第4話
「旦那様、あれはいったい……」
お京は三十後半の女で以前はここ
今は
大概のことには驚かないお京ですら顔をしかめて表に出てきたほどだ。
外は夕日が差し、
そのようなことが
当然、他の
しかし、事の最中に止めに入るわけにはいかない。
「ふぅむ」
(なんだ、いったい。
さすがにあの声は普通じゃない。
しかも
ただ、声は苦痛の
うぅむ)
じっと考え込む
「あのぅ、
荒っぽいがほとんどの問題は解決してくれる存在だ。
「うん?
いや、もう少し様子を見よう。
かれこれ
持久力があって抜か
「時間は良いのですが、あの
二階を見上げながらお京が溜息をつく。
お京もかれこれ三十年近くこの商売に関わっているが呆れかえっていた。
「ま、あと半刻くらい様子見だ。
お京、すまないが他の
それと旦那衆から文句が来たら知らせてくれ。
私が謝罪に行こう」
「わかりましたよ。
では行って参ります」
お京は立ち上がり、
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先日の
あの後、一刻後には静かになり、商人風の男は宿泊する。
それ
商人風の男は迷惑料と言って五両もの大金を置いていった。
それから数日、
今までと一線を画すような
それは時折旦那衆から苦情が出るほどのものだ。
もっとも
身体つきも良くなり具合もかなり良いという風だ。
ただ、一月も経ったころ、それは起こった。
「なんで、
一人の若者が大声を上げたようだ。
あの日以来、
それほど良い評判が吉原中、江戸市中まで広がっていたのだ。
しかし、肝心な
需要はあるが供給が全くされない状況に陥っていた。
これには
それは
先日から
突然意味の分からないことを叫び出し、体が震え、小水を所かまわず漏らすようになった。
それから食事もとらなくなり、寝込むようにもなった。
同室の者からは気味が悪い、部屋を変えて欲しい等中から苦情が出始める。
見世で客引きの最中に
その後は
日がな
「
同室の
しかし
「そうだな、
これから医者を呼ぶのでみんなに部屋から出るように言っておいてくれ」
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「
この者、名を
吉原の医療を一手に引き受けている人だ。
歳の頃は四十代後半、壮年のがっしりとした体格だ。
とても医者とは思えないほどの体つきをしている。
弟子らしき荷物持ちを二人連れている。
男女二人だが、また大した面構えだ。
男の方は三十代であろう。
一方の女性の方は二十そこそこといったところだ。
絶えず周囲に目を配っている。
医者の
直ぐに
「いや、お恥ずかしい。お待ち申しておりました。お手数をおかけいたします」
「
二人の弟子も足を洗ってもらい、東雲の左右に控える。
裏手の方へ入ると奥から着物を着崩し、ふらふらとした足取りで一人の
太夫の時雨である。
寝起きらしくまだ髪は結っていない。
どうやら昼風呂に入るつもりらしい。
ここ
これは江戸市中すべての風呂屋でもやっていないことだ。
「あら、
着崩れた着物の胸の間から白く深い谷間が露わになった。
「おやおや、
「お
殺気が洩れすぎよ」
すれ違いざまに
氷のような冷たい気配がその場を支配した。
歩いていた四人の歩みが止まる。
お
道具箱を持つ手がかたかたと震えている。
それは明らかに怒りではなく恐怖のそれだった。
「……あ、あ、あの、その」
お
すでに身体がすくみ、どうにもならないようだ。
思考も止まっているようだった。
「駄目よ、もっと修行しなさい」
その場の空気が一瞬にしてもとのそれに戻る。
お
顔色は相変わらず真っ青のままだ。
「ところで
今日はまだ診察日では無いはずですが……」
「なぁに、
その返しに
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