第43話
大急ぎで宿へ戻る。短刀は宿へ帰る途中にあった沼へ投げ込んだ。宿に戻ると
すぐに先程聞き出した事を頭の中で整理する。
首謀者は長崎奉行、
(はぁ、
でもそれだけだった。
次の狙いは決まった。
後は行動あるのみだった。
一息つくと太刀を持ち、笠をかぶって宿の外へ出た。そのまま、郊外にある寺へと向かう。そこには
しばらく歩くと騎馬に乗った
どうやら、ばれたようだ。
寺は静寂に包まれていた。無言で
「あなたの心が鬼から放たれますように」
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若い者や
あれから置手紙をして出ていった
最愛のお京を失い、娘のようにかわいがっていた
紫色の煙は天井まで達した。
(
どこからともなく小さな声が聞こえてくる。
(お座りになってお聞きください)
(私は今回の首謀者を突き止めました。その者を殺すために旅に出ます。
なにぶん行ったことのない土地ですのでどのくらい時間がかかるかは分かりませぬ。父様、
そこまでで
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明日には江戸を抜ける。
手形はないので強行突破だ。
二振りの太刀を入念に手入れをする。
手入れを終えると
風呂を上がり、
白米とあさりの味噌汁にお新香、それと
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朝早く、昨晩頼んでおいた握り飯を受け取り、東海道へ出る道を歩いている。
最初はあまり厳しくない中山道を通るつもりだったが、海を見たくなったので東海道を行くことにした。
途中、昨日の
関所はかなり厳しい体勢で出入りを警戒しており、身分改めも時間をかけて入念にやっているということらしい。
品川の関に近づくと時雨は太刀を
森に入ってすぐの所の木にその男は寄りかかっていた。
「よぅ、関所破りは見逃せんなぁ」
にやりと笑いながら岡崎は身体を
そのまま
岡崎が八双に構え先に仕掛けた。
二人はゆらりと地を這い接近する。
岡崎は一瞬、動きを緩めた。
その瞬間、時雨の太刀が岡崎の肩口を狙い振り下ろされる。
蒼い火花が一瞬飛び散った。
岡崎の刀が半ばから折れていた。
数歩下がった岡崎は折れた所をじっと見つめていた。
「やれやれ、またかよ」
岡崎が刀を収めながら呟いた。
「負けだ、負け。二回やられると清々したわ」
そう言って岡崎は
途中で折れた刀の先を拾う。
「警戒するな、ただの通行手形だ」
構えを解かない
そのまま
「じゃあな、死ぬなよ」
岡崎はそれだけ言うとゆっくりと歩いて立ち去っていった。
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岡崎が視界から消えるまで
正直、関所を越えるより難しい相手といきなり対峙したからだ。自分がどれだけ油断していたかを反省していた。
岡崎が姿を消して暫くして、
地面に縫い付けられたままの紙を取りに近づき拾い上げて中を見ると、確かに通行手形だった。
手形も有り難かったが、それ以上に自分の気を引き締めてくれたことに。
手形を懐にしまうと、
ふわりとした風が
それは
また、いつでも一緒にいるということを言いたそうでもある。
時雨太夫(通常版) 艶 @fireincgtm
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