第3話 冒頭へ
8月31日。勝負の時が来た、奏太はそう思った。この日に浜風の自殺を止められれば、うまくいくと思ったからだ。朝8時に起き、学校に向かう。そして屋上へ到着するとそこには、すでに浜風がいた。
「なにしにきたの?倉城くん」
「そっちこそ何してんだよ」
「いや~景色いいところで朝日浴びたいなって」
嘘だ。
浜風が自殺することを知っているからわかる、というだけではない。明らかな泣き跡、疲れ切った顔、それでいてどこかすっきりした顔。誰がどう見ても、浜風は自殺直前の顔をしていたのだ。何か声をかけなければ。
「やめろよ」
とっさに出たのはそんな言葉だった。
多分、浜風は分かったのだ。その言葉の意味を。
「ふーん」
浜風は手すりから、手を放し、こちらへ歩きながらそっと微笑み、
「自殺すると思ったの?そんな訳ないじゃ~ん。ていうか、自殺する理由なんてなくない?」
「ほら。倉城くんももどるよ?私おなかすいてきたし」
そう言って屋上のドアを開けて階段を下っていく。
止められたのか...?
根本的な解決はできていないが、それでも自殺は回避できたはずだ。それに明日からまた学校が始まる。そうすれば余計な感傷的な気分にならないのではないか。一応昼まで屋上で待ってみたが、その後浜風が屋上に来る様子もない。これでもう大丈夫なのではないか。少し安堵の気持ちを抱きながら、奏太も屋上を後にする。
奏太は何か達成感のようなものを感じながら家に帰り、奇妙な体験をしたものだなっなんていいながらなんとなくテレビのニュース番組をつけた。
そして、冒頭に戻る。
【3度目の夏】
まただ、また戻っている。原因はもう浜風の死しか考えられない。どうにかしなければ。考えることが多くて頭がごちゃごちゃする。
一度自殺を止めたのにも関わらず、もう一度自殺するために戻ってきたということは、相当追い詰められていたのではないか。じゃあ浜風を追い詰めている原因は?家族?友好関係?それとも別の何か?
どうやって浜風の自殺を止められる?そんな考えても考えても新たな疑問が出て止まらない。
そして、決心した。どうせ浜風を救えないとループするのだ。地道に情報を集め、どうにかしてあの自殺を止めよう、と。
そうしてまた彼は学校へと向かっていく。
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