意思
授業終了のチャイムが学校全体に鳴り響いた。このチャイムで教室の中では授業の終わりを意味する挨拶をし、各々帰りの用意や友達と会話をしたりしている。
僕はこの後の時間が憂鬱だ。この後は部活がある。
僕はサッカー部に入っている。
部活には行きたくない、でも行かないと周囲の目が気になり、学校行きにくくなる。なので仕方なく部活へ行く。
部には僕の居場所など無い。
居場所があれば憂鬱と思うことも無かったのだろう。僕は熟そう思う。
部では除け者扱いだ。プレイもそこまで上手くないし、試合にも出れないし、挨拶も苦手だ。
サッカープレイヤーの前に人として直さないといけないとこもあると思っている。
自分の下駄箱に向かい靴を履き替え、部室へと向かった。
部室には何人かがもうすでに着替えており、部の準備をしていた。
皆は着替えながら会話をしていて楽しそうだった。
僕は会話に入れる訳も無く、ひとり黙って着替えていた。
着替えが終わると一人の部員が僕に指示をしてきた。
「おい、部の荷物持っていけよ。」
この要求には素直に受け入れいないといけないため僕は「うん」と返事をするしか無かった。
こんな自分が嫌だった。
毎回毎回下っ端の様に頷き、下っ端の様に働く。
何で僕がこんな事してるんだろうと思い、馬鹿らしくなってきた。
”部活を辞めたい”
こう思うことが増えてきた。
でもそれを正直に言うことが出来ない。
親に言えば反対するだろうし、監督に言えば根性論を突きつけてくるだけだろうし。
僕には味方が居ないのか。
「プレイが良ければ全て解決してくれるのだろうか?」
「リーダーシップを発揮すれば皆は下っ端の様に扱うことはないのだろうか?」
何をすれば良いのか、もう分からない。
ある日、チームの半分は練習試合で、もう半分は練習という日があった。
僕は練習の方だった。練習内容はパスやドリブル、シュートなどがあり、最後はゲームをして終わる。これで約二時間の練習だ。
僕はいつものように上手く出来る訳もなく、いつもどおりのプレイだった。
練習が終わり、帰って行く人や、残って自主練習をしていく人もいる。
僕も帰ろうとした、そうしたら
「ちょっと来てくれ。」と監督が呼び出してきた。
監督の後を追う様に着いて行くと人目の少ないとこへと連れて行かれた。
僕は質問した。
「なんかありました?」
そう聞くと、監督は逆に質問してきた。
「お前、部活で何かあっただろう?最近お前を見ていると、どこか暗いんだ。部の荷物もいつも持っていき、終わったら部室まで戻しているような気がする。」
監督は知っていた。僕がこれまでしていたことを。もう嘘を言っても無駄だと思ったので、僕は正直に言うことにした。
「ここ最近部活に行っても、良いように使われて苦なことは全て僕に押し付けられるようになってきて、辛くて、仲間とも上手くコミュニケーションが取れてなくて、上手くやっていけてないんです。」
監督は真剣に聞いてくれて、「そうか。」と一言言った後に続けて僕にこう言った。
「それでお前はどうしたいんだ。これまで自分に苦労ばかり押し付けた奴に復讐したいのか?部活をやめたいのか?」
別に復讐したい訳では無い。ただ、今自分がしたいことは、、、
「僕がしたいことはサッカーです。チームプレイができるサッカーです。正直、今のチームは壊滅的です。一人に仕事を全てやらせて、他は楽をする。僕が考えているサッカーとは全然違うと思います。」
それを聞いた監督は、小さな声で「そうか。」と言い、続けて言ってきた。
「なら今後このチームに必要なことは何だと思う?」
「それは、協力だと思います。誰かが困っていたら、助ける。この当たり前のことができるチームが今は必要だと思います。」
僕は自分の意思を伝えた。もう怖いものは無い。
話を聞いた頷いた監督は僕の肩に手をポンと置き、「分かった、俺がなんとかする。ごめんな、今まで気づかなくて、そして今のお前の意思が聞けて嬉しかったよ。」
その後、このチームは変わった気がする。
協力というものができているのだ。協力をすれば、出来なかったこともできるようになると今回で分かった。
意思を伝えるのは難しいことだ。
だがそれを言えたらどれだけ素晴らしいことか。
一度でも言えたら世界が変わるような気がする。
言いたいことを溜め込むのではなく、時々、言うのが人には大切のだと思う。
そうすれば好きなことを続けられるだろう。
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