第2話 話題

「ハロー!なあ見たかよあの動画?」


「見た見た!なんかヤバくねー」


「動画のコメント欄は当然として、掲示板やSNSも荒れに荒れてるよな!」


「俺も毎週教会に通うのアホくさって思ってたんだよねー」


あの動画がネットに上がって7日が過ぎた。俺の通うユニバーシティではその動画の話で持ちきりだ。


「私。昨日ヘンダーソンのレクチャー受けてたけど、レクチャーそっちのけであの動画の話してて笑い堪えるの必死だったわ」


「あぁ〜。ヘンダーソンって確か熱心な信者だもんな。自分を否定された気分になって腸煮えくり返ってたんじゃねーの?」


ユニバーシティに通う若者達はあの動画について面白半分で語り合っている。


「なぁ、ロキはどう思ったんだ?あの動画」


ユニバーシティの友人に突如話題を振られ俺は焦った。


「なんの話だ?」


「なんのって、あの動画だよ『神様』を信仰する思想に喧嘩売ったあの動画だよ!」


「なんでロキに聞くのよ?」


「だって、ロキって割りとそういう考え共感しそうじゃん?俺は俺って感じでクールだし」


「…………この世界にあんな考えをもつヤツがいることに驚いた」


「へぇ〜あの『タロウ·ヤマダ』の考えって君すら驚く事なのか〜」


「…………俺達って。なにかに縋らなきゃ生きられないヤツが大半だろ?それこそ自分の信じる正義や思想や金、力や人との繋がりや愛情とか。あの動画からはそういったモノを全く感じ無かった」


「言われてみれば、確かにそうね。」


「…………ロキも何かに縋ってるのか?」


「!?。俺は別にそんなのじゃない」


それは嘘だ。このなにも期待出来ない世界で俺がこうしていられるのは、ある種の期待があるからだ。


この世界ではない遥か彼方にある世界に、俺は縋っている。


俺は否定しようにもヤツの言葉が突き刺さる。



『神様』という名の『創作物』を信じてしまう己の弱さを!無心で1つのモノに依存してしまう『信仰』という行いを!!



俺はこいつ等と違い『神様』が実在していることを知っている。なにせ俺はその『神様』に遣わされてこの世界に来たからだ。


俺は『神様』の言う理想に共感している。


【いつか人間が私達と共に肩を並べ、この宇宙(そら)を護る存在になると信じている】


俺は本来その立場にいる存在だから、当然と言えば当然だ。




無心で1つのモノに依存してしまう『信仰』という行いを!!




だがヤツから言わせてみればその【当然】が【信仰】ということだ。


俺はその理想について、一度でも考えた事があったか?


その理想を語る『神様』ついて考えた事があったか?


……………。


そのモヤモヤとした感情を抱きながら、俺は今夜もあの動画を見ていた。

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神様にケンカを売った青年 ザイン @zain555

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