010
「今日はパパが迎えに来てるから」
「また保育園でねー」
プール教室の出入口で弓香と別れ、紗良は海斗と手を繋いだ。
「さて、海斗、今日はご飯食べて帰ろっか」
「おそとでごはん? やったー!」
「さーて、何食べに行こうかなー?」
「かいとねぇ、ポテト! ポテトたべたい!」
ファストフードかショッピングセンターのフードコートでも行こうかと思考を巡らせていると、『海斗くん』と背後から呼ぶ声が聞こえ振り向いた。
「水着忘れてるよー!」
「あっ、せんせー!」
海斗の水着を掲げながら走ってきた『先生』は、プール教室のユニフォームであるTシャツと短パンを履いていて、髪はしっとりと濡れている。
海斗は紗良の手を振りほどき先生へと駆け寄った。
慌ててプールバックの中身を確認すると、確かに水着が入っていない。
「わ~、すみませんでした。ありがとうございます」
紗良も急いで駆け寄るが、先生に妙な既視感を覚えしばし頭がバグる。
先生も紗良を見て固まり――。
しばしの沈黙の後、紗良と先生は声を揃えて叫んでいた。
「あっ! 常連さん?」
「店員さん?」
お互い驚きのあまりまた声を失う。
先に口を開いたのは滝本先生の方だった。
「海斗くんのお母さんだったんですね」
「私も、常連さんが海斗の先生だとは知りませんでした」
まさかの顔見知りで変に緊張するというか恥ずかしいというか。
お互いぎこちなく愛想笑いしかできない。
「かいとねぇ、いまからごはん、たべにいくんだー!」
「おー! いいなぁ。いっぱい食べてこいよー」
滝本先生は海斗の頭を優しく撫で、バイバイと手を振った。
それに合わせて紗良もペコリとお辞儀をし、海斗と共にその場を後にする。
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