寂しい夜のこと
星明りが一つも届かない夜。
遅い時間には似つかわしくない、小学生くらいの少年がひっそりと家を飛び出した。
少年は、上の方が真っ黒で下の方へいくほど白っぽくなっていく、グラデーション掛かった珍しい白衣を着ており、癖のない黒髪は男の子にしては随分と長い。
裾がふんわりと広がるワンピースのような白衣も相まって、少年は女の子のような見た目をしていた。
ガチャリと音を立てて施錠したのだが、家族は誰も気が付かない。
中身のあまり入っていないリュックサックを背負い直して、首から下げた鍵を胸元にしまい込む。
小さく震える口からこぼれる嗚咽を、必死に噛んで飲み込んだ。
真っ黒い瞳から滲んでポロポロと溢れる涙を長袖で拭って、俯きがちに歩いて行く。
深夜ではないので、町には、ちらほらと人通りがある。
部活帰りの高校生や仕事終わりの会社員などとすれ違った。
だが、泣いている少年に話しかける者はいなかった。
少年はバスに飛び乗った。
満天の星空のように輝く町の明かりを置き去りにして、バスはどこまでも進んで行く。
少年はそれを、窓から眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます