Love has a logic all its own.
成瀬七瀬
あなたに出会ってからの僕という人間は、どうしようもなく不埒で、どうしようもなく愚かで、どうしようもなく弱くて、しょうもない人間になった。そんな僕自身を嫌っているのは他でもない僕自身なんだよ。知ってた?
知らなかっただろうなぁ、僕は本当に僕のことが大嫌いだった。あなたが冷たい視線で僕を見るよりも早く、僕は僕に嫌悪感を持っていたよ。本当に本当に本当に、本当に嫌で、大嫌いで気持ち悪くて、あなたのことを考える時間と同じ分だけ、もしかするとそれ以上に、どうすれば元の僕に戻れるのか考えていて、まずは何故こんな風になったんだろうと考えてみた。
しかし考えるまでもなくそれはあなたのせいだった。あなたに出会って一瞬後には僕は馬鹿になっていたのだから、そう結論づけるのが自然だよね。
まあだから、それならあなたが居なくなれば僕は再び正常に戻れるんじゃないかなって閃いたから、今、僕は、あなたと向き合ってあなたに包丁を突き付けているわけだけど、なんていうかあなたのその青ざめて怯えきった表情も凄く良いよね。綺麗。凄く虐めたくなる。あれ、僕は別にサディストとかじゃなかったんだけど。きっとあなたがマゾヒストだから僕は誘惑されちゃってるんだな。やっぱりあなたは悪い人だ。この小悪魔!
あぁじゃあ悪いあなたには罰を与えなくちゃいけないよね、凄く重い罰。僕をたぶらかした上にサディストの性癖まで開花させちゃったんだから凄く悪いよ。極刑。あれ声も出ないの? いつも僕を口汚く罵ってたのに肝心な時には動けないの? その唇を動かして助けてぇって叫べば助かるかもしんないよ! 嘘だけど。じゃあ、そんな役立たずな口は要らないよね。
うーん意外と皮膚って堅いんだなぁ。ちょっと待ってね。ハサミでやってみよう。よいしょ。あはは。何だっけ、口裂け女って妖怪思い出した。ポマードポマードポマードー。逃げないの? ああ、僕が縛ってるから逃げられないのか。うわあ痛そう。痛い? ねえ痛い? 答えろよクソ野郎!
あ、ごめん。ちょっと強く殴りすぎちゃった。あはは泡吹いてる。大丈夫? 大丈夫? 大丈夫だったら息して……ああ、大丈夫だね。良かったあ。
うーん次は何しようかなぁ。ちょっとテレビでも見て考えようね。あはは。面白いなあああああ。お前の目付きうざい。本当うざい。好きで好きでたまらないけどうざい。潰して良い?
駄目とか言わせないけどね。あ、でも片目だけでいいよ。僕ってホラ優しいから。
うわあ痛そう。ねえ痛い? 痛い? あ、痛いんだぁ。可哀想。でもあなたはマゾヒストだから嬉しいよね。嬉し涙流しちゃってるじゃん。すごい赤いけど。
じゃあね次は僕の好奇心を満たそうと思いまぁす。僕ねずっと不思議だったんだよ。人間の腸ってすごく長いって言うじゃない。でも僕の身体のどこにそんな長い腸が収まってるのかずっと不思議だったんだ。うん。もうわかるよね。
おおお。すげぇすげぇ。どんどん出てくる。友達呼んで綱引きしたいなぁコレで。あ、駄目だ。僕の友達はあなたしかいなかった。ねえ、どんな感じ?
今の心境をマイクに向かって一言!
ガクガク痙攣してねぇで言えよ。
つまんねぇな。お前マジ使えない。いいからジュース買ってきて。暇だから殴らせろ。死ねよ。ねえ、今僕が言ったこと、これみんなあなたが僕に言った言葉だよ。
聞いてる?
覚えてる?
僕は覚えてるよ。その時その時の風の匂いも覚えてるよ。あなたが大好きだったから、あなたを撫でた風の匂いも覚えちゃったんだ。大好き。大好き。僕がおかしくなったのはあなたのせいだって、わかっ……。
あーあ。なんか臭いなあ。でもあなたの臭いなら、僕、何でも好きだよ。ずっとずっと嗅いでたっていいぐらい。こんなにあなたを愛してる人間は僕一人しかいないのに何であなたは僕を受け入れてくれなかったのかなあ。こんなに愛せる人間はあなた一人しかいないのに、何で僕はあなたの腸を引きずり出してるのかなあ。
あ、もう朝になっちゃったよ。外明るいよ。ああ、こんなすがすがしい朝は本当に久しぶりだ。すがすがしいと思える心が戻ってきたってことは僕は正常になったってことだよね。あなたもそう思うでしょ? じゃあお風呂入って学校行こうかな。僕が帰ってくるまでに部屋片付けといてね。自分のハラワタなんだからさ。
「いってきまーす」
Love has a logic all its own.
(恋は思案の外)
Love has a logic all its own. 成瀬七瀬 @narusenanase
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