これでもう100回目の夏

冬の妖精

第1話 終わらない夏



「それでは、次のニュースです。都内の高校で女子高校生の飛び降り自殺がありました…」


8月31日、普通の高校生だったら、このニュースが流れてきたとき、またか、いじめでもあったのかな、といった月並みの感想で終わっていただろう。実際それが全く知らない人ならば、この男、倉城くらじょう 奏太そうたも特に驚きはしなかったかもしれない。


だがそれが同じ学校の、同じクラスの美少女であったら?



奏太はまるで時が止まったような感覚に陥る。エアコンの音がうるさい。全身が冷えていく。アナウンサーの言ってる言葉が耳から通り抜けていく。以前にも同じ感覚に襲われた。それもそうだろう。なぜならこのニュースは2だからだ。


「なんで...」


今回はうまくいったと思ったのだ。なぜ自殺を止められなかったのか。そんな悲しみを抱きながら、奏太はまたも無気力なままベットに潜る。

そして目を開けると


「まただ...4月5日に戻ってる。」


そう、時が戻っているのだ。
















【1度目の夏】


「ちょっと!奏太!始業式から遅刻するわよ!!」

「あとちょっと、もうちょっとだけ...」


そんな恒例のやり取りをして起きる今日は4月5日。二年生になってはじめての登校日だ。母親が用意してくれた朝ご飯を食べ、急いで学校に向かう。学校に着き、下駄箱の前で自分が何組になったのかなと確認していると、


「よう!奏太とはまた同じA組だったな!よろしくな!」


と言って男が肩を組んできた。こいつの名前は佐藤さとう いつき。いわゆる親友というやつである。サッカー部のエースでイケメン、勉強も校内で30位以内をキープしているモテモテボーイである。もちろん彼女もいる。その点では非常にむかつくやつである。自分もそこそこ悪くないとは思うのだが、こいつには勝てない。そんなやつである。


「教室どこだっけ?」 「あっちじゃね?」

と話しながら教室に向かっていると、自分たちのクラスに謎の人集りができている。なんだあれ。最初は見えてこなかったが近づくにつれてその正体が分かり納得した。

絶世の美少女がいたのである。


名前は、浜風はまかぜ 香奈かな。黒髪ロングが印象的な可愛いというより美人が似合うような女の子。1年の頃から男女問わずたくさんの告白をされてきて、すべて断ってきたといううわさもある。一部ではファンクラブ的な存在まで出来ているらしい。そんな彼女に少しでもお近づきになろうと思った男女が殺到していた。


「浜風さん!今日放課後あいてる!?」「俺が先に誘おうと思っていたんだ!俺とカラオケ行かない?」「いやおれと...」


そんな声が飛び交っている。去年も見たな。困った顔をしながら誘いを断っている浜風の姿を見ながら、通り過ぎて俺たちは席に着く。この時は思いもしなかったのだ。



8月31日、浜風香奈は自殺した。




































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