい事だ。

 「音、うるさくない?」

 「うん?大丈夫!」

 「なら良かった」

 「寄人、楽しい?」

 「楽しいね」

 打ち上げられた花火の光で見える…ひまわりは僕を見て微笑んでいる。なんか…立場が逆転しているような感じがするな…。

 「寄人!いつまで見る?」

 「え?飽きた?」

 「う…ちがうよ?」

 「飽きたんでしょ?」

 「う…うん」

 本当に…飽き性なんだから。そういうところも好きなんだけどね。

 あれ…?今普通に好きって…。そうか、この気持ちが恋なのか。色々難癖付けて恋と認識していなかっただけだったんだろうね。僕はひまわりの事が好きなんだ。

 「終わってないけど…行く?」

 「うん!」

 二人でお祭り会場を後にする。心臓はずっと高鳴っている。落ち着いてくれ…変に意識すると、この後が大変だから…。

家に帰って、寝る準備をする。ひまわりはいつも通り僕の部屋に来て僕をじっと凝視して、僕が準備を終えるのを待っている。そんなに見てなくてもいいんだけどな…。

 「きょ、今日は楽しかった?」

 「うん!」

 「そ…そっか」

 「ん?なんか、変!」

 「な、何が?」

 ひまわりは首を傾げながら近づいてくる。ちょ、ちょっと!ち…近い…!そのまま後ずさりして壁にぶつかる。ひまわりの顔がすぐ傍までくる。

 「ひ、ひまわり?近いよ」

 「う~ん…わかんない!」

 「大丈夫だから!」

 「そう?」

 そのままひまわりは自分の寝床にすっと戻っていく。た、助かった…。電気を消して布団に潜り込む。寝れる気がしないな…。

 翌日、一睡もできないまま朝を迎えた。リビングに行くと、皆そろっていた。父さんが僕の顔を見るなり、「そうだ」と言い、何かを思い出したように鞄の中を探す。

 「遊園地に行ったりするか?」

 「え?急に?」

 「チケット貰ったんだ、二枚」

 そんな都合が良い事あるか?丁度二枚って…まぁ、行ってもいいかな?遊園地か…何するんだ?

 「ひまわり、行く?」

 「いいの?!いく!」

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