とおりゃんせ

『ふむ。お父さんお母さんはどんな人かか。戦争ではないか』


『プライベートにずけずけと踏み込むなど』


『野島メバルの両親に呪いをかける。人質に取る気だ』


『ふん。実家に連れて行ったらアウト。結婚詐欺だ』


『んー』


『まあいい。埋めろ』


『疑わしきはリンチ。世の中はこれなのだ』


 +


 んー。

 気になるな。

 こちらからかけ直しは出来ないが。

 中西に聞いてみるか。

「うん。口の軽い奴かどうか試した」

 ふん。

 そこまでは了解。

「財産を乗っ取りたい」

 うん。

「一般人限定の洗脳」

 はあはあ。

 中学の時点で一般ピープル狩りか。

 腐ってる。殺すか。


 +


 多数決な。

 別に。

 地球が四角いか丸いかは、多数決では決まらない。

 自然科学の分野に多数決を持ち込むな。

 経済学か。

 インセンティブ理論を産んだんだから、一定の価値はある。

 素寒貧になったクズが、人情人情うるさいこと。

 醤油を借りる? ねーよ。

 たかが醤油のために、あのいけ好かない隣人に頭を下げるなんて。

 古き良き時代?

 地球のなかった頃まで戻れよ。

 お前1人で。

 過去を懐かしむのは老人だ。

 お前は、もう老人なんだ。

 老人のプロパガンダに洗脳されてるんだ。

 ワシたち、こんなにいい奴だよって。

 間抜け。

 それが本当の敵なのに。

 いい奴と思われたいということは、前科持ちの証明だ。

 俺たちはダーティーな仕事をこなした。

 そう主張すればいいものを。

 結論。

 半端者。


 +


 あー。

 山田使えよ。

 アンケートで能力聞き出せ。

 無害な能力のわけがない。


【フルボッコ】

 相手は悪口を信じ込む。一般人のみ。


 ソイツがどうなったのか私は知らない。


 +


 ネットを真に受けるな。

 アレは仮想空間だ。

 現実には誰もやらない。

 真に受ける馬鹿か。

 仕方ないな。必要経費だ。

 始末する。


 +


 ネットで書き込んだことなど実行しない。

 誉め言葉の場合もだ。

 褒めて来る奴が敵だ。


 +


 褒めるとは。

 相手を天狗にすることだ。

 愛していたら、そんなことはしない。

 切り捨てられたんだ。

 逆上されても迷惑だから麻酔をかけている。


 +


 損得は大切ではない。

 敵を殺すこと。

 罪に問われないこと。

 この2点。


 +


 何で、おべっかに騙されるんだ。

 見え見えじゃないか。

 万人の万人に対する闘争状態。

 それを誤魔化すためにあるのが国家なんだ。

 ルソーの社会契約論読んだことのない奴は駄目だな。

 次点はカントの啓蒙とは何か。

 理性の未成年状態から脱却せよか。

 痛い思いをして、自分は未熟だと悟った方がいい。

 30過ぎの俺様野郎は痛過ぎる。

 いいけどね。

 こういう馬鹿に仕事を振るのが上司だし。

 こんな奴に人望あるわけないだろ。

 嫌われてるのが、優秀さの証明に見えるらしい。

 コイツ、登記簿って知ってるかな。


 +


 愛とは何だ。

 相手を1人前と見ないことだ。

 愛していると言ったなら、殺されても文句は言えない。

 可愛い可愛いベイビーちゃんと言ったんだ。

 戦争開始。


 +


 人は失敗を通して成長する。

 過去の失敗が恥?

 悪い。

 お前はもう死んでいる。

 経験を活かせなかった。成長出来なかった。

 もうアウト。

 死去。


 +


 成長か。

 30代のじじいには酷だったかな。

 どうしようもないな。あの低学歴。

 何その聞いたこともない私大。

 私は上司じゃないんだから、お前を飲み会なんかに誘わないよ。

 ああ。

 一定の効果はあるな。

 社内で人望のない奴を炙り出せる。

 どこに行っても、こんななのかな。

 嫌だねー。頭を使わない労働者。

 酒飲んでプログラムが組めるか。ボケ。


 +


 性格がきつい?

 あー。

 他人を矯正しようとか。

 セミナー?

 本当。

 阿呆。

 弱いのが悪い。


 +


 上手く行かない方が面白い。

 私の妨害をした。

 決闘だ。

 敵に回ってくれた。ありがたい。

 腕を上げるチャンスだ。

 ぶちのめす。

 手袋投げて来たのは、お前だ。

 もっともっと。

 お客様のために役立つ社員に。

 社会の一員に。

 ボスは手柄が欲しいらしい。

 会社の一員になりたい。

 社会の連中は格下だー。

 OK。ウィン・ウィン。

 私の方が視野が広い。

 お前は最終的に死ぬけど、栄耀栄華を味わえるのだからいいだろう。


 +


 美味しい所は人に譲れ。

 頑張ったで賞の方が価値が高い。

 下っ端仕事にスキルポイントを振るな。

 ボスの仕事。

 それは「謝罪」だ。

 1番謝るのが上手かったアイツがリーダーだった。


 +


 …………。

 芸能人?

 え。

 ペンはサメより強しのミキやんけ!

「藤ヶ森ひとひらです。芸名は……」

 知ってます。

 甘鯛桜さん。

 はー?

 妹なのか。

「お兄ちゃんがこの世で1番信用出来ると」

 あー。

 何。

 ストーカー?

 能力者?

 あなたは異能力高校でないのか。

 あー。

 有坂の【ディスガイズ=パーフェクト】が消えたのがきつい。


 +


 中西。

「ん?」

【ぷりてぃーにゃーにゃー】ってフェイク?

「誰の依頼?」

 あー。

 料理部・藤ヶ森って分かる?

「? あー」

 能力は【恋する鯉来いまな板に】。

「知らんな……」

 妹が芸能人なんだ。

 ペンはサメより強しって知ってる?

 うーん。

 この件に関しては無理か。

 あー。

 澄香。

 いや。

 夕真に訊くか。


 +


「うーん」

 どう思う。

【ピクチャー=ムーヴメント】なわけはないんだよ。

 撮影の間、アパートに戻ったはずないし。

「ですね。写真を撮ると前後24時間。早送りもしくは巻き戻し」

 うん。

「児島さん女の子……」

 そう。

 しかも、新聞部と料理部は同盟。

「4天王の妹さんを害するとか……」

 あるわけない。

「マネージャーか社長……」

 ふーん。

 あー。

 悲劇のヒロインになれば、サメ爆売れするか?

 ふん。

 んー。

 はあはあ。

 可能性を1つ潰すか。

 サメ3の脚本を持ち込んでみる。

 撮影に入れば、しばらくは安泰だ。

 んー?

 脚本?

 誰に?


 +


「俺か」

 よ。岬。

「手芸部の件どうにもならんかった」

 まあな。

 どうするべき?

「ネットでスイートポテトゴーレムがナンシーという考察が上がってる」

 うん。

「それを上回る真相を冒頭で明かすべき」

 はん。

 ふんふん。

 はー。

「脚本持ち込みとかアウト」

 だよな。

 プロのプライドが。


 +


「金返せ」

 中西。

 あー。

 あのさ。

 水無月硯先生。

「?」

 あのスイートポテトゴーレムがナンシーじゃないかって考察が。

「はあはあ」

 どうすればいいの?

「あー」

 脚本の仕事取る?

「んー」

 印象悪いか。

 小説家だしな。

「そうだなー。スイートポテトシャークを出す」

 やめて。


 +


 伝えてみて。

 是非3に着手して欲しいですって。

 ナンシーとミキが可哀想って。

 良し。

 しゃーないな。

 連作か。

 だれる時期があるんだよな。連載って。

 どんでん返し。

 何をすれば?


 +


「読んでて面白い脚本ってアウトなんだ」

 へー。

「説明台詞が多過ぎる」

 脚本だしな。

「ミキさんがボクのこと教えたらしい」

 甘鯛桜さんだってばよ。

 あー。

 反応は。

「知名度高いんだね。ボク」

 うん。

 えくれあ、背筋凍った。

【電電虫】な。

 異能力高校時代のコネが消える……。

 レベル1に逆戻り。死ぬ。

「手帳1冊買えばいいだけなのに」

 あれ。

「デジタル世代、頭堅いよ」

 あー。

 そっか。


 +


 言われた通りにした。

 澄香や夕真や浜崎にも勧めた。

 残留組には僭越だな。

 まあ、相談されたら。


 +


 しばらく仕事。

 岬から?

「いきなり学園物にしてみた」

 はあ。

「サメが教師だ」

 おい。

「ナンシーが喰われる」

 またか。

「救済? それより続編」

 プロだ。

「ナンシー救済を望むファンが一杯? OK。引っ張れる」

 神か。


 +


 ラスボスがケルベロスって何だ。

 ナンシーの魂は冥王星に囚われたままで3終了。

 ひっでえ!

 こんな物にファンはお布施するのか。

 次はハデスだろうか。

 出来たのは脚本だけ。

 撮影と上映は、まだ先になる。

 あー。

 そうか。

 今の内だな。

 ひとひらさんのアパートを写真に撮る。

 で、児島に依頼。

 …………。

 あ、意味ねえ。

 犯人の姿が映っても、その写真には【ピクチャー=ムーヴメント】が使えないんだ。


 +


「後ろ姿だと思います」

 だな。夕真。

 24時間に1回の能力。

 最強だって証明されてる。

「まあ……」

 どうするかな。

 浜崎の【真偽眼】が消えたの痛過ぎる。

 原稿の誤字脱字を発見する能力。

 一生雇用してもらえたはずなのに。

 可哀想だ、アイツ。

 夕真と子供作れないし。


 +


 夜の母どこに消えた。

 あー。

 開き直ってラストエピソードまで引っ張るのか。

「いいんだよ。映画は誰も見返さないから」

 岬。

「死ぬほど濃くする。漫画は薄味でいい」

 そっか。


 +


 ?

 頼んだ覚えない。この小説。

 900MAXハーレム戦記?


 +


 さ。潮時だ。

 ボイスレコーダーか。使えない。

 目に余るようになって来たら用意しよう。

 これは抑止力だ。

 責任負わされないための。

 隠し持ってたら盗聴なんだよな。

 堂々と録音するべきなんだ。

 脅しの武力か。

 いい言葉だなあ。

 この国には無理だけど。

 どうしようもねえな。このちっぽけな国土。

 国土の広さ=武力なんだ。

 ただし、領土は拡がらない。

 無理。

 土地かよ。

 畑か。田んぼか。

 つらい人生だなあ。だけど好き。

 私の子供は、こんな境地まで到達することないだろうな。

 どうせ青い雛鳥なんだから、この世のバトルロワイヤルに召喚しないのが慈悲か。

 私のガキも、どうせあの茶髪と同レベルだろう。

 要らない。

 アホらしい。

 誰がやるか。結婚ゲーム。

「は?」

 成果物。

 この1ヶ月何してた。

「鬱で……」

 なら、何で相談しない。

「あー!」

 カラオケ行ってないよな。

「あ?」

 かばいやすいような態度取れよ。

「が!」

 ったく。

 私を説得しても意味ねえよ。

 部長に謝って来い。

「が!」

 が、じゃねーよ。

 日本語忘れたのか。

「がー!」

 私はカウンセラーじゃない。

 仕事増やさないでくれ。

 カウンセラーかかれよ。

「てめえ!」

 あのな。

 入力溜まってるんだけど。

「てめえ!」

 あのな。

 お前、客じゃない。

 仕事の妨害するなら切るぞ。

「香城くん……」

 係長。

「彼……」

 分かりますけど。

 だからと言って。

「あー」

 しゃっきりしてもらわんと。

「まあね」

「おい。沼山。飲みに行くぞ」

 あーあ。

 駄目社員。

 ああいう奴らばっかりだから、オッサンの武勇伝信用ならないんだよ。


 +


 …………。

 沼山が死んだ?

 はあ。

 現場写真?

 こんな物見せられても。

 ?

 あれ。

 見覚えのある小説。

 ヒャッハー戦記じゃねえか。

 900MAXハーレム戦記。

 きゅう「ひゃ」くま「っ」くす「はー」れむ戦記。

 通称ヒャッハー戦記。

 作者公認。

 アイツにこれを読むセンスがあったのか。

 ハーレムか。

 あー。

 異能力高校部長クラスでないと許さん。

 ウェルキンゲトリクスとシャギは駄目だ。

 大空寺も。


 +


 ?

「黒川メイヤ」

 はあ。

「能力は【エンジェル=ブレンド】」

 ふん?

 夫が脚本家で取材をしている?

 あー。

 変死事件か。

 何か気になってで通るのか?

「有名になれるチャンス」

 あー。

 凡夫の考えることって分からん。


【エンジェル=ブレンド】

 心を操る香りを調合する。


 +


「うーん」

「分からん」

 そうか。

 本当らしい。

 嘘をつきたくなくなる香り。

 こちらを信用させる香りね。

 はー。

 親戚なのか。水無月先生と徒然先生。

 ふーん。

 あの本読んでみますか。

 ?

 黒川がにやりと笑った。


 +


 あの2人が変死したんだけど。

 やべえな。会社がたがたと言うか。

 私に疑いがかかった。

 おい。

 3人殺しって洒落にならないんだが!


 +


「お前か」

「そんな能力ない」

「仲間か」

「信頼されてない」

「隠すな」

「分からないってばよ」

「出来る奴はいるか」

「高校生の喧嘩で本気出さん」

「ふん?」

「高校で死人が出たら警察を呼ぶ大チャンスだった」

「はあ」

「お前、どんな能力者だったんだ」

「【スチール=ドレス】」

「え」

「防御力アップ」

「…………。巡査部長くらいに、なれたんじゃないか?」

「何やってんだ、自衛隊!」


 +


 謎の変死。ウチの会社。

 900MAXハーレム戦記か。

 コケクキカ=ウェイウェイキラーって男が主人公だった。

 ヒロインと結ばれたがロレルリラって娘を産んで死んでしまった。

 続きどうなるんだ。


 +


 あのさ。

 ペンはサメより強しの脚本家。

 鈴木アンって言うのか。

 面識あるぞ。

 科学部の副部長で?

 当時の部長は黒川メイヤ?

 殴るぞ?

 あー。

 一応警察に出頭するか。

「どうも」

「何」

「違うと思うんですが……」

 料理部部長の【そるとスウィート=ラブぱっしょん】について説明する。

「低血糖!?」

「塩分過多?」

「即死!」

「どうしろと!?」

 現役警官がパニックになっている。

 まあ、違うと思う。

 アイツも……。


 +


『とおりゃんせである』

 ?

『凶器は何であると思うか』

 ?

 本?

『否』

 ?

『酒』

 ?

『毒使い』

 ?

『今時の40代もネット民だ』

 ?

 あれ。

『ウェイウェイ系への風当たりが強いこと知っている』

 …………。

 だからと言ってウィル能力は。

『毒の粉末を作る能力。稼ぐために』

 ?

『お前も潰せて一石二鳥』

 ?

 何だ。

『飲み会に行って、生き残っている鮫島が犯人』

 え。

 係長が?

『息子が能力者』

 は?

『託宣だ』

 …………。

 あー。

 現役生徒か教師にコネある奴。

 ウチの会社の社員リスト渡して。

 苗字に心当たりはないか。

 あー。

 報酬交渉に何日かかるか。


 +


【グリーンワイン】

 酒を猛毒に変える粉末を出す。遅効性。


 +


 ヤバいよ。

 こんな凶悪なガキが。

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