攻撃開始の合図

「お前、うちに来てもう1年か。そろそろ簡単な任務から実戦に入ってもらおうかな。」


 訓練終了後、隊長に呼ばれた俺はその話を聞いて心が踊った。


 新人として防衛隊に入隊、その後数ヶ月の研修期間を経て各部に配属される。


 第1特殊空挺団。俺が志願したこの部隊は、空から怪獣に奇襲を仕掛けるエリート集団で、隊員達はどこか頭のネジが外れた人達が多い。


 上陸数千メートルから降下。怪獣討伐に有効な一撃をお見舞する。

これが、モモンガの仕事だ。


「次のスクランブルで名前を入れておく。頼んだぞ。」


「了解。」










≪レギウス、南京町に到達。≫


≪九龍門通過。なおも北上中。≫


≪第23戦車中隊。砲撃用意!≫


≪砲撃及び爆撃の効果確認!≫


 忙しく無線が鳴り響く。戦車中隊が攻撃を行うが、効いている様子はない。

その様子を見た隊長が呟く。


「やっぱ、あの分厚い表皮なんとかしないと攻撃は通らねえか。」


 ダイヤモンド並に硬い表皮と資料にあったな。たしかに、攻撃が全く通っていない。


 だが、その攻撃の様子を見ていた先輩隊員が、あることに気づいた。


「ところどころ、同じ場所を攻撃しているのか、表皮のダメージがあるところと無いところの差が激しいですね。」


 たしかに、言われてみると表皮の攻撃の跡が、すごく激しいところがいくつかある。それを見て、ふと俺は思った。


「もしかして、頭部以外でもダメージが激しいところに特殊弾を数発撃ち込めば、その個所やその周りの表皮を壊すことができ、冷凍弾を撃ち込んだところ以外もダメージが通るのではないですか?」


 頭部に数発撃ち、露見した肉体に冷凍弾を撃ち込む。のではなく、頭部のダメージの大きい箇所に1か2発、特殊弾を撃ち込んで、他の表皮も同様に特殊弾の攻撃で破壊する。その方が、仮に冷凍弾で頭部を攻撃して効果がなくても、他の部隊の攻撃が格段に通りやすくなる。


「新人、なかなかいいところに目を付けたな。が、特殊弾の持ち合わせが少ないんだよな…。けど、その作戦やってみるか…。上飛んでいるのどの部隊だ?」


 隊長が俺の話を聞いて、何かを思いついたのか、無線を片手に上を見ながら話始めた。


≪モモンガ6よりCPへ、何とか頭部の下側に攻撃を集中させることはできないかな?人間でいう顎のところに。送れ。≫


≪こちらCP。航空部隊に掛け合ってみましょう。スティンガー及びアクイラ編隊へ、頭頂部の顎付近を集中して攻撃を行ってください。送れ。≫


≪copy、スティンガー1、作戦を実行する。モモンガ、リクエスト通りの場所にデカいのお見舞いしてやる。あとは任せるぜ。over。≫


≪こちらモモンガ6、感謝する。終わり。≫


 空を飛ぶ爆撃機が軌道を変えた。隊長が提案した場所に数発のミサイルが撃ち込まれる。


 予想通り、大きな凹みができたが、決め手にはならなかった。と、ここで隊長から射撃準備の指示が出る。


「射撃準備よし!いつでも撃てます!!」


 バズーカに特殊弾を装填し、俺はトリガーに指をかけた。


 少し待って、隊長から指示が出た。


「目標!前方の巨大甲虫怪獣レギウスの頭部!特殊弾撃ち方用意…。撃て!砲発射!!」


「――――――――― 砲発射!」






20XX年11月某日



○一四○ 兵庫県神戸市



俺は、特殊弾を怪獣に発射した。

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