第37話
「もう一度聞く、ここは
やはり答えない。
中には他に誰もいない。天井にも気配はなかった。
寝ていた女性の口からくぐもった声が漏れた。気絶はしない。咳き込もうとして身体を曲げる女を仰向けにしてもう一度同じ場所に
女は悶絶するが時雨によって身体の動きは押さえられていた。それは五回・六回と繰り返される。女が動かなくなると
女は咳き込むことしか出来なかった。苦痛に顔を歪めている。
女の意識が遠退きかけたとき、時雨は女の口からさらしを取り除いた。
「あんたの殿様はどこだ?」
低い声が女の低下した思考を刺激する。それは女を錯乱状態にするのには十分すぎた。
「と、殿は、今朝方
女はくぐもった声で答えた。平手で打たれた頬は腫れ上がっている。
「では、江戸家老はどこだ?」
江戸家老は出立した殿を見送りに外へ出たと答えた。
その後も時雨の質問は続いた。土蔵のこと、
しかし、女はどの質問に対しても首を横に振るだけだった。時雨は溜息をついた。
(無駄足だったか、まぁ目的の者の行方は分かったからよいか)
「誰かある! 曲者じゃ……ぁ?」
女の声が響いた瞬間、
「お方様!」
入ってきた男の太股を骨まで斬り裂く。男はそのまま畳の上に転がった。次に入ってきた男は腹を突いた。勢いのまま腹を突き抜けもう一つ別の感触が伝わってきた。
三十は斬ったとき、現れる者はいなくなった。
ぴー・ぴー・ぴー
外で鳴子の音が響く。見張りの中間が家臣を呼んだようだ。
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かなりの数が屋敷内に入っていく。外の数が減ったとき、
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幕府は大騒ぎとなっていた。
また、これを機に
「な、なんということだ。奥方様が殺されたとは……」
(なんだ、ここが襲撃されるとは……、もしや前回侵入した賊の仕業か?あれを探っているのか?)
取りあえず主君が江戸
将軍家光からの直々の触れもあり、
(まずい、あそこを無理に調べられたら……非常にまずい……)
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