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「今日はパパが迎えに来てるから」


「また保育園でねー」


プール教室の出入口で弓香と別れ、紗良は海斗と手を繋いだ。


「さて、海斗、今日はご飯食べて帰ろっか」


「おそとでごはん? やったー!」


「さーて、何食べに行こうかなー?」


「かいとねぇ、ポテト! ポテトたべたい!」


ファストフードかショッピングセンターのフードコートでも行こうかと思考を巡らせていると、『海斗くん』と背後から呼ぶ声が聞こえ振り向いた。


「水着忘れてるよー!」


「あっ、せんせー!」


海斗の水着を掲げながら走ってきた『先生』は、プール教室のユニフォームであるTシャツと短パンを履いていて、髪はしっとりと濡れている。


海斗は紗良の手を振りほどき先生へと駆け寄った。


慌ててプールバックの中身を確認すると、確かに水着が入っていない。


「わ~、すみませんでした。ありがとうございます」


紗良も急いで駆け寄るが、先生に妙な既視感を覚えしばし頭がバグる。


先生も紗良を見て固まり――。


しばしの沈黙の後、紗良と先生は声を揃えて叫んでいた。


「あっ! 常連さん?」

「店員さん?」


お互い驚きのあまりまた声を失う。

先に口を開いたのは滝本先生の方だった。


「海斗くんのお母さんだったんですね」


「私も、常連さんが海斗の先生だとは知りませんでした」


まさかの顔見知りで変に緊張するというか恥ずかしいというか。

お互いぎこちなく愛想笑いしかできない。


「かいとねぇ、いまからごはん、たべにいくんだー!」


「おー! いいなぁ。いっぱい食べてこいよー」


滝本先生は海斗の頭を優しく撫で、バイバイと手を振った。


それに合わせて紗良もペコリとお辞儀をし、海斗と共にその場を後にする。

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