第16話 逆力
──次の日。
授業が終わった3人はグオについていき、『
──料亭、
和の雰囲気を感じさせる瓦屋根と鮮やかな赤い壁。
壁に立てかけられた、風化した習字の看板からは、この店の長い歴史が感じられた。
「
「ここっておれたちが入っていいところなのか?」ユウマ。
「
「早く入ろー」オウエン。
──
店に入ると、芽のような髪型の店員が席を案内してくれた。
「あの人って、ハツのお父さん?」リヨクは、店員を控えめに指差しグオに聞いた。
「ちがうよ。けどこの店は、『アルマパレ』家系の人が経営してるから、ハツの親戚だと思うけど」
──「この店赤くてかっこいいな」オウエンは店内を見まわしながら言った。
「《カイナ》っていう『アルマパレ領』にしか生えてない真っ赤な植物の分厚い皮を使ってるんだ」
「へぇ〜、こんな真っ赤っかな植物があるんだ」
「なんか、ファイアソードみたいな色だね」リヨクは、ユウマが反応するか試した。
「え!」ユウマは、目を輝かせた。
(よし釣れた)
リヨクとユウマは、『テルトンの煮込み』を食べながら仮面戦士の話をし始めた。
「やっぱユウマの家ってファイアソードだよね」
「そう!」
「ずっと言おうと思ってたんだけど、忘れてた」
「リヨクも好きなの? ファイヤソード」
「んー、ドラマみた事ないんだ」
「えー! リヨクん家テレビあるのに? 仮面戦士好きじゃないの?」
「仮面戦士は好きだけど。だって、ファイヤソードって昔にやってたやつじゃん」
「え? 昔じゃないだろ、街にポスターいっぱい貼られてるぜ?」
「うそ、ユウマどこに住んでたの?」
「東京」
「えー、だったら絶対『チキン』が貼られてるはずだよ?」
「チキン? そんな仮面戦士聞いたことない」
「え! 一番新しい仮面戦士だよ?」
「うそ、どんなやつ?」
──リヨクは姿勢を正して、熱く話し出した。
「すっごく弱虫なんだ。だいたい一回負けるしね。
けど、何回も立ち上がって、結局は勝つんだ」
──「リヨク、あぶないよ」オウエンは、『テルトンの煮込み』が入っていたお皿をリヨクから離した。
「へぇー。弱いのに好きなの?」ユウマ。
「いや、弱くないよ? 最初は弱かったけど、今は敵のボスに勝てるぐらい強いんだ」
「ふーん、能力は?」
「敵を倒すたびにどんどん増えていくんだ。
最初は確か……トラップを使う怪人! そいつを倒して、爆弾を設置して敵を倒すんだ。それから……」
「ちょっと待って、ヒーローが爆弾を設置するの?」
「うん、でもそのおかげで、弱虫だけど、その次に戦う敵に勝てたんだよ。
次の敵は、鎧をつけた怪人で、そいつを倒して鎧を手に入れるんだ。
今では、剣を出したり、空を飛んだり、瞬間移動したり、凍らしたり、燃やしたり、色々するよ?」
──
「『テルトンの煮込み』、おいしかったけど、なんか食べたことある味なんだよなぁ」ユウマが言った。
「ぼくわかるよ、牛すじの煮込みでしょ?」リヨクは、正解でしょ? と顔で言った。
「あ! 多分それだ」ユウマは、リヨクを指さし言った。
──
「教科書8ページを開いてください」
リヨクは、8ページを開いた。
そこには、『
「『
プロンは、寝ている間に自然と体内に蓄えられていきます。
『
できないと思いますが、一応流れだけは説明しておきますね。例えば、手を上げようとしてください」
子どもたちは、先生を真似て、きおつけをした。
「きおつけのまま、手を上げたことを想像するのです」
リヨクは、手を上げたことを想像してみた。
すると、首が、上げていることを想像している手の方向に勝手に動いていく。
──「「むりっ」」
離脱したリヨクとユウマは、子どもたちを観察し始めた。
「上げずに我慢し、上げたと思い込んでください」
直立している子どもたちは、ぷるぷると震えだし、
直立をやめた子は、片腕を揺らしている。
「みんながんばってるね」リヨク。
「なんか魚が立ってる見たいだな」ユウマ。
──「上げようとする自分と、上げたと思い込んでいる自分との間に反発が生じ、その反発により、プロンが生み出されます。──」
きおつけを続けているポピュアの子は、セイブただ1人になった。旧楽園の子も、あと10人くらい。
「ここからが大事です。
つまり、今の状況ですと、手を上げてはいけないという事。
溜めたプロンがすべて、上げると言う動作に流れてしまい、外に逃げてしまいます。
ですので、想像している別の動きをしましょう。
すると溜めたプロンは外に逃げる事なく、体内に残ります。
その後なら、手を上げて頂いてもかまいません」
直立をやめていく子どもたち。
セイブは、きおつけを続けたままだった。
「セイブくん?」とメヒワ先生は、心配そうに言った。
すると突然。セイブは、人間離れしたスピードで、手を上げ、後ろに倒れた。
セイブは腕をおさえながら立ち上がった。
「あらら、腕痛めたわね。骨は折れてない?」
「はい……痛っ」
メヒワ先生は、植物を成長させ、セイブの腕に何かしたあと、子どもたち全員に向かって話始めた。
「先程のセイブくんを見たら分かる通り、
バネを押さえている手を、上に離したようなもので、バネは手に当たりますよね?
溜めれば溜めるほど、そのバネが大きくなり危険になると思っていてください」
──「何も起こらなかった」疲れたように言う旧楽園の少年。
「はい、ほとんどの子はできていないとおもいます。
おそらくできていた子は5人ほどでしょう。
セイブくんは、最後にプロンを蓄えることに失敗しましたが、
そのため、大人でも習得できない者がいるぐらいです。
ですので今は、オベリスクがあれば十分だと思います。
ちなみに、
──それでは次のページに移りましょう」
メヒワ先生は、花や葉のない長い茎と、
手のひらサイズの細長い葉っぱを子どもたちに配った。
──「それでは、今みなさんにお配りした茎をピンとさせ棒に。葉をピンとさせ刃にしましょう。
茎には、硬い芯を通すイメージで、プロンを流してみてください。
葉には、手のひらを力いっぱい広げるようなイメージをプロンを通し伝えてみてください。
すでにプロンを扱えるあなたたちなら、すぐに習得できると思います」
──4階、大庭──
リヨクは芝を成長させ、ピンとさせた。
──「これ面白いね」
「こんなこともできるぜ、おりゃ」
ユウマは、ギザギザした葉をピンとさせ、手裏剣のように投げた。
すると、リヨクがピンと成長させた芝はスパッと切れた。
「よし!」とガッツポーズをとるユウマ。
一方、オウエンはグオの髪の中に埋まっている赤い宝石に夢中になっていた。
「割らないでよー」
グオは、赤い宝石を触るオウエンの腕を心配そうに見ていた。
「オウエン、グオ嫌がってるって」
ユウマは、葉っぱを投げる手を止めて言った。
「これ、ルビーだって」オウエンは、目を輝かせながらユウマに言った。
「それ、
「うん。『ザード』家系の人は、だいたい埋めてるよ。
ぼくらは、『カーバンクル』っていう体質で、宝石を体に宿すことができるんだ」
「宿す?」ユウマは、首を傾げた。
「うん、宝石を体の一部にして、宝石の力をもらうんだ」グオ。
「へぇ、ちからって?」
「宝石によって効果は変わるんだけど、例えばこの、ルビーは、情熱を上げてくれる。だからぼくからやる気が消えることはないんだ」グオは、マッチョポーズをとりニヤッと笑った。
「へ〜」ユウマは、不思議そうにルビーを眺めた。
「けど、ぼくの頭に埋まってるルビーは、大きめだから、情熱的になりすぎちゃう事があって、気持ちの調整が難しいんだ」
「埋めた時、痛くなかったの?」
リヨクが言った。
「うん、生まれてすぐの柔らかいときに宿すから、痛みはないんだ」
「生まれてすぐはやわらかいの?」
「うん、やわらかい」
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