第18話 女神の血

 キョウカはいち早くこの戦いを終わらせる為に奮闘していた。


「属性付与-貫通-」


 そう呟くとキョウカはベレッタを奴らの兜に向けて放つ、一人は回避したがもう片方に命中した。


「ぐあっ……」


 兜を貫通した銃弾は奴の額を撃ち抜き、一瞬で絶命させる。


「そんな……」


 味方が一瞬でやられたため、奴は狼狽の声を上げる。

 彼女は素早く距離を詰め、奴の兜を剥いで首根っこを掴んだ。


「さて、お前には聞きたいことが沢山ある、まずはレガリアスの監禁場所を言え」


「…ぐぁ…わ、分かった…あの女は……二階最奥の部屋に…閉じ込めてる……」


 まずは居場所をゲット、しかしキョウカはもう一つ尋ねることがあった。


「そしてもう一つ、お前らを差し向けた黒幕を言え」

「それは……言えな……グァァァァァ!」


 奴が回答を拒否した瞬間、彼女は奴の右目に指を入れて眼球を潰した。


「もう一度聞く……黒幕を言え、次拒否したら左目と歩行能力を奪う」


 目の前の圧倒的な恐怖に黒騎士は耐えることが出来なかった。


「上級貴族の…メルボーンだ……言ったから許してく……」

「分かった、話してくれて助かったよ」


 しかしキョウカはその言葉と同時、残りの眼球を潰し、首を捻り折った。


「ごべっ.......」


 倒れ伏す黒騎士を見て、彼女は冷徹に言い放つ。


「どの道、ウチに弓引いたお前らに生きる資格なんてない、さあ逝ってくれ」


 黒騎士を一人残らず始末したキョウカは、はやる気持ちを抑えながらレガリアスがいるであろう部屋に辿り着いた。

 勢いよく扉を開けると、そこには最悪の光景が広がっていた。


「レガリアス!無事だったか!」

「はい、私は大丈夫ですけどルシーラさんが……」


 レガリアスの目の前には明らかに致死量の血が流れているルシーラが倒れていた。


「嘘…だろ……」

 顔色を見ると、まだ絶命はしていないが、瀕死だ。


「おい…大丈夫か!ルシーラ!!レガリアス…なんとかならないのか!」


「一応方法はあるにはありますけど…もし適応しなかったらルシーラさんは…」


「なんでもいい!希望があるならなんでもいいんだ…コイツを助けてくれ……」


「分かりました…方法というのは女神の血を摂取させることです」

 キョウカはその言葉に聞き覚えが無かった。


「女神の血……?もしかしてお前の血の事か?」


「はい、そうです女神の血を人間に与え、適応すると瀕死の重症も瞬時に治すほどの再生能力を一時的に与えることが出来ますが、もし適応しなかったらその場で死に至ってしまうんです」


 しかし何もしなかったらどの道ルシーラに待ってるのは確実な死だ。

 彼女の答えは一つしか無かった。


「助けられる可能性があるならやってくれ!頼む……」

「分かりました……では…」

 レガリアスは懐からナイフを取り出すとそれで自身の指を軽く切る、すると指から鮮血が滴る。

 それをおもむろに口に含み……


「んっ………」

 ルシーラに口移しで飲ませた、すると眩い閃光が辺りを包み込んだ。


 どのくらい経ったのだろう、気がついたらルシーラはほぼ無傷の状態で横たわっていた。


「……成功ですね…はぁぁ……良かった…」

 なんとか成功したようで、レガリアスも京真も安堵の息を吐く。

「レガリアス、本当にありがとう 私じゃどうしようもなかった…」

「いえいえ、私も仲間を失うのは嫌でしたもん、これくらい朝飯前ですよ!…適応しなかったらまずかったですけど……」


 レガリアスがルシーラを抱き抱えて帰ろうとしたその時、キョウカが歩みを止めた。

「レガリアス、ルシーラを連れて先に教会に帰っててくれ」

「え、なんでですか…?あ…そういうことですね、分かりましたよ」

 レガリアスは彼女の目的が何か理解したのだろう、これ以上聞くことは無かった。


 ―――――――――――――――――――――


 数日後、帝都にて。


「メルボーン様っ!ご報告になります、黒騎士団小隊及び、隊長のビンセントが神聖ミカド組に…殺されました……」


 血相を変えてメルボーンの部屋に飛び込んできたのは黒ローブ姿の密偵だった。


「なんだと……クソっ!!黒騎士達が負けただと…!ビンセントという我が国で高位の騎士がいながら……あの役立たず共が!」


 部下から報告を受けたメルボーンは怒髪天を突くほどに怒り狂った。


「シスター・キョウカめ……こうなったら……おい、ルイスガルに私の私設軍を送り込むんだ…奴を炙り出すためなら町人を殺しても構わん」


 そして最悪の作戦を決行するように指示を飛ばす、しかし。


「ウチの仲間を誘拐した挙句、今度はルイスガルのカタギにも危害を加えるつもりとは…⋯もう救えねぇなテメェは」


 密偵が勢いよくローブを脱ぎ去る、そこにはシスター服の少女が立っていた、なんとキョウカが奴の密偵に扮していたのだ。


「き、貴様は!?シスター・キョウカッ!衛兵! 来い衛兵!」

「衛兵は来ないよ、全員の額に風穴を空けてきたからね」

 それを聞くとメルボーンの顔はみるみると真っ青になる。


「死にたくなかったら俺の質問にしっかりと答えろ、もし嘘をついたら、人間らしく死ねないからな」


「ひぃぃっ……」


 彼女はベレッタを取り出し、奴の額に突きつけた。

「今回の件はお前の独断か?」

「……ああ私の独断だ…皇帝陛下は一切関わってはいない」

 どうやら嘘ではないようだ。

「は、話しただろ!早く帰ってくれ!」

 メルボーンは恐怖を滲ませながら追い返そうとシッシッと腕を振る、しかしキョウカは奴の両足を容赦なく撃ち抜いた。


「ぐぁぁぁぁ!!あ、足がぁぁぁ……ヒッ…許してくれ!死にたくない……仲間を誘拐したことは謝る!この通りだ!」


 しかし彼女の答えは決まっていた。


「分かったお前を許そう…とでも言うと思ったのか?お前は喧嘩を売る相手を間違えたんだよ、往生しろや」


 ベレッタの引き金を思い切り引いた。

 そして響き渡る数十発の銃声、キョウカは気が済むまで奴の亡骸を撃ち続けた。


 こうしてシスター・キョウカは今回の件の黒幕、メルボーンのタマを取ったのだった。

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