第3話 テン

「レヴィ、あなた白の神を食べたのって本当なの?」

「なんだ、黒の神のお偉いさんが神を食いたいのか?」

「違うわ、でも人間界ではやめときなさいよ。白の神が何をやってくるのかわからないから」


 アロエはカウンターにカップを置き魔法で運んできたポットでカップに注ぎ差し出す。

「なんだ、親子揃って薬屋の真似事か?」

「これは、薬じゃないわよ紅茶よ」


 エースは左手の中指をカップの中に入れて、指についた紅茶を舐める。

「意地汚いわよ。もう姿は邪竜ではないのだから人間ぽくしないと」

 エースはわかったわかったと軽くあしらいカップを口元へと持っていきズルズルとすすって飲む姿を見てアロエは呆れた。



 2階からロイがかけてきてカウンターにアタッシュケースを置き開け中には機械が入っていた。

「エース、これあげる!」

「なんだこれは?我には武器はいらんぞ」


 エースは中身のガラクタを見て押し返したがロイは人間界では必需品だと押し返す。

「エースは何だかわかんないと思うけど人間の発明品はすごいのよ!特にこのスマートフォンっての」


 エースはガラクタの中から薄っぺらい四角いものをさし出してくるため受け取ると突如光りだした為  エースは手をはなしスマホがカウンターで弾む。

「これ高いんだからねちょっと光ったくらいで話さないでよ」

 ロイがとても大切そうに状態を確認するためエースはすまんすまんと軽くあしらう。

「繊細なんだから、これだって高いんだから」

 ブツブツとロイの文句は続きつつも使い方を教わる。


「みんなと連絡できるアプリ入れておいたから人間界にいるときはそれを使って最近の神が送ってくる勇者たち魔力感知使ってくるのよ」

 エースは言われたアプリケーションを開くと13人が友達リストに登録されていてデュース、トレイ、ケイト、シンク、サイス、セブン、エイト、ナイン、テン、ジャック、クイーン、キングとまだあってない者も確認できる。


「そういえば、エースあなたのアイコンの写真まだだったわね少し貸して」

 ロイはエースからスマホをとりカシャという音と同時にフラッシュがエースに襲い掛かりとっさに手で視界を覆う。

「何をしやがる!!」

「ごめん写真を撮ったのよ」

 ロイはエースにスマホを返した。画面はアイコン設定完了の文字と共に変顔してブレタ写真があった。


「なんだよ、写真を撮るならいけてる所を撮れ」

 スマホをズボンのポケットにしまい人間界での金銭など生活スタイルを教わった。

「めんどくさいな、これを出せば冥界では目をキラキラさせていたぞ」

 エースは手の平とカウンターを平行にさせて手の平からゴロゴロと宝石を出した。

「お店全て質屋じゃないのよ。」

エースの元まで転がってきた宝石を投げる。


「他になにか聞きたいことはある?」

「国王はいないのか?強いんだろうなこの国を納めてるんだ是非食ってみたい」

 エースの言葉にアロエとロイはあきれる

「戦いじゃなくて勝つ前提なのね」

「残念だけど国にはトップはいるけどレヴィがいた宇宙とは違って力量でトップを決めてはいないのよ」

「あと、エースみたいな力を持ったやつはいないから白の神は異世界から勇者を呼んできて私たちを討伐に来るのよ」

「まぁ、その勇者もまちまちで黒の神以外も容赦なく殺す暴君が多いけどエースのからだの彼もただの人間だったのに殺されてた。」

「で、そいつらはどうした、殺したのか?」

「いいえ、家にいるわよ眠っているけどね。あっ殺したらダメよ彼らも無理矢理この世界に送られて仕方がなくやったので私たちを殺せる能力はもうない。」

「私はもう、むやみやたらに人を殺したくないの私も一応人の子だし」


 人間とは、100年も生きない、宇宙には様々な観察対象のその一つである。

 竜人、獣人、人間、怪人、剛人、魔人と沢山の生物を産み出しそれぞれの宇宙へ送った。

 竜人は背中に大きな羽をもち空を飛び、獣人は二足歩行の動物で知能と動物のそれぞれの得意分野がある、怪人は人型ではない者共だが病気や怪我というのをしない不死、剛人は知能は劣るが何事も力あるものが全てを制する、魔人は人間と見た目は変わらないが魔法を使うことができ魔法で何事もこなす、そして人間は空も飛べず魔法は使えない一番寿命が短いこの中で一番弱い人種だ。


 数千年前に実験でこの種族を一緒にした世界を作ると人間はそれぞれの種族と仲良くしようとしたが怪人に滅ぼされた。

 白の神達は人間は不要と思い滅ぼそうとしたが、それをアロエは反対しそれに従っていった神達を悪だという事で黒の神とそれに付き従うものを悪魔と呼んだ。


「わかった。で、その勇者はどこのなんだ」

「剛人よ、肌は蒼くすごい力だったわよ」

「そんなのがこれからも来る、楽しみじゃないか。」


 腕試しが楽しみだとエースは左手に力をいれると指の骨を砕いてしまい指があちこちの方向を向いたため右手から魔力を流して修復しつつ強固にした。

 自分の力には自信があるがどこまで全力を出してもこの体が保てるのかわからない為その試しも込めてだった。

 ロイはここに来た目的を思い出すとアロエに薬剤がほしいとお願いしアロエは渋々許可を出すと薬剤がある二階にへとすっ飛んでいった。


「では、人間界の世界を見てみるか」

エースは立ち上がり鞄の蓋を閉めて玄関へといく。

「あら、帰るの?主をおいて」

「主?あぁ、神最強の母親がそばにいるのだ俺より安全だろ」

 玄関の扉を開けると先程のバラの庭園ではなく草原がひろがる狭間だった。


「アロエ、お前の家も狭間に繋がっているのか?」

「うん、さっき繋げたの。だってあなたが復活したし面白そうだからお姉さんも一緒に住もうかなって」

 

 右目をウインクさせながらにこっと笑う。

 3000年以上生きている者はお姉さんなのか疑問はあるが聞かなかった事にしよう。

「俺は人間界を見てみたいのだが」

「では、右側のバルブを回してドアの上のメモリを青になるまで回して」


 ドア横の下駄箱の上に赤のバルブがあり、ドアの上には赤のラインに矢印が示しており右から赤青黄緑黒とラインが並んでいる。

 ドアノブを回すと窓が一瞬暗くなり扉の先の場所が変わったと察した。


 扉を開けるとバラの庭園が広がっておりスプリンクラーが水を撒いている。

 来た道を戻るにつれて人の往来が多くなり人間にも微々たる量だが魔力が感じそれが多く集まる方へと歩いていくと店が連なる大通りへとでた。


 KOBE 三宮センター街…なぜか人間達の文字が読めるこの体のお蔭なのだろうか。

 天界や魔界には意志疎通のため言葉は存在するが文字というのは一種の者のみが使えたものである観測隊が記録をする時のみに用いるものだった。

 大通りになるとチラチラとこちらをすれ違うものが見てくる我の姿がおかしいのか。体を見回しても人間のからだというもの手に入れて数日のためわからない。


「よう、そこの兄ちゃんあんた人間じゃないな?」


 目の前にエースより少し身長が高く派手な格好をした男が立っていたが勇者…ではない回りの人々よりは派手な服装をしているが鎧ではない

 上着に獣を飼っている。前歯に立派な牙を持った獣だ実にいいセンスだ。


「おい、兄ちゃん聞いとんのか?」

「あぁ、すまない人には慣れてなくてな」

「おー兄ちゃん良く見たらエースか!さっき一瞬やけどトモチャットのアイコン自分にしてたやろ」

「トモチャット…?あぁさっきエースが写真を撮ってきたものかであんたは」

「俺の名はトレイ!ビックになるもんだ!」

声が少し大きく熱っ苦しいくらいの熱気を感じるがエイトより魔力を感じる。

ビックの意味はわからないが。


「で、どこに行くんだ?エイトならさっき本屋に入っていたぞ!」

「いや、別に目的地はないが人間界は、初めてでな」

「おぉ!では俺が案内しよう!ここはいいぞ!何でも揃うからな!」

 トレイはおい!行くぞエースの兄ちゃん!と言いつつ人混みの中に入っていく。

 少し先頭にとれいは歩き1店舗事に紹介をしていくが興味が湧くようなものはない。

 大通りを外れて細いに入りもう一つの大通りに入ると美味しそうな匂いがあちこちからも香る飲食店ルートが並ぶ

「親睦を深めるため飯でもいかないか?エースの兄ちゃん」

「あぁ、ウマい店を頼む」

 了解!と大きな声と右手でぐっとポーズをして歩き出す。

 大通りの飲食店を無視して通り過ぎ一本の道路を通り年期の入った通路で光の入らない真っ暗な寂れた通路に一軒だけ灯りがついておりトレイは店舗の引き戸を開ける。


「テンの姐お邪魔しますよ~!」

 大きな声と共にズカズカ入っていくと中から女性の声が聞こえる。

「エースの兄ちゃん早く早く!」

 顔を出して声を張るためわかったわかったと軽く相槌をしつつ入る。

 入るとUの字カウンターが出迎え扉開けてすぐの椅子にトレイは座りその横にエースは座った。

「いらっしゃい貴方がエースね」

 淡い緑の着物を着た女性が暖かいおしぼりを差し出す。

「あぁ、我がエースだ。女、お主もロイの使いか?」

「女性に女とか言ったらいけませんよ。私はテン戦闘はできませんが治療をメインにしております。」

「ヒールかいい能力だ我は邪竜で能力は炎だ」

「俺は俺は拡大ッス自分とか触れたものを大きくするッス」

「トレイちゃんおっきくなってお店破壊しないでね~」

 申しませんッスよ~と笑いつつ闇を召喚し闇に突っ込んでピチピチと跳ねた魚をカウンターに広げる。

「昨日、大将の船に乗って釣ってきたんですよこれでうまい飯お願いしますよ」

 あらあら立派なお魚さんと言いつつ魚の尾っぽを両手に一尾づつ持ってのれんの奥の調理場へと向かう。

「テンの姉御の料理は絶品なんですよ今は見ての通り伽藍堂ですが夜はサラリーマン?っていうので一杯らしいッス」

「ほう、我は狩った物をそのまま食うしか選択肢がなかったのでな…」


 そういえば大声で会話を冴え切り闇から一升瓶とおちょこを取り出す。

 一升瓶からおちょこに注ぎ一つはカウンターに一つはエースに差し出す。

「なんだこれは」

 おちょこを受け取り匂いを嗅ぐが少し変わった匂いがする水だ。

「それはお酒っすよ人間いわく大人のご飯のお供で咽むと美味いんすよ」

 言われたとおり飲んでみると水ではない飲み続けると昔のロイにかけられたふわっとする感覚がする。


「あまり、飲みすぎないでくださいね」

両手に料理を持ってのれんをくぐってくる。

料理は四品あり見た目は大変豪華である。

「ほう、料理というものは美しい物なんだな」

「そうなんすよ、姉御の料理は綺麗で美味いんすよ」

 しゃっくりをしつつ酒を飲むトレイは顔を赤くしている。

 いつの間にかトレイの周りには一升瓶が複数転がっている。

「もう、だから言ったのにトレイちゃんたら」

 ポコポコとトレイの頭を叩いて叩かれている本人は大丈夫っすよ~と言いつつ言葉がたじたじになる

「エースちゃんは酔いました?」

酔うとはトレイのようなことか?と聞くとうんうんと頷くため大丈夫だと返答した。

 

もう、今日は連れて変える人いないのよ~テンはポケットからスマホを取り出していじっている。それを見つつエースは料理を素手で掴んで頬張る。

魔物の肉とは違い生臭さなど無くどの料理にも味がある。


「これはうまい」

 あっという間に二品の料理を平らげもう一品にいこうとしたときトレイは一升瓶を持ちたと上がり俺はビックになるのだと叫ぶ始末、テンは、あちこちに連絡をしつつトレイをなだめる。


 力の暴走なのか、トレイはみるみると体を大きくしててんじょうをつく抜けてしまった。

「ちょっと−トレイちゃん!!」

すでに天井はなくなり日が落ち赤く染まった空が見える。

店は跡形もなく、瓦礫が転がっている

「おい、これ人間に見つかったらマズイんじゃないか。」

「それもだけどジョーカーちゃんいないからあれを解除できないのよ」

 焦っている中、テンのスマホに通知音がなり画面を見ると任せろと一つのメッセージが。


送り主はジャックとなっていた。


 雷が落ちたかのような騒音と同時にでっかくなって叫ぶだけで大人しいトレイがバランスを崩したように後ろに倒れだすと同時に小さくなりもとに戻る。

 目元には青たんと頭に大きなたんこぶを作りつつ一升瓶を抱いて気を失っている。

 敵かと思い周りを見渡しても瓦礫の山でテンは安堵した顔をしている。

 次はエースのスマホがバイブし確認するとジャックというものからのメッセージ通知だった。

メッセージは大丈夫かの1文のみで確認すると後ろに人の気配がありかげを見るにとても大きな大男だ

「ジャックありがとう!」

影を見るにテンは叫ぶ

 傾いた扉を外すと全身鎧姿の大男が現れトレイを確認すると右の脇に担いだ。

 

 その大男は顔がなく、青い炎を出している。戦う気がないのか腰に下げた刀を抜く気配はない。

 エースはジャックにはあった?とテンが確認を取るので無いと簡単な返答を返すと大男はエースに手を差し出すので握り返す。


 握ると凄まじい魔力を感じる。

 エースは過去に数え切れないほどの者を倒し喰ってきたがその中で一番強いと察した。

 数分見合っているとテンが手をパンパンと叩き修復魔法を使うため今日は先に帰ってほしいという為店を出て、ジャックの案内の元帰還をした。

 

 帰宅するとロイがスマホの画面を見て大笑いをしていた。

 どうやら民間人に撮影をされており、夜まで大騒ぎになっていたが次の日になるとロイの力により人間の記憶は改ざんされ商店街の老朽化により倒壊というニュースにすり替わっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る