第13話 獣学 生態と接し方①

 ──獣学ミュース 。


「この星に生息する生物は、地球のものと比べるとかなり大きいです。

 ここは、地球よりもはるかに多くの酸素が大気中に含まれており、この高い酸素濃度が、生物を大きく成長させる主な理由の一つです。


 この星には、大きいだけでなく、危険な生物もたくさん生息しています。

 森などへ出かける際は、これらの生物に対処できなくてはいけません。


 あなたたちが住むポピュア村や、となりにある緑の街は比較的安全ですが、それでも地球と比べ、人と自然が密接に結びついて生きている世界。

 どこにいても生物との関わりを常に意識し、適切に対応できるよう準備しておく必要があります。


 この授業では、ビョーウ星に生息するさまざまな生物の特徴と、危険な生物から身を守る方法を学んでいきます。それでは、教科書の44ページを開いてください」


 ──44ページを開いたリヨクは、オウエンに話しかけた。


「オウエン! これみて」

 リヨクは小声で言い、木に巻きつくドラゴンが描かれたページを見せた。


「あ! これ前見たやつ!」

 オウエンは大きな声を出した。


「しーっ、声大きいよっ!」リヨクは小声で注意した。


「リヨク」

 ユウマがとなりの席から先生を指差し、注意してくれた。


 ユウマが指差す先をみると、メヒワ先生は、ぼくらを見ていた。


「オウエン、前」

 リヨクもオウエンに知らせる。


 リヨクとオウエンが前を向くと、メヒワ先生は話し始めた。


獣の国レウールの人々は、獣と絆を結ぶことで、獣から力を借り、生活に活かしています。


 獣の力を借りれば、この絵のように、ポムヒュースのような巨大な木を切り落とすこともできます。


 44ページに描かれている竜、{ファフニール}は、硬いたてがみと強力な毒を持っており、竜使いヨアブフは、{ファフニール}の力を借り、ポムヒュースを切り落としました。──


 ──この世界で、木と言うとこの木の学舎ポムヒュースを指します。

 この世界には、ほとんどがないからです。


 みなさんは、ここに来る時、森を目にしたと思います。

 ですが、その森に生えていたものは、木ではなくと言う、木に似た植物です。


 この世界の木は、“イブ病”という感染病に侵され、過去に全て焼き払われました。


 しかし、木を無から生み出すことのできる者が現れました。


 その者の名は『ペラム』と言い、元緑の国エドーラの王です。


 この者は、山のように大きな木、ポムヒュースを生やし、緑の国エドーラに新たな配水システムを作り、栄えさせました。


 ですが、過去に流行った〝イブ病〟におびえる者が多数現れたことにより、結局このポムヒュースは切られることになりました。


 あまりにも巨大な木のため、当時、太陽の軍アルラテュリム1の竜使いと言われていた、現在の獣の国レウールの王『ヨアブフ』にお願いしました。


 ヨアブフは、硬いたてがみをもつ竜{ファフニール}を扱い、ポムヒュースに巻きつかせ、切り落としました。

 しかし、{ファフニール}の強力な毒は、ポムヒュースには効果がなく、いつまで経っても枯れることはありませんでした。


 その後もポムヒュースは聳え続け、イブ病がふたたび緑の国エドーラに蔓延するのではないかと、恐怖する者たちが増えていきました。


 そして、石の国ジオニートの炎帝、『アルハライハ』が呼ばれました。


 アルハライハは、火植物を扱い、ポムヒュースを焼き尽くそうとしましたが、それもまた、山のような木には何の効果もありませんでした。


 長きにわたる激しい攻防の末、ついにこの世界の管理人である、インザード様が決断を下しました。


 インザード様は、この木を生命力の強さの象徴として、そのままにしておくべきだと。

 そして、ポムヒュースを学舎として利用しようと考えました。


 当初は多くの人々が反対しましたが、イブ病の影響がないことがわかると、次第に学舎設立の考えに賛同する者が増え、そうしてポムヒュースは、今日に至るまで学舎として存在し続けています。


 ──獣と絆を結ぶと、山のような木も切り落とすことができる。ということを伝えるだけのつもりでしたが……まぁ、ポムヒュースの歴史を知っていて損はないでしょう。


 では、次のページを開いてください」


 ──メヒワ先生は、黒板代わりの大きな葉っぱの葉脈を動かし、絵をを浮かび上がらせた。


 まず、崖と書かれた四角形が浮かび上がり、その上に球体、切り株、家々が描かれた。


 球体には、ポピュア村。


 切り株にはポムヒュース。


 家々には、緑の街ピプロヌ。と名前を記されていく。


 そして、崖と書かれた四角形の下に、いくつもの木が描かれ、迷いの森ゲムレッチと記された。


 ──「この絵は、ポピュア村、ポムヒュース、緑の街ピプロヌがある崖を表しています。


 この崖下には迷いの森ゲムレッチと呼ばれる森が広がっており、夜になると、《イズテ》という茎木が移動し始め、道を変えてしまいます。


 もし迷い込んでしまうと、気づかずに危険な獣{サーテム}の縄張りに侵入してしまう恐れがあります。


 崖を降りれば、そこはすぐに森となりますから、好奇心旺盛な皆さんが足を踏み入れる日もそう遠くないでしょう。


 対処法を知らずに森へ行くのは非常に危険です。


 ですので今週は、道に迷った時や{サーテム}に遭遇した際の対処法を学んでいきましょう」

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