第2話 そうだ、絵の修正をしてあげよう(笑)

 俺が神絵をSNSで毎日のように投稿するようになると、「上手い!」「神絵師降臨!」とネット上のフォロワーが騒ぎ立てた。AIで作ったとはいえ、称賛されるのは気分がいい。

 ただ、俺の絵をAIに描かせたことに気付いた人間もいたようで、「AI絵ならAI絵って書いておいたほうがいいですよ」とかいうありがた~いコメントをいただいた。まあ、今までSNSに絵を載せたことなんてないから怪しんでるやつもいるのかも。ただ、俺はそんなコメントはスルーした。別にわざわざ「AI絵」なんて書く必要はないだろう。絵師が自らの価値を落とすようなことするわけないじゃん。


 さて、俺は早速SNSで無双することにした。無双とは言ってもちゃんとした人を助ける善行である。

 イラストのハッシュタグで検索して、絵を描いている仲間を探す。

 一人、好みだなと思う絵を見つけた。絵柄は可愛いけど、ところどころ荒削りな部分が多い。

 俺はその絵をダウンロードして、手持ちの画像生成AIに通し、AIに呪文を唱える。

 そうすれば、ただ可愛いだけで絵の整合性が取れていない絵が、完璧な状態に早変わり。

 それを、元の絵描きさんに渡してあげた。


「こんにちは! あなたの絵を修正してブラッシュアップしました! こういう絵を目指して頑張ってください!(笑)」


 俺は、てっきり絵描きから「ありがとうございます! あなたの修正は素晴らしいです! 参考にさせていただきます!」くらいは言われるかと思っていた。

 しかし、返信は来なかった。おや?

 もしかしたら、フォロワーが多くて気付かなかったのかもしれない。

 俺はその後も何度か修正した絵を送った。俺の気に入った絵描きというのもあって、そいつにそれなりの時間を費やしてやったはずだった。

 ところが、その絵描きはだんだん様子がおかしくなっていった。


「変な人に絵を勝手に修正されて気分が悪い……。メンタル安定し始めたところなのに、またぐちゃぐちゃになってきた……」


 変な人と言われたのもムッとしたが、それより絵描きのことが心配だった。


「絵を描いてる人ってすぐメンタル崩しますよね(苦笑)お大事に」


 そういう一文を、AIで描いた絵と一緒に送った。

 それだけの世話を焼いてやったのに、結局その絵描きからブロックされて、二度と会話をすることはできなかった。


 絵描きって、気難しい人が多いんだなあ……。それに、メンタルを病んでいる人も多い。だからすぐ感情的になって、こうやって人を簡単にブロックできる。プロのイラストレーターを目指すなら、好き嫌いで簡単にフォロワーを選定するのはどうかと思うのだが。

 俺にとっては首を傾げたくなるほど不思議だったが、その絵描きのことはすぐに忘れた。

 俺は忙しいのだ。ひとりの絵描きにこれ以上時間を注ぐこともない。


 そうして俺は、次の「人助け」を始めるのであった。


〈続く〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る