第2話 驚愕

悲鳴がこだまする。その日部活をしていた女の子が、浜風の死の第一発見者だった。なんだなんだと人が集まっていき、そしてしばらくすると警察が到着。周りも騒然としている。

そしてこのことは当たり前のように拡散され、奏太の耳にも届くことになる。

もちろん奏太も困惑した。同じクラスの、しかも人気者がこの世からいなくなった、というのもあるがもっと冷静になったときに、特別自殺する理由が分からなかったのだ。


もやもやを抱えたまま奏太はベットで横になる。明日はこの話でもちきりだろう。もしくは休校にでもなるのだろうか。そんなことを考えながら眠りに落ちていった。














「ちょっと!奏太!始業式から遅刻するわよ!!」

「あとちょっと、もうちょっとだけ...ん?...は...?何が起こったんだ?」


何度確認しても4月5日。時が戻っているのだ。おかしい。絶対におかしい。あれが夢だったわけがない。でもタイムリープだなんてもっと信じられない。母親に今日何日か聞いてみたが、4月5日に決まってるでしょ。と一蹴された。違和感だけが募っていく。なんだこれ。ものすごく気持ち悪い。だがもう学校に行く時間である。学校に行けば何かわかるかもしれない。奏太はそんな期待を胸に急いで向かう。そして理解したのだ。




あ、これタイムリープしてるわ。


間違いない。この下駄箱の感じ、樹の絡み方。浜風とその周りに集まる人たちとその光景。すべて一緒なのだ。朝の先生の挨拶から、校長先生の話の内容まで一言一句違わず。最初は、特に何も思わず話を聞いているふりをして前と同じように過ごそうなんて思っていた。だがどうしても、そのうち絶対に考えるであろう思考にたどり着いてしまった。



いまいち自分がタイムリープをしている理由が分からないのだ。特に何か強く後悔したわけでもない。彼女はできなかったが、楽しく友達と過ごし、バスケ部に入り、優しい先輩だらけで、ものすごく充実した日々を過ごした。じゃあ、自分以外の人もタイムリープしているのか。そう聞かれるとそうでもなさそうなのである。


ただ。少し。一つ心残りがあるとするならば、浜風の自殺。


同じクラスで、深くかかわりがあるわけではないが、別に少しくらいは話したことがある。それくらいの仲だが。死んでほしくない。でも、自殺した理由がわからない。見当もつかないのだ。だからこれはチャンスかもしれない。原因が分からなくても、浜風が飛び降りる日。8月31日に飛び降りるのを止めれば、死ぬことを止められるのではないか。そう思ったのだ。






だが、結局、奏太は浜風の死を止めることができなかったのだ。




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