第62話 確かめたいこと(委員長side)

 待ち合わせ場所は、天野さんの家の最寄り駅。

 誕生日だから、私が天野さんのところまで行くと言ったのだ。


 ついたわ。


 電車を降りる。

 改札を出れば、きっともう天野さんがいる。

 そう思うと、緊張でいつもより歩調が遅くなってしまう。


 今日は短く切った髪に合うような服を選んだつもりだ。

 白い大きめのニットに、黒いスキニー。そして、黒のロングコート。


 美容院で購入したヘアバームで髪もちゃんとセットした。


「……よし」


 気合を入れて、駅の改札へ向かう。

 まずは会ったらすぐに、笑顔で天野さんを祝わないと。





「いいんちょ……おっ!?」


 改札を出ると、天野さんが驚いたように大声を上げた。

 目を真ん丸にしながら、私に駆け寄ってくる。


「髪、切ったの!? えぐいくらい似合ってるんだけど!!」


 ここまで喜んでくれるなら、サプライズで披露した甲斐があるというものだ。


「ガチでやばい! 委員長、格好良すぎ!!」


 そうやって騒ぎながら、天野さんはじっと私を見つめた。


 こんなに見つめられちゃうと、さすがに照れるわよ。


 目を逸らしながら、ありがとう、と言う。

 天野さんは、本当のこと言っただけだって! と笑ってくれた。


「天野さん、誕生日おめでとう」

「うん。ありがとう、委員長。昨日も電話で祝ってくれて、すごく嬉しかった」

「こっちこそ、祝えてよかったわ」


 鞄の中からラッピングされたプレゼントを取り出す。


「これ、誕生日プレゼント。気に入ってくれると嬉しいわ」

「ありがとう!」


 天野さんはプレゼントを受け取ると、幸せそうに笑った。

 愛おしそうにぎゅっと抱き締めた後、天野さんは私を上目遣いで見つめた。


「これ、開けてもいい?」

「うん。開けてみて」


 天野さんが丁寧にラッピングを外す。

 中から白いマフラーが出てくる。マフラーの縁には濃いピンク色のボアがついている、防寒機能もちゃんと備わった物だ。


「可愛い……!」


 満面の笑みを浮かべた天野さんが、マフラーを首に巻いた。

 そして、似合う? と顔を覗き込んでくる。


「ええ、似合うわ。予想通り」

「嬉しい! 本当にありがとう、委員長。私、一生大事にするから」

「大袈裟ね」

「だって、本当に嬉しいんだもん!」


 ふふ、と笑いながら、天野さんは愛おしそうにマフラーを撫でる。

 その顔を見れば、天野さんが本気で喜んでくれていることが分かった。


 プレゼント、悩んだけどこれにしてよかったわ。


「委員長、近くのファミレスにでも行かない? うちでもいいんだけど、今日、お母さんがいるの」

「そうしましょ」


 きっと、天野さんのお母さんは、夕食の準備をしているのだろう。

 以前、夜はお母さんと誕生日パーティーをすると言っていたから。





 ファミレスに到着すると、私たちはドリンクバーだけを注文した。

 夕食に備えて天野さんが何も食べないと言うから、私もそうしたのである。


 それに正直、今は食欲なんてないもの。


 誕生日を祝い、プレゼントを渡した。

 次は、天野さんがいちごちゃんかどうかを質問しなければいけない。


「飲み物、今日もなんか混ぜる?」

「とりあえず、烏龍茶にするわ」


 私がそう答えると、天野さんは少しだけ残念そうな顔をした。


「じゃあ、私も最初は烏龍茶にする!」


 それぞれ烏龍茶をコップに注ぎ、席に戻る。

 天野さんが口を開くより先に、天野さん、と名前を呼んだ。


「委員長、どうしたの?」

「今日は私、天野さんに確認したいことがあるの」


 軽く深呼吸して、じっと天野さんを見つめる。

 聞くのが怖いけれど、きっと聞かなきゃいけない。


「天野さんって、いちごちゃんなの?」

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