第19話 飛躍する組織
あの日から1ヶ月が経過した。
瀕死の重症を負ったはずのルシーラも、女神の血のお陰で大した傷は残らなかったそうだ。
メルボーンを粛清したことについては、帝国側から何のアクションも無く、暫くは奴らも大人しいので大丈夫だろう。
「はぁ……今日もシスター業務…本当に疲れた…」
平和な日々が戻ってきたが、それはキョウカにとってある意味地獄の始まりだった。
彼女の美しい見た目と活躍を気になった人々が連日教会に押し寄せているのだ。
「お疲れ様です〜キョウカさん、早速夜も仕事が入りましたよ〜!」
レガリアスがニッコニコの笑顔をキョウカに向ける。
猛烈に嫌な予感がする。
「まさか……」
「はい、そのまさかです、ルイスガル内で悪質な窃盗を働いた盗賊団がまだ潜伏してるらしいんですよ、その粛清を…ね」
ルイスガルは帝国貴族の支配から解放されてからは平和なのだがソレに乗じて町の外や他国からやってきたならず者達がルイスガルの利権を狙ってるという構図が出来てしまった。
それ加え、神聖ミカド組はカタギ連中には教会兼自警団として通しているので、町を守らなかったら信用がだだ下がりしてしまうのだ。
「今回はルシーラさんと行ってくださいよ、女神の私は…やることがありますから…ねっ」
レガリアスはケツ持ちをしている酒場等のトラブル解決を請け負っている、得物のチェーンソーをチラつかせて脅せばいいだけだからだ。
「あのエロ女神、自分ばっかり楽なシノギばっかりしやがって……」
ルシーラと共に盗賊団の粛清に向かうキョウカはついつい悪態を吐いてしまう。
「まぁでも、レガリアスは怖いから任せておけば安心だよ、それよりキョウカとカチコミ!楽しみだな〜」
ルシーラも初めて出会った時と比べて言動も行動もだいぶ狂人じみてきたと思う。
そんなことを考えていると、盗賊団が潜伏しているという廃屋に辿り着いた。
「ここが奴らのヤサか、今回も私が……」
「いや私がぶち破る」
どちらが扉を破るかという話をしようかと思ったらルシーラが制止した。
「光臨っ!」
魔力で生成された光の矢が無数に扉に突き刺さり、粉々に破壊した。
「どうもっ!神聖ミカド組です、ルイスガルでくだらない盗みを働く奴らは許しません!」
「うわっ!なんだ!げっ……後ろにいるのはシスター・キョウカ……ということはコイツら、神聖ミカド組だ!」
奴らの驚愕する声を皮切りにルシーラが動く。
「一人も逃がしませんよ!スパークフィールド!」
そう叫ぶと共に、杖を地面にカンッと小突く、すると電撃が地面から流れていき、廃屋全体に行き渡る。
ルシーラは一瞬にも満たないうちに盗賊団を無力化したのだ。
(ルシーラもだいぶ鉄火場の雰囲気に慣れてきたな…)
キョウカは彼女の成長っぷりに感嘆していた。
「なんかお前って急に強くなった気がするよな...」
その問いに彼女は満面の笑みで答える。
「なんだかあの日以来、魔法の威力や魔力の練る速度も上がっている気がするんだよね...私もついに天才の仲間入りかも!」
(いや、まさか...そんな訳ないよな...)
半信半疑ではあったものの、キョウカの脳内には一つの可能性が生まれていた。
レガリアスの血の効果は怪我を治すだけではなく、摂取した者の眠った力を目覚めさせるという効果があるのではないか....と、そうでなければルシーラの急成長っぷりは不自然すぎるのだ。
(まあ今考えても仕方ないか....)
そして無力化した盗賊団達に対してキョウカが言い放つ。
「君たちはシマ荒らしとして粛清する予定として来たんだけど、全員が私の組織、神聖ミカド組の傘下に付くなら見逃してあげる、断れば……死んでもらうね♡」
「「「ひぃぃぃぃ……」」」
キョウカは脅しのつもりでベレッタとロングナイフをチラつかせる。
盗賊団は全員が心の底から震え上がってしまった。
最近こういうことを続けてる為、神聖ミカド組の戦力が徐々に増強されていき、気がつくと組織の人数は優に三十人を超えていた。
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