第17話 全校集会

 ──石学ネランス終わり、大庭──


「グオ、灰色花の色だけど、今って何時?」

 リヨクは、空に浮かぶ時計植物《ラフィア》を見ていった。


「灰色は15時だよ」


「時間表、先生いつくれるんだろーね」


「次の授業が終わったらぼくが言ってあげるよ、たぶんメヒワ先生言うの忘れてるから」


 ──獣学ミュースの授業が終わると、3人とグオは、メヒワ先生に声を掛けに行った。


「先生! ポピュアの子たちにカラー表渡さないんですか?」グオが聞いてくれた。


「? ポピュアには必要ないと思いますが……必要ですか?」

 メヒワ先生は、グオの後ろにいるぼくらに向かって言った。


「いる?」オウエン。

「いる」リヨク。

「必要」ユウマ。


 ──「わかりました、ちょっと待っていてください」


 先生は、教卓の裏から紙を取り出し、ぼくらに渡した。


 リヨクは受け取った紙を見た。


 〝

 《ラフィア》の時間と色彩。


 1時、幻想的な

 2時、無の

 3時、光の

 4時、神秘の

 5時、繁栄の

 6時、冥想の

 7時、砂漠の

 8時、空海そらうみ

 9時、愛の

 10時、火の

 11時、精錬された

 12時、影の

 13時、牛の

 14時、剣の

 15時、死の

 16時、人間の

 17時、苦の

 18時、警告の

 19時、土の

 20時、太陽の

 21時、芽の

 22時、晴れの


 ──「あれ、22時までしか書いてないけど?」

 紙をみたユウマが言った。


「この世界は22時間なのよ」


「は? 時間も変なのかよ」

 ユウマは呆れたように言った。


「地球とは別の時間を生きてますので、なにも変なことありません」


「先生、じゃあこの、幻想的なってなに?」

 リヨクは、紙を指差しながら不思議そうに聞いた。


「それは、別に無視していただいてかまいません。

 色を想像しやすいように書かれてあるだけですので」


「ふーん」リヨクは納得した。




 ──木の学舎ポムヒュースに入学してから1ヶ月が経った時の朝。


 ぼくら3人は、いつものように談笑しながら木の学舎ポムヒュースの門をくぐり、芝を成長させ、3階へと上がった。


 ──「うわっ、なんかいっぱいいるぜ」とユウマ。


 目線の先には、おそらくポムヒュースに通う全学年の生徒が集まっていた。


 リヨクたちがその集団に近づいていくと、「こっち」と手を上げているグオを見つけた。


 ぼくらはグオのもとへ行き、芝生に腰を下ろした。


「こんなにいっぱい集まって、いまからなにが始まるの?」

 リヨクは首を伸ばし、周囲を見渡しながらグオに聞いた。


「今から校長先生が、『ポァ』について話すんだ」

 グオはリヨクに近づき、答えた。


「ポァって何?」


 オウエンがグオに問いかけたその瞬間、静寂が一瞬で広がり、全生徒の視線が一点に集中した。


 塔の中から、椅子のような植物に乗るウサ耳のおじいさん校長『アーガバウト』と、その両隣に清掃係の、半分ロン毛、半分坊主の男『モア』と、ツンツン髪の男『イオ』が出てきた。


「うさ耳校長、なんか久しぶりに見たな」とユウマ。

「入学のとき以来だよね」とリヨク。


 校長は、ぼくらの近くまで来ると、話し始めた。


 ──「えー皆、集まってくれて感謝する。──今日からポムヒュースでバトル大会『ポァ』のエントリーが始まる。


 ポピュアの子たちの為に、簡単に説明すると『ポァ』とは、この世界に古くから伝わる、一対一で戦うトーナメントのことで、各学年の最も強い者を決める場じゃ。


 ルールはシンプル、指定された植物や石を扱い、相手を戦意喪失、または動けなくすることで勝利が決まる。


 怪我の際には迅速に対応する体制が整っており、公平な競技を保つためにルール違反には厳しく対処する。

 とまぁ、こんなとこかの」


 ──話終わると校長は、壁のような巨大な黒板代わりの葉っぱを生やした。

 そして、葉脈を動かし、文字を浮かび上がらせると、また話出した。


「開催日のお知らせじゃ。


 1、2、4、5年生は、ポムヒュース4階で、各々別の花の場に分かれ、6月と8月に予選。そして10月に本戦を行う。


 3年生は、7月と9月にポムヒュース2階で試合が行われ、11月に『ゼルガ』のバトル会場にて、木の学舎ポムヒュースと、緑の学舎オーランの共同試合を行う。


 6年生は、12月に『ゼルガ』のバトル会場にて緑の国エドーラ全域で、最強の座を競う大会が開催される。


 きちんとメモしておくように。


 ──『ポァ』には、多くの大学校の先生方が、スカウトするために訪れる。


 優れた才能を持つ学生は、ここでその才能を示すチャンスを得る。頑張っての。


 ──『ポァ』出場を希望する者は、今日から一週間以内に、この、エントリーボックスに名を記した葉を入れるように。


『ポァ』出場を希望するポピュアは、実力を拝見したいので、放課後ここ今いる場所にきてくれるかの。


 ──それでは、解散!」




 ──4階、花の舌エナタポ前のベンチ──


 リヨクたちはベンチに座り、ヤパルミュレルを片手に『ポァ』について話していた。


「みんなはエントリーするの?」グオ。


「おれは絶対エントリーする!」オウエンは拳を突き出し言った。


「わからない」ユウマは首を傾げた。


「ぼくもわからない。見たことないし…」とリヨクも首を傾げた。


「地球にも似たような大会があるって聞いたけど、『コロッセオ』、みたいな?」グオ。


「コロッセオ? 何か聞いたことあるな…」

 と考えるオウエンに、ユウマがぽつりと言った。


 ──「殺し合いをする場所だよ」


 それを聞いたリヨクは驚き、「えっ! ならやめとこうかな…」と言った。


「コロッセオみたいだけど、もちろん本当に殺し合ったりはしないよ? ケガはするけど、『ヘチ先生』がすぐ治してくれるし、全然大丈夫。一瞬でキズが治るんだ」

 グオが安心させるように言った。


「ほんとうに殺し合わないんなら、一回やってみてもいいかもな」

 ユウマは、リヨクの目をチラッと見て言った。


「うーん、でもケガをするって…」リヨクは迷っていた。


「戦うんなら、ケガは仕方ないと思うぜ? おれたちでシユラたちを倒そーぜ」とユウマはリヨクを説得した。


「リヨクもエントリーしよーよ」と寂しそうな顔で言うオウエン。


「そっか…。んー、なら、ぼくもエントリー…するよ!」

 リヨクは少し躊躇しつつも、決意のこもった声で言った。


 ──放課後、エントリーすることを決めたリヨクたちは、校長に指定された場所へと向かった。


 ポピュアの生徒たちは、ほとんど全員集まっていた。


 リヨクたちが芝生に座ると、校長は話出した。


 ──「放課後に申し訳ないの。旧楽園の子たちの実力は知っているんじゃが、君たちの力はまだ見たことがない。だから、今から実力を見せてもらえるかな?」

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