第9話 植物学 生態と接し方

 ──次の日。


 〝「あんたが一番センスあるわね」メヒワ先生とポピュアの子たちの拍手〟


 ──リヨクは、余韻に浸りながら登校していた。


 みんなの前で先生に褒められた光景を、その日から繰り返し思い出しては、1人でニヤついていた。


「なに一人でわらってるんだ?」とオウエン。

「別に笑ってないよ」リヨク。

「1週間前からずっとだぜ? どうせ褒められたことでも思い出してるんだろ」ユウマは、肩をすくめて言った。


「そうゆうことか! あん時のリヨク大魔法使いみたいだったもんな」とオウエンは笑いながら言った後「ま、今はみんなできるけど」と付け加えた。


「みんなができるようになって、嬉しいよ。

 この一週間、教えるのちょっと大変だったけどね。

 ぼくとセイブは昨日、《プロン》の調整できるようになったんだ。だからみんなは次、それがんばろ」

 オウエンが付け加えた言葉に反応したリヨクは、さりげなく自分の方がまだリードしているということを、遠回しに伝えた。


「リヨクって、先生になったんだっけ?」

 ユウマが笑いながら言った。


「ん? みんなが聞いてくるからそんな感じになってるだけだよ」


「ふーん。てか、なんか今日のリヨク、顔むかつくな」

 ユウマはまた笑いながら言った。


「え?」

「じょーだん、じょーだん」ユウマは目を細めて言った。

「じょーだんでもよくないよ、ぼくもセイブもみんなのためにがんばってるんだから」

「へぇ〜、もーみんなと変わらないとおもうけどな」

「変わるよ。だって先生言ってたもん」

「なんて言ったの?」

「すごいって」

「すごい? なにがすごいの?」

 ユウマは、からかうような笑みを浮かべリヨクを追い込んでいく。


 返す言葉が思い浮かばないが、少しムキになっているリヨクは、戸惑いながらも答えた。


「ぼくとセイブは、もう……とにかく、みんなとは違うんだ。みんなも頑張ってると思うけど」


「……フッ、だから大して変わらないって」

 ユウマは、やれやれと言った感じで答えた。


「もういい!」

 とうとうリヨクは、オウエンとユウマを残して早足で学舎に向かった。


「あーあ。ユウマリヨク怒らせた」とオウエンの声が小さく聞こえた。




 ──木の中の学舎ポムヒュース3階、塔の中の教室──


「《リベク》」


 リヨクは、葉っぱのテーブルを生やし、慣れた手つきで芝を綱のように絡め、椅子を作った。


「ハァ」


 オウエン、ユウマより先に席につき、先生を待つリヨク。


 ぞろぞろと、ポピュアの子どもたちとこの世界の子どもたちが教室に入ってきた。


 ポピュアの子とこの世界の子は右と左に分かれて座っていく。


(あの頭の長い子、ぼくが右に座ってたから、左側に座ったのかな)とリヨクは、自分が避けられたことと、周りに集まってくるポピュアの子たちを見て、を感じると共に、ポピュアに対して仲間意識がすこし増した。


 オウエンとユウマの声が近づいてくる。


 ──「リーヨク」と言いとなりにオウエンがやってきた。


「となり、いい? ──それと、今日もお願い」


「うん──《リベク》」


 ──リヨクはオウエンの机と椅子を作った。


 ──メヒワ先生がやってきた。


「それでは、〝10時〜12時の授業、植物学フィトヒュス 生態と接し方について〟をはじめましょうか。


 ──今日は、いつもより静かね。緊張してるのかしら」


 今日は、地球人ポピュアとこの世界の子どもたちが初めて一緒に授業を受ける日。

 どちらも様子をうかがっており、少し緊張感のある空気が漂っていた。


「初の合同授業ですから、緊張もするわね。──心配しなくても勝手に仲良くなるわ。

 それでは、教科書10ページを開いて、植物の生態と接し方について学んでいきましょう」


 ──10ページには、円の中に、人と、人の形をした植物が描かれている。その二人は手を繋ぎ、もう片方の手で、円を支えるように持っている。──そして、下に文章が続いていた。


「この絵は、人と植物が支え合い生きていることを表した絵です。


 ──『人と植物の関係』

 人は、亡くなった獣や植物を食べて栄養とし、空気中に《プロン》に溶けた老廃物を排出します」


 メヒワ先生は、右側に座っているポピュアに向かって話し出した。


「この世界は地球と違い、便や尿をすることはなく、生きている生物を食べることはないの」


(だからトイレに行きたくならないんだ……でも変だよ、そんなの)


 リヨクは、振り返り、後ろに座っているユウマに話したくなったが、ケンカ中だったことを思い出し、言うのをやめた。


「なんだよ」

 ユウマは、言いかけてやめるリヨクに、少しキレ気味に言った。


「……」

 リヨクは無視した。


「──植物に埋め尽くされたこの地では、空気中に排出した老廃物を、植物が瞬時に吸収してくれます。

 ですので、空気がよごれる心配はありません。


 ──植物に指示を出す時に使用する言霊ルヒアは、肥料をあげ、ここまで成長して。これだけ火を出して。と、言葉と映像を見せて、植物にお願いしているようなもの。


 言霊ルヒアの中には、

 ・養分(光、肥料)・映像・言葉、の3つが含まれており、それを受け取り、植物は働いてくれるという事なの。


 ですから、肥料となるエネルギーがない状態だと、十分な報酬を与えることができず、植物は働いてくれません。


 肥料をあげても、応じてくれないモノもいますけどね。

 植物も種によって性格がありますので。


 人と同じで、相性も存在し、親しみやすいモノもいれば、なかなか心を開いてくれないモノもいると言うわけでです。

 次のページを開いてください」


 次のページを開くと10種類のみたことない植物が描かれており、それぞれに名前と特性、生息地が書かれていた。


 ──メヒワ先生は話を続ける。


「『属性植物に指示をする場合』

 火を生み出す植物ですと、どれくらいの火力で。どの方向に。どれだけの間放出するか。など、正確に指示する必要があります。


 属性植物は、ただ成長させるだけの植物とは違い、相性が特に重要になります。


 例えばこの、赤い目玉のような実をつけた植物チイは、瞳から火を発します。この《チイ》とコミュニケーションをとるには、火に対する理解が求められます。


 そして言霊は、その植物の特性をさらに上げる補助としても使用でき、生物が生み出す火、水、風などの元素やその他の現象も操ることもできます」


 メヒワ先生は「《レンレ》」と唱えると、黒板代わりの巨大な葉っぱの葉脈を動かし、文字を浮かび上がらせると再び話し出した。


「今まで教えてきたことをまとめると、こうです。


 〝 1. 植物を成長させるには、その植物の成長最大値「成長限界」を知る事。


 2. 属性植物を扱うには、その特性をよく理解すること。


 3. 1、2ををふまえた上で、養分。映像。言葉。が含まれている言霊ルヒアを使い指示する。

 すると、成長したり、火、水、風を出してくれるというわけです。植物との相性にもよりますが。


 4.言霊ルヒアは、生物が生み出す火、水、風などの元素やその他の現象も操ることができる。〟


 それに付け加え、もう一つだけ。

 植物から生み出された火、水、風にも一つ一つそれぞれに異なった性質があり、火でいうと、大きくしたり強くしたりできる限界がそれぞれ違うのですが──


『キーンコーンカーンコーン』


 あら、もうそんな時間ですか。──手短に言うと、火力を10まで強くできる火と、5までしか強くできない火があり、限界が違うということです。


 チャイムが鳴ったので、植物学フィトヒュス生態と接し方についての授業を終わります。

 次の授業は14時〜15時。植物学フィトヒュス 植物術実践です。

 しっかりと食べて、体力をつけておく事です。


 4階にレストランがございますので、そこで食事を取るといいでしょう。人気なのはヤパルミュレル。花の舌エナタポで購入できるわ。

 ──あなたたち。ポピュアの子たちが行き方に困っていたら、教えてあげるのですよ」


『はーい!』


「──授業開始10分前になるとバッジから音が鳴り、知らせてくれます。参加する方は遅れないように」


「めし食いにいこーぜ!」


 オウエンは、となりにいるリヨクと、後ろに座るユウマに言った。


『うん』

 リヨクとユウマはお互いをチラッと見たあと、静かに答えた。


「4階にレストランがあるなんて知らなかったよな」

「そうだね、どうやっていくのかな」


 ──「おーい」

 後ろから声が聞こえ、振り返ると、水色髪の少年、グオがいた。


「おー! お前か!」

「お前って…いいかげん覚えてよオウエン。グオだよ」

「あー、そうそうグオ。どうしたんだ?」

「4階の行き方わかる?」

「またこれ伸ばせばいいんだろ?」

 オウエンは、芝生を指差して言った。


「その方法もあるけど、時間かかるでしょ? だから、すぐに行ける方法を教えてあげる」

「なんだ?」


 ──グオは、笛をとりだし説明しだした。


「これは上級生が使ってる方法なんだけど、

「ピー」「ピーピー」まず芝を成長させる──

 ここからは感覚なんだけど、「ピーピーピー」

 伸ばした芝を垂らして4階(花の上)に乗せる。


 ──《リユレ》


 《リユレ》と唱えることで、伸ばした芝は今、花の上に、植えられて、ロープをかけるみたいに、しっかりと固定されてる状態なんだ。それじゃ、みんなつかまって!」


 グオ、オウエン、リヨク、ユウマは、伸ばした芝につかまった。


「一気にに上に上がるよ!」

「レッツゴー!」オウエン。

「は? 一気に?」ユウマ。

「え、ちょっと待って、はやい?」リヨク。

「大丈夫! すぐだから」グオ。


「ピ」


 グオが笛を吹くと、芝に持ち上げられ、4人はぐーんと、一気に上昇した。

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