ギャフンと作戦②

 ──2日後。


「これくらいだね」と言い爆発現場に近づいていくリヨク。


「結構やばいな」ルエロ。

「当たったら死ぬんじゃない?」クロスケ。

「……」黙って目を見開くタカシ。


 リヨク以外の3人は、爆発の威力に肝を冷やしているようだった。


「うん、当たったら死ぬと思う」


 リヨクは平然と答えた後、計画した図をルエロたちに見せた。


「大丈夫。例えばここに[ウオラトトマ]を置いて、ここにシユラをおびき寄せるんだ」リヨクは、自作の大庭の図を指差しながら言った。


「ほんとに大丈夫?」と心配そうに言うクロスケ。


「うん、ぜったい大丈夫」リヨクは自信たっぷりに言った。


「……じゃ、おれ、そのおびき寄せる役やるよ」とルエロ。


「わかった。間違って踏んだりしないでね」リヨク。


「大丈夫」ルエロは、グッドポーズをした。


 ──「ついに明日だね」リヨクは3人の目を見て言った。


「なんか緊張するなぁ」とため息をつくルエロ。


「……大丈夫!」とタカシ。


「成功したらぼくらのムカつきは吹っ飛ぶよ! シユラと一緒に」とニヤッと笑うクロスケ。


 ルエロは3人の目を見つめながら話し始めた。


「明日は、シユラが終わる時。みんな、絶対に成功させるぞー!」


「おー!!」

 4人は、拳を合わせ気合いをいれた。




 ──次の日。


 今日は長い間待ち望んだ、


 リヨクとルエロは、誰にも見られていないかを確認し、入念に場所を決め、そこに[時間引力ティヒジオン]を作った。


 ──芝生を成長させ、[時間引力ティヒジオン]を隠した。


「よし、準びおっけいだな」と言い、ルエロは血が入った石の小瓶をリヨクに渡した。


 リヨクは、「ぜったい成功させようね」と言い、その小瓶を受け取った。


「周りに人もいなくて、シユラを連れて行けそうなタイミングが来たらこうするよ」


 ルエロは、手の甲をおでこに付けてピースした。


「わかった」とリヨクは頷いた。




 ──石学ネランス終わり、大庭。


 ついに実行する時が来た。


 ルエロは、いつものようにシユラたちのところへ行った。


 リヨクは影に身を潜め、ルエロからの合図を待っていた。


 ──作戦はこうだ。


 リヨクが観察し導き出した、広い大庭で唯一人が通らない場所。


 そして、4人が実験を繰り返し導き出した、シユラに、音と爆風だけを浴びせられる場所。


 さらに、その近くにシユラがいる場所に、[時間引力ティヒジオン]を作っており、

 リヨクは、タイミングを見てそこに移動し、血を垂らし、[時間引力ティヒジオン]のタイマーをオンにする。『10分』


 そして、オンにすると同時に、[爆発石ウオラトトマ]をその中心に置き、10分に近い時間になったら、ルエロが自然とシユラをベストな位置に誘導する。


 といった流れだ。


 リヨクがいま背負っているリュックの中には、

 分厚い植物の皮でできた箱が入っており、その中には、ソフトボールほどの大きさの[爆発石ウオラトトマ]が入っている。


 ベッドの綿を引きちぎって敷き詰めているため、

 多少の衝撃なら爆発しないだろうという考えだ。


 ──ルエロは、手の甲をおでこにつけピースした。


 リヨクは、「よし…」と小さく言い、リュックの中から箱を取り出し、[爆発石ウオラトトマ]を綿ごと取り出した。


 そして、服の中に隠し、ゆっくり立ち上がった。


 爆弾を抱えて歩く恐怖がリヨクを襲う。


 リヨクは、心臓が破裂しそうなほどドキドキしながら目的地に向かう。


(ふぅ…落ちつくんだ…)


 リヨクは、ルエロが出したタイミングを信じて、周りを見ず、前だけ見て、進んだ。


 そして、[爆発石ウオラトトマ]を[時間引力ティヒジオン]の中心にそーっと置くと、ポケットからルエロの血が入った石の小瓶を取り出し、タイマーをオンにした。


 リヨクは、行きと帰りで自分がゾウから蚊になったような感覚になっていた。


 10分に近い時間になり、ルエロがついに動き出した。


 ──シユラをベストな場所に誘導していく。


 しかし、ルエロはベストな場所を超え、シユラを[爆発石ウオラトトマ]がある方向に近づけていく。


(え、やばいよ、それじゃシユラ爆発にあたるよ…。

 え、なんで……そっちは……ちょ、ルエロ! まさか!)


「ヴォオカァアアアアン」


 空気が揺れるほどの爆発だった。


 リヨクはしばらくして伏せていた顔を上げた。


 すると、大庭を歩く生徒たちが集まってくる。


 ──先生たちもすぐに駆けつけ、シユラを拾い集め出した。


 ──先生たちが集まり周辺を見回っている。


 吹き飛ばされたルエロは、シユラが壁となり、一命を取り留めた。



 ──ポピュア村、その日の夜──


 ベンチ植物に座りながら、リヨクは、今も止まない心臓のドキドキに苦しんでいた。


 ──ルエロがやってきた。


「ルエロ! なんで!?」

 リヨクは、声を大にして叫んだ。


「ざまぁみろだぜ。あー、スッキリした。おれをバカにした罰だ!」ルエロはニヤリと笑いながら言った。


「え、わざとだったの?!」

 リヨクは、眉間にシワを寄せて言った。


「うん。リヨクもスッキリしただろ? ユウマもオウエンもあいつシユラのせいで消えたんだぜ?」


「……」リヨクはただ黙って、ルエロを見ていた。


「絶対バレないって。おれも被害者だし、ほら、右腕真っ赤だぜ」


 ルエロは、火傷痕を見せつけながら、にやりと笑った。


 リヨクは無言で立ち尽くし、その場から動けなかった。


 そして、重い沈黙の後、リヨクは何も言わずにその場を去り、家へと帰っていった。

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