第三章 別離する因果
「離婚してもらえないだろうか」
秋彦は冷めた紅茶を眺めながら深刻な顔をして告げる。
その言葉に動揺しなくなってしまった私がいる。
彼への愛情が失くなってしまったのではなく、こうなる運命だと割り切れてしまったのだと思う。どんな道筋を辿っても柚葉は死に、離婚を告げられる。お決まりと言っても良い。そういう点で言えばタイムリープしているのか。
このパターンは新しかったのもあり、意識が遠のいてしまったがすぐに回復した。学生時代の友人と不倫関係にあるだなんて予想しないよね。秋彦に都合がいいことが起こりすぎているのが気掛かりだが、これも私が選択した結果なのだろう。
「どの口が言っているの?」私は言う。「このために私だけを呼んだのね」
私は下を向いている愛美を見据える。
「御免」愛美は言うが、はじめからこのつもりだったのだろう。
「三日前の食事会の幹事は麻美子ではなく愛美、貴女だったのね」私は言う。すると、秋彦がどういうことだと下を向いている愛美の顔を覗く。「麻美子の不倫を嗅ぎ付けた貴女は彼女を脅して私たちを集めさせた。麻美子を悪者に仕立て、自分に注目されるように差配した。そうすれば貴女に同情するものね。何より、麻美子に不倫を肯定させることで自身の行為を正当化させるよう仕向けられる。喧嘩別れしたように見せ掛けることに成功した。秋彦とオープンに付き合えるように彼を唆し、私に見せつけるべく私だけに連絡をした」
「そう、なのか愛美」婚姻関係にまだある妻の前で平然と不倫相手の名前を親しげに呼べてしまう秋彦の神経に辟易するが、彼は自分がしていることに気づいていない。
秋彦の不倫相手は一貫して愛美か気になるところだ。ふたりの出会いは何処だ。ふたりに接点はないはず。まあ飲み会で誰かに紹介されたか出会ったかして意気投合したのだろう。今となっては疑わしい麻美子の話を鵜呑みにすれば、愛美は麻美子に旦那を寝取られているので悲しみを紛らわせるために飲み歩いた先に秋彦と出会った、が無難なプロットだけど、秋彦に魅了された愛美は夫に飽きて、麻美子を嗾けて不倫するよう誘導したとしても不思議ではない。
不倫に熱を上げている母親を見て皆瀬さんはどんな心境だったのだろう。芥子家准教授に口説かれている時は母親を思いうかべたりしたのかな。少しでも彼にいいなと感じた際は嫌気でも差しただろうか。遺伝子に逆らえないと。
愛美は柚葉を殺害したのか。そこも現状は判らない。
判然としないことばかりだ。
柚葉の死まで一ヶ月を切っている。早く対処しなければならないというのに。
二週無駄にしたのが大きくのし掛かっている。
私の失態だ。
「そうだよ」下を向いて愛美は不幸を存分に味わい、どん底を知った人間がうかべるであろう恐ろしいほどに能面な笑みで言った。背筋が凍る。「こうでもしないと秋彦くんは遊木巴と離婚しないでしょ?」
愛美は見せ付けるように秋彦にキスをする。流される儘に秋彦が舌を入れるのが見えた。
「麻美子を嗾けた理由はそのとおり」愛美は恍惚な顔をする。
「そこまでする理由は何?」私は訊く。
「単純だよ、何としてでも秋彦くんを手に入れたいもの。そのためにトライアンドエラーをしているようなものだから」
愛美は私とおなじく時間をやり直している。曲澤が怪しいと思っていたが、愛美だったか。今まで交差しなかったのは愛美も独自のやりかたで最良の選択をして来ていたのだろう。しかしどれだけ繰り返しても結末は変わらないことにじれったくなった彼女は別の手段で最高の結末を手に入れようとしている。
果たして彼女は私もやり直しているのを知っているのか。いや、知っているだろう。そうでないとあの物言いはしない。こうして私と会うと決めたのも宣戦布告と秋彦から手を引いてもらうためか。裏で動くより正面突破するほうが勝率が格段にあがると踏んだ。
私が探偵を雇って監視しているように彼女もまた私の動向を監視していた虞は大いに考えられる。
「秋彦を選んだわけを聞かせてもらっていい」私は言う。秋彦を置いてけぼりにすることになるが、この際どうでも良い。敵が明るみになったのだ。目論見を瓦解させるのに狙いを知っておく必要がある。
「素敵だから。それだけよ」愛美は口付けをする。「遊木巴にこの人は勿体ない」
「だから私から奪うの」
「当然の報いよ」愛美は言う。
「貴女に何かした?」秋彦はされるが儘。置物と相違ない。いるだけで愛美の心は満たされるのだからいないよりまし。愛美の視点に立てばの話だけど。
「恭介」どうしてその名前が出てくる。「芥子家恭介と付き合ってたよね」
それがいったいどうした。
「誰だ、そいつ」自我を取り戻した秋彦は私たちの会話に容喙する。
「遊木巴が昔交際してた相手。鈴音と交際してもいたし、私とも付き合ってた」
「芥子家、お前の大学にもそんな奴がいなかったか」秋彦は思い出したようだ。面倒なことになった。
「学部はちがうけど、一応同僚かな」私は言う。
「その言いかたは無いんじゃない? 曲がりなりにも元カレよ?」愛美は言う。何を考えているのか判らない。秋彦は怪訝な表情で私を見ている。不信感を募らせてしまった。芥子家と言わなければ何の問題もないと思っていたのが徒となるとはね。まんまと愛美にしてやられた。皆瀬さんは麻美子経由で私と芥子家くんの関係を聴いたのかもしれない。私に接触してきた。
あれも愛美の差し金か。
「愛美もでしょ。鈴音から奪っておいて良く言えるわね」私は言う。
「お互い様でしょ」愛美は不敵な笑みをうかべる。「鈴音と恭介を引き合わせたのは遊木巴、貴女じゃない。恭介を捨てたのも同然。可哀想な彼。鈴音も鈴音よ。結婚しようと言っておきながら結婚する気は無かったから、私が奪ってやった。そしたら眼の色を変えて、私から恭介を奪ったのは他でもない、遊木巴」
「どういうことだ? すまない、俺にも解るように話してくれないか」秋彦は眉間を揉む。そこまで難しい話はしていないように思うけれど、学生時代、遊んで来なかったお真面目さんにすれば異世界に感じるのも同然だ。
「ひとりのおとこを三人のおんなが取り合いしたの」愛美は言う。「奇妙な四角関係が気付けば出来上がっていた」
「学生時代の話だろ」秋彦は愛美の魔法に引っ掛からない。「君らみたいなド派手な遊びかたはしないだろうけど、恋愛は普通にするものだろ」
「学生のお遊びだったらいいんだけどねえ」愛美は意味深な物言いをする。「遊木巴はなんとー、秋彦くんに隠れて付き合っていたりしたんだよ」
秋彦の精神を脅かしかねない発言をする。私に対して抱いていた不信感にさらなる大打撃を与える。実に効果的だ。辛うじて信じていた私への信頼を壊すのに持って来いだ。
私が反論出来ないことを愛美は知っている。
何故なら愛美から芥子家を奪ったのは正真正銘私だからだ。
「しかもあの時、妊娠してたよね?」愛美は追い討ちを掛ける。「本当に柚葉ちゃんは秋彦くんの子どもかなあ? たまに思ったりしない? 自分の娘は俺の遺伝子が組み込まれているのかって」
悪魔が囁き出す。秋彦の焦点が次第に合わなくなる。効果覿面だ。徐々に崩れつつある秋彦の自我に止めを刺すのに。
胡乱な瞳で秋彦は私を見凝める。腕時計がグラスに当たる。秋彦は音に釣られて視線を下へ。そしてグラスを手に取る。
瞬時の判断で秋彦は手元にあるグラスの中身を私にぶち撒ける。私の視界は水浸しとなる。
「本当は恭介くんの子どもなんじゃないの?」愛美は言う。
「もう止してくれないか」秋彦は声を押し殺す。「誰の子どもとかどうでもいい。柚葉が俺の娘であることに変わりはない」
「そうだけど、柚葉ちゃんはどう思うかな? 秋彦くんと血が繋がっていないと知ってしまったら、どう思うんだろうねえ」悪魔は囁き続ける。秋彦を自分のものにするためならばどんな狡猾な手段であれ使うことを厭わない。秋彦の表情が曇っていく。猜疑心で何を信じれば良いか判らなくなっているのだろう。
「DNA検査でもすればいいんじゃない? 愛美がそこまで言うんだもの」
「それは卑怯じゃない? 遊木巴はお腹を痛めて産んでいるから証拠はあるけどさ、秋彦くんはそんなの無いんだよ? お腹を痛めてない。ただ膣内に精子を出してるだけ。ただそれだけなの。それだけの精子が果たして自分のかを証明させるの? 酷なことをさせるのね、遊木巴は」
何処までも狡い人と愛美は言う。
それをアンタが言うな。
「でも私はちがう」声色を変える。悪魔というより魔女だ。色目を使っておとこを誑かす。「私は貴方をひとりにしない。私はずっと貴方の傍に居られる。何より貴方を寂しい思いにさせないわ」
その言葉が決定打となった。
「遊木巴、別れてくれ。そして二度と俺と柚葉の前に現れないでくれ」
苦悶の表情をうかべた秋彦はそう言った。
愛美の勝ち誇った顔に私は怖気が走った。
離婚届にサインはしなかった。秋彦は喰い下がったが愛美が首を振ったのを受けて、離婚を喰い止めることは成功した。
柚葉は守れなかった。秋彦は娘を連れて家を出て行った。
必ず柚葉を取り戻す。娘にそう約束を交わす。
一ヶ月経ったが和解に到らず、平行線が何処までも続く。
皮肉にも柚葉の死を回避出来た。額面どおり皮肉でしかない。
探偵からの報告で面白いのがあった。麻美子の旦那、つまり愛美の前夫に当たる皆瀬怪童は元々麻美子と婚姻関係にあった。要するに愛美が麻美子から皆瀬を奪い、被害者面をしていたが元鞘に収まっただけの話で愛美が話を都合がいいように改竄していた。さらに皆瀬綿雪は麻美子との間に生まれた子どもではなく、いちばん最初の妻との間に生まれた子どもで麻美子と血縁関係はない。
皆瀬はおんな癖はとても悪く、麻美子が六人目の妻になるらしく、結婚した相手全員に子どもが存在している。特に三番目と五番目の妻の間に五人いる。
日頃から論文の添削や指導などしているとは言え、他人が覗かれたくない、秘匿しておきたい事柄を報告書という形と雖も読むのは二重の意味で辛い。
彼女が畏怖していたのは母親ではなく父親の純粋な遺伝子にだったようだ。
不安に思う相手が母親の友人が奪い合いしていたおとこであればなおさらそう思うのも無理からぬ話。
愛美はというと結婚と離婚を三回繰り返しているがそのどれもが略奪によるものだった。気質みたいなものなのだろう。既婚者はモテると言われるし、諺で隣の芝は青く見えると言うが彼女は地で行っていた。芥子家に対する感情も羨望のアンテナが働いた故の行動か。ともすると、麻美子とは卒業したあとも関係が続いていたのだろうか。
そんな疑問が湧き起こる。報告書にはその辺のことは書かれていなかった。
秋彦に関するものはこれと言ってなかったが、気掛かりなものとしては、秋彦が買っている交渉のエリートは女性だった。名前を
「良く調べましたね」私は報告書を読みながら言う。
「木沈に関しては簡単でした」探偵は言う。「彼女、有名なんですよ」
「有名?」分厚い紙束越しに探偵を見る。
「体を武器に商談を手にしているんです。彼女の経歴は一見華やかなものですが、実態は真っ黒です。久々にここまでする人を見ました」探偵は肩を竦める。
写真がどうも気になる。見れば見るほど誰かに似ている−−感じがする。この顔に身に覚えがある。
それに木沈という苗字。偽名だろう。あからさま過ぎて笑いそうになる。
私が木沈に懐疑的になっているのを察した探偵は黙って別の写真を差し出す。
「意地悪をしたくてそうしたわけではないのですが」と切り出す辺り確信犯だ。まじまじと探偵の顔の変化を観察していると口角が緩みはじめる瞬間を観測出来た。人間、企みごとが成功したと思うと表情に解りやすい変化が起こる。愛美も似た顔をしていた。
「枕木愛美ですよね」私は探偵を遮って言う。
「解りますよね。誑る行為はするものではないありませんね」探偵は言うがばればれの演技をする時点で私に気付くことは見越しているはず。いやらしい人だ。
「旦那が彼女の代わりに出張に行った理由はそれまでの行為が誰かによって齎されたからですか?」秋彦は忌引きと証言していたけれど。
「深部まで探るところまでは行きませんでした。ですが−−木沈こと枕木の足取りは別の人間に追わせていたので動向は摑めています」探偵は言う。別の報告書が出てくる。「出張の日は枕木愛美さんの旦那さんの葬式が行われていたようです」
「結婚していたんですか?」先程読んだ報告書には結婚離婚を三回していると記載されていたから、今は独身なのかと思っていた。三人目が皆瀬怪童だとばかり思っていた。「死別ではありますが。その人物というのがその日商談する予定の会社の次男だそうです」
「え、どういうことですか?」次から次に飛び出す情報に処理が追いつかない。
「次男の死も不審な点が多いそうで、現在皆瀬愛美を捜査中だそうです」
「殺害容疑が掛かっているんですか、愛美に?」衝撃の情報に頭が真っ白になり掛ける。
「報告書を読む限りだとそういうことになりますね。嫌疑に近いようなので、裏が取れれば疑いは晴れるでしょうが、彼女の様々な行いが白日の下に晒されるのを鑑みるに警察とすれば最有力と見ると思います」探偵は言った。
「秋彦と交際しはじめた時機は何時ですか?」愛美が次男を殺害した動機が秋彦と付き合うからであるなら、おぞましいとかの話では無くなる。ここまで来ると妄執だ。
「調査開始が半年近く前ですから遡りようがないですね。憶測で話すことすら憚れます」と探偵は苦笑いをうかべる。「観察した次第では二、三年の付き合いはありそうです」
「そんなにですか……」私は呟くしかなかった。三年前と言えば、子宮筋腫内膜症が発覚した年だ。治療は出来る限り続けた。快方に向かうことなく私は妊娠出来ない体となってしまった。秋彦は心底がっかりした顔をしていた。不倫する余白と口実を与えてしまった私が悪い。
「馬木田さんの所為ではありませんよ」探偵は優しく言ってくれるが、もし私の体が健康だったらと考えない日はない。「ふたりが親密になるのは時間の問題だったと思います。気休めにもなりませんが」
それはふたりを見ていれば解る。私が病気になろうがなるまいが秋彦は愛美に絆されていただろう。それだけ愛美は魅力的だ。おとこに愛されるポイントを本能で知っている。相手が悪かったと思うしかないだろう。
「ひとつ疑問があるんですが」私はそう前置きをする。探偵はなんですかと言う。「愛美は何故偽名を使っていたのでしょう。皆瀬姓でも枕木姓でも構わないように私は思ってしまうのですが」
「馬木田さんが苗字を使い分けているのと動機はおなじだと思いますよ」探偵は言った。「偽名を用いているのは自身の行為に疚しいと感じているからでしょうか」
「正当化しようとしているのであれば態々偽名を名乗る必要性はありませんよね」私は言う。「悪行はいずればれるのですから寧ろ堂々としていれば良いように思いますけどね」
「研究者と営業のちがいでしょうね」感覚と環境がちがうとこの探偵は言いたいようだ。まあ何も間違っていないのだが。どの世界も異常性はあるものだ。異常性を糾弾したところで返り討ちに合うのは必至。働いているだけで十分に異常者なのかもしれない。社会そのものが狂っているか。生きているだけで異常なのかもしれない。「職業に貴賎はありませんが存在せずとも社会に影響がない仕事がありますよ。でも人はそう思いたくないし職業差別と宣うのでそういう向きがありますけどね。差別だと思考した時点で差別に当たります」
「差別が無くならない理由ですね」
「戦争が無くならないのもおなじ理由です」
探偵はそう結んだ。
事務所を出るとすっかり夜になっていた。ただ報告を聞くだけのつもりが雑談に花が咲いてしまったのもあるが、調査報告のボリュームが予想以上にあったのも大きいか。
帰宅しても誰もいない。こんな時間に誰かを誘うと言っても誘う相手がいない。困ったものだ。
情報整理がてら散歩でもしようかな。
街はハロウィン仕様になっている。もうそんな時期か。ハロウィンが終われば、世間はクリスマスムードだ。あちらこちらでイルミネーションが飾り付けられ一気に華やかさが倍増する。
人混みをのんびり歩くのが好きだったりする。急いでいる人を横目に自分のペースで歩いていると自分の人生を生きているのを実感する。
ごった返した雑踏を歩いていると紛れることが出来るのもいい。かくれんぼしている気分になれる。隠れるなら人混みと相場は決まっている。
向いから見覚えのある人物が歩いて来る。背が高いので目立つ目立つ。向こうも私に気付いたのか隣の男性に何か言っている。これまた珍しい組み合わせだこと。
「きょうだいでお出掛けとはきょうだい仲悪くないのね」
「兄貴から連絡来たんですよ」曲澤はラフな恰好しているのに対して、芥子家はスマートに決めている。デート帰りか?
「たまには弟と過ごしたくてな」芥子家は照れ臭そうにしている。「デート帰りじゃねえからな。勘違いするなよ」
「どうして判ったの?」
「付き合い長いんだから顔見りゃ解る」芥子家は言う。
私たちの会話をにこやかな顔で聞いている弟。楽しんでいやがる。
「それよりお前は大丈夫なのか」芥子家は訊いてくる。「娘、旦那に取られたんだろ」
「誰にって、ああ、曲澤くんから」私は曲澤を見る。彼は茶目っ気たっぷりに舌を出す。「愛美の謀略に引っ掛かってね」
「アイツまだ学生気分なのか」芥子家は鼻で笑う。「学生気分と言えば、游河……今は馬木田か」
「どっちでもいいよ。呼びやすいほうで」
「じゃあ游河で」芥子家は言う。「皆瀬という学生いるだろ」
「言い寄られているんだっけ? 相変わらず女性人気が高いご様子で」
「茶化すんじゃねえよ。そのこと誰から聞いた。こいつか」弟を指差す兄。
「風の噂」
「流した莫迦はどこのどいつだ」舌打ちをする。
「皆瀬さんがどうかしたの?」
「兄貴と付き合っていないのに付き合っていると吹聴し回っているんです」曲澤は言う。「絶賛、兄貴は針の筵状態です」
「到頭手を出したんだ」私は言う。「貴方の節操の無さは折り紙つきだもんね」
「おい、お前くらいは俺の味方でいてくれよ」
「冗談冗談」
「冗談に聞こえなかったぞ。お前は前科があるからな」
「何のことやら」
「忘れたとは言わせねえぞ。その所為でどえれねえ眼に遭ったんだからな」
「まあまあいいじゃない。器の小さいおとこと思われるわよ」
「うるせえ!」
「皆瀬さんが貴方と交際していると言い回っていると」
「その原因がお前だと皆瀬は言っているんだよ」芥子家は言う。
へ?
「私?」
「皆瀬はそう言ってた。游河先生が俺を狙っているから奪われる前にとかなんたら」言い掛かりにもほどがある。「牽強付会とは思ったが、お前のことだから言い出しかねないとも思った」
何せお前は付き合っていないのに枕木と静島を焚き付けたからな−–
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