第35話 真夜中の妄想(ギャルside)
「……あー、もう、寝なきゃいけないのは分かってるのに!」
時刻は午前一時。
明日も早いことを考えれば、とっくに眠っていなければいけない時間だ。
それに疲れているから、身体の限界も近い。
「なのに、なんで寝れないの?」
入浴も済ませ、パジャマに着替え、寝る気満々で布団に寝そべっている。
それなのになぜか、眠気が訪れてくれない。
「委員長は、もう寝てるのかな」
頭の中に浮かぶのは委員長のことばかり。
スマホに手を伸ばし、二人で撮った写真を眺める。
委員長と二人でまわる文化祭はめちゃくちゃ楽しかった。
「手繋いだの、どきどきしたな」
委員長は、私と手を繋いでどんな風に感じたんだろう?
私みたいにどきどきした?
「これ以上のことしたら、どうなるんだろ」
目を閉じて、想像してみる。
委員長に抱き寄せられて、そっと頬に触れられたりなんかして……。
そのままキス、とか?
「いやいや待ってさすがに!」
思わず大声を出して起き上がる。
よかった、お母さんが夜勤の日で。
「……ん?」
待つ必要、ある?
私は委員長のことが好きだ。
好きな人と手を繋いでどきどきして、その先を考えてしまうのって、普通のことじゃない?
「なにも問題ないじゃん!」
うん、私は正常だ……なんて、一気に落ち着けるはずもなく。
私の心臓は、今まで以上にやかましく騒ぎ始めた。
もう、確定だよね。
私の好きは、そういう好きなんだ。
友達としての好きでも、憧れとしての好きでもなく、恋愛感情としての好き。
委員長に触れたいし、触れてほしい。
「私、委員長に恋してるんだ」
なんだか、頭がふわふわする。
認めた瞬間、新しいなにかが始まったような気がした。
強引に目を閉じ、再び横になる。これ以上起きていて、寝坊するわけにはいかない。
委員長に会う以上、ちゃんと可愛い私でいたいから。
♡
「よし」
これで完璧、と化粧終わりの自分を鏡で見つめた時、LINEの通知音が部屋に鳴り響いた。
「委員長!?」
すぐにLINEを確認したけれど、残念ながら委員長ではなかった。
クラスのグループLINEである。
『今日の夜打ち上げこれる奴スタンプ押して!』
クラスの男子の中で中心にいる人だ。
事前に仲のいい男子には連絡していたのだろう。すぐに何人かがスタンプを押した。
「打ち上げか」
愛梨沙はたぶんこないだろう。
文化祭デートを楽しんだ後、彼氏と帰らずクラスの集まりにくるとは思えない。
「委員長は今日、塾だし」
そうじゃなかったとしても、委員長はクラス会にくるようなタイプじゃない。
「実行委員やったし、行ってもいいけど」
まあ、とりあえず保留かな。
もうちょっと様子見してから決めよう。
「そうだ」
クラスLINEを閉じ、委員長とのトーク画面を開く。
おはよう、と打つとすぐに既読がついた。
『天野さん、今日もよろしくね』
「今日どころか、末永くよろしくしてくれて構わないんだけど」
もちろん、そんなメッセージは送れない。
今日も楽しもうね! と送って、私は家を出た。
いつも通りの風景だ。
殺風景だし、道路の端っこにはゴミが落ちている。
恋を自覚したからといって、世界が急に輝いて見えるわけじゃない。
でも……。
「委員長と一緒にいたら、綺麗に見えるのかも」
そんなことを考えてしまうくらいには、私は浮かれているらしい。
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