第44話 突然のメッセージ(ギャルside)
「あー、もう、また服が決まんない……!」
頭を抱え、鏡の前で座り込む。
明日に備えて早く寝ようと思っているのに、着ていく服が決められないのだ。
これじゃ、この前と同じじゃん……!
委員長と初めて二人で出かけた前日も、なかなか服装を決められなかった。
あれこれ悩んで、結局天野翼っぽい服を選んだわけだけど。
「この前と同じ系統じゃ、新鮮味がないよね。でも、ロリータっぽいのも変? いっそ地雷系とか? それか清楚系?」
考えれば考えるほど、分からなくなってしまう。
それに前回と違って、委員長のことを好きだとはっきり自覚しているのだ。
しかも、友達としてではなく、恋愛感情で好きだとも気づいてしまった。
だからどうしても、明日のデートでは委員長にアピールしたい。
どきどきさせたいし、恋愛的な意味で意識してほしい。
「セクシーな感じにアピールするとか? いや、それより、委員長の好みに全振りするべき……?」
一度深呼吸をして、心を落ち着かせる。
明日のデートは昼集合。昼食をとった後は、ショッピングモールで服を見ることになっている。
そしてその後、猫カフェに行く予定だ。
今日の模試に向けて、委員長はかなり無理をしていた。
だから明日のデートでは、絶対に委員長を癒してあげたい。
「決めた! これにする!」
白いワンピースを手にとり、鏡の前で合わせてみる。
うん、問題なく可愛い。それに、委員長が好きそうだ。
胸元の大きなリボンも、ふわりと広がった袖も、委員長好みだろう。
「ベレー帽とか、かぶってもいいかも」
白いワンピースなら、何色のベレー帽でも合うはずだ。
それに、委員長の前で帽子をかぶったことはないから、いつもと違う姿にどきどきしてもらえるかもしれない。
「これにしようかな」
ピンク色のベレー帽をかぶってみる。
「めっちゃいいかも。これなら、メイクもピンク系がいいよね」
鏡を見ながら、明日のメイクプランを何通りかシミュレーションしてみる。
朝焦らずに済むように、きちんと決めてから眠りたいのだ。
持っているコスメを確認しようと化粧ポーチへ手を伸ばしたところで、Lineの通知音が鳴った。
「誰だろ、こんな時間に」
スマホを確認すると、委員長からのメッセージが届いていた。
『会いたい』
「え……?」
びっくりしてかたまっていると、すぐにまたメッセージが送られてくる。
『天野さん、今から会えない? 無理なら、断っていいから』
今の時刻は、午後10時過ぎ。
眠るにはちょっと早いけれど、家を出るような時間じゃない。
「……どうしたんだろう」
会いたい、と言われたことは素直に嬉しい。しかしこんな状況では、嬉しさを心配が上回ってしまう。
とりあえず、返信しなきゃ……!
『会おう、委員長』
急いでそれだけ送った。
聞きたいことは山ほどあるけれど、それは会ってからでいい。
委員長の返事を待っていると、電話がかかってきた。もちろん、すぐに電話に出る。
『天野さん、ごめんね、こんな時間に……』
委員長の声は震えていた。泣いているのだろうか。
心臓がぎゅうっと締めつけられる。委員長が悲しい思いをしていると想像するだけで、胸が苦しい。
「ううん。委員長、今どこにいるの?」
『……最寄り駅。家、飛び出してきたの』
こんな時間に家を?
飛び出してきたってことは、親と喧嘩でもしたのだろうか。
「うち、くる?」
『いいの? 天野さんのご両親は?』
優しいな、委員長は。
こんな状況でも、私のことも考えてくれるなんて。
「今、家に一人なの。だから大丈夫」
こんな時間に、高校生だけで入れる安全な場所は思いつかない。
それに、落ち着いて話せる場所がいいはずだ。
家を見られるのは嫌だけど、そんなこと言ってられない。
それに、委員長がこうやって私を頼ってくれたんだもん。
『天野さんの家、行きたい』
最寄り駅を伝えると、分かったと言って委員長はすぐに電話を切った。
きっと、電車に乗ったのだろう。
「……駅まで迎えに行かないと」
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