第38話
江戸市中は
なにしろ昨夜大名屋敷が賊に襲われた。しかも大名の奥方以下五十名以上が惨殺されたという。
これは江戸の市民の関心を引き、また、恐怖を煽っていた。江戸の中に殺人鬼がいる。江戸市中の活気に陰りが見えていた。
町の中には同心や捕り手、重装備の
賊の目的が分からないため、各大名家は門を閉ざし、家臣に重装備を敷いていた。それは各
当然、
「桂殿、お忙しいとこすまぬ」
岡崎が
「いや、岡崎殿。してご用件は?」
岡崎が人払いを願うと、岡崎を伴って自室へと向かった。
剣術指南が場を離れるのは問題であったが、そこは剛の国である
岡崎も、
「しかし、御家はなにか他家とは違うな」
岡崎は率直に感想を述べた。岡崎もまた若き頃、戦場を駆けた兵である。肌に感じる物があるのだろう。
「ははは、いやお恥ずかしい。正直ここまでする必要があるのかどうか。
しかし、先日の件、公にはなっておりませんが幕府の方々の耳には入っておるのでしょう。それでもこちらに警護を付けないのは、あえて……だと思っているのですが」
「ところで桂殿、先日の件と
岡崎は探るような眼で
「正直申しますと、違うと思います」
先に均衡を破ったのは岡崎の方だった。
「いや、すまぬ。
岡崎は頭を叩き、笑いながら
岡崎は感じ取ったかも知れないが。
「ほぅ、
「して、ここと
これが今回の
岡崎はうんうんと頷いている。
それ以前に、
そして
岡崎は、今回の賊の正体を知らないはずだと
「では、あちらの賊とこちらの賊は全く違うということですね。しかしあながち関係がないということもありますまい」
岡崎はしつこく喰らいつく。どうやら
「さぁ、そこは私の承知いたしかねるところですので」
そこで、突然話は中断された。
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