生きる日々を抱きしめて。

みむで

元気

生きてる心地がしない。


でも生きなければならない。

でもだれも助けてくれない。

助けを呼ぼうとしてるが、声が出ない。

自分から出す声なのだから出ないということはない。


拡声器を使えば伝えられるか?

文字にして伝えれば助けてくれるか?

でもそれを見てくれる人が居ない。


なら "一人で生きよう。”

それなら楽かもしれない。


こんな自己解決をしても意味がないことは分かっている。

でもこうもしないと自分を安定させることが出来ない。

あぁ、なんでこんな人間になったのだろうか。


あれ?今、自分

寝てたのかな?

あれ?体が動かない。


あぁそうだ、思い出した。

自分は何をしていたのか思い出した。

昨日、


死のうとしていたんだ。


高いとこから自分の身を投げ出そうとしたんだ。

家には母も父も妹も居たんだ。でも誰も助けてくれなかったんだ。


目を開けると白色の天井が視界に入った、そして横を見ようと首を動かそうとしたが、動かしにくかった。

多分、飛び降りた衝動でこうなったのだろう。

体が動かないのもそういうことなのだと思う。

しばらく何もない白色の天井を見る。

”なぜ自分はこんなことをしてしまったのだろう”

”なぜこうしなければならなかったのだろう”

色々考えている内に白衣を着た中年の男の人が入って来た。自分のところに一直線に向かってきた。おそらく医者だろう。そしてベッドの前で立ち止まり口を開いた。


「目覚めましたか、良かったです。昨日自分が何したか覚えてますか?」

「いえ、何も覚えてないです。」

自分は嘘をついた。「死にたいから飛び降りました。」なんてそんなダサいことが言えない。

医者は自分が思ってることを察してくれたのか「そうですか」と一言言って、傍にあった円形の椅子に座り、少し声を低くして話しかけてくれた。

「君は色々抱え込みすぎたかな。それで追い込まれ、飛び降りようと考えたんだね。」

「でもね、どんなに辛いことがあっても死ぬという考えはしてはいけないよ。君が死にたいと思った時、その時は誰かが行きたいと思った時でもあるんだよ。」


自分は話を聞いた上で「そんな事なんで分かるんですか?本当にそう言っていた人を見たんですか?」

少し強い口調で聞いた。

医者は慣れたように答えてくれた。

「私はこの病院を勤めて長いんですよ。そして君のような人にも何回も会ってきた。そして同じような話をして、君と同じようなことを質問する人がいる。確かにそう思うのも無理はない。初めて会った人にこんなことを言われて、信憑性というものがまるで無いだろう。」と笑いながら続けて言った。

「でも君が運ばれて来る何時間前に他の患者さんと話してたんだ。」


『私ももうすぐ死ぬんですかね、もう少し長く生きたいもんですよ。でも誰も私の身体には勝てないようですね。』

患者が冗談混じりでそう言うと、医者が『この世の中、医療技術の進歩や便利なものが増えていくと、どんどん病原菌も増えて行くような気がするんですよね。どれだけ医療技術が発展して行っても、必ずしも一〇〇%治ったり、回復することは保証できないんですよね。』

そう医者が言うと、患者は納得したようだ。

『そうねぇ、そう言われるとそうかもしれないね。でも私は最後の時が来るまで、生きますよ。』と患者は言うと医者は『はい。』と笑顔で答えた。


「だから君はもう死にたいという考えをしてはいけないよ。」

医者は昨日の話を終えた後、自分に言ってくれた。


嬉しかったんだ。

僕にこう言ってくれる人が居ることに。

涙が出そうだった。

普段自分は泣くという事が出来てなかった。

自分は言った。

「自分は生きてて良いんですかね。それが分からないんです。学校でも一人で、クラスの人とも馴染めず、いつも逃げてばかりな自分が生きてても良いのか分からないんです。いつも助けを求めようとしても、声が出ず、 ”たすけて” の四文字も口に出せない。こんな価値のない自分が嫌いで、嫌で、辛くて、いっその事死のうかなって思ったんです。」

話を聞いていた医者は優しい声で言った。

「ありがとう。今の君の気持ちが聞けて私は嬉しいよ。こういう時あまり同情してはいけないらしいから同情はしないでおくよ。」

医者は少し笑いながら言い、続けてこう言った。

「でもね、君はこういう時になった場合、今、君は死ぬという考えしか出来ない状況になっている。ならこの先どうすれば良いか私達と一緒に考えてみると良いさ。」


「君はひとりじゃないんだよ。」


この言葉に自分は涙が出た。

今、涙が出た。

泣いてると思うと自分はこれまでどれほど辛かったのか今やっと理解出来たと思う。

部屋には自分の泣いている声、ベッドは涙で少し濡れているようだった。

初めてだった。泣くことは初めてではないが、こんなに部屋に響き渡る泣き声、ベッドが涙で濡れること、こういうことが初めてだった。

自分はこの人に救われたかも知れない。生きるのが辛い人に優しく手を差し伸べ、優しい声で落ち着かせてくれる。こんな人に出会ったのは初めてだった。


泣いている自分に医者は最後にこう言ってくれた。

「これまでよく頑張ってきたね。君はもう強い人になったと思うよ。これでもう死ぬという考えを無くしてくれたら、君は最高な人間だ。」

そう言っていき医者っは部屋から出て行き、また他の仕事に移ろうしていた。


これから約一年後まだ不自由なところがあるが一応退院することが出来た。

だがしかしまだリハビリなどが残っている。

今回自分はいかに辛かったか改めて自分で理解できたと思う。

そしてあの人には感謝しかない、あの人が居なかったら自分はどうなっていたかも分からない。

後に今の高校は辞めて通信制の学校似通うことにした。バイトが認められているので働ける時は働き、人との関わりを少しでも増やし、今の状況から少しでも抜け出せるよう努力している。通信制になって少し学生時代の思い出は減るかもしれないが、今は自分の事が最優先なので仕方ないと思っている。


辛いことがあればいつでも抜け出したり、助けを求めれば良いと思う。

死ぬという考えをしなければ、いつかこの状況は抜け出せる。

そして自分に問いただしてみると良い。


「元気?」と。




























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